四の舟×おろし丸によるスケッチブックリレー小説 ねぎくが~お泊り編~

ひさしぶりのねぎくがラリー小説。R18ではありません。
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四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko みなもが友達の家へ泊りに行き、母は父に会いに上京したため、俺は二日間ながら一人で過ごすこととなった。そして今日、空閑の両親も旅行へ行き、空閑も一人で二日間過ごすことになったという話を交わした。 「うちに来ない(か)?」 そんな言葉がお互い自然とこぼれた。

2012-05-08 21:55:18
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 考える事は同じなのね、と空閑は軽く微笑んだが、問題はそこではない。どちらがどちらの家に行くかを決めなくてはならないのだ。これは流石に経験のない事なので、お互い頭を抱えてしまった。

2012-05-08 21:56:44
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「根岸ちゃんは私の家でいい?」 空閑がいたずらっ子のような目をして言った。想像する。空閑の家に行くと、当然空閑の部屋に通される。彼女の部屋には興味はあったが、はたしてそこで、俺の理性が保たれるかどうかだ…。  「…俺の家にしてくれるか?」 ダメだった。

2012-05-08 22:02:36
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…まあ、それでもいいわ。」意外とあっさり、空閑は俺の意見を受け入れた。「それじゃあ5時ごろ荷物持っていくわね。」「おう、ところで飯はどうする?」「作ってあげるわ。」

2012-05-08 22:03:55
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko (空閑の手料理か…) 俺は帰り道、自転車に乗りながら空を見上げ(決して後輩のことではない)ぽそりと呟いた。考えてみれば、彼女の手料理を食べたことは一度もなかった。これはいよいよ楽しみだなと、俺は急ぐ必要もないのだが、自宅へ向けて自転車を漕ぐ足を速めた。

2012-05-08 22:07:38
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 待つ身というのは、意外と時間が長く感じられるものだと俺はその日理解した。いつもならあっという間に流れてしまう時間も、今日に限っては妙に遅い。みなもは友達の家に犬男も連れて行ってしまったため、暇つぶしもできない。そんな感じで俺はリビングをゴロゴロしていた。

2012-05-08 22:09:38
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko コンコンという音がして、思わずベランダを見る。そこには、空閑がいつの間にか立っていた。立ちあがって、ベランダの引き戸を開く。「お前は幽霊か」「あら、失礼しちゃうわね」「誰だってベランダに人が立っていれば驚くだろ」 そうかもねと、空閑は部屋の中に入る。

2012-05-08 22:14:37
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「それじゃあ、来てすぐでなんだけどご飯作っちゃいましょうか。」「お、おう……っておい空閑」「何かしら?」空閑は俺が呆気に取られているすきにエプロンを装備していた。

2012-05-08 22:16:53
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 空閑の手際のよさと言ったらない。彼女はすぐさまスーパーの袋から材料を取り出すと、すぐさま調理を始めてしまった。俺が手伝おうかと言うより早く、空閑はキッチンを占領してしまった。きっと、普段から料理を作っているのだろう。仕方なく、俺は風呂掃除にとりかかる。

2012-05-08 22:23:21
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「根岸ちゃーん、ちょっといいー?」「なんだー?」呼ばれた先のキッチンに行ってみると、空閑は棚の上の方にある鍋を取ろうとしていた。しかし140センチしかない空閑の慎重では届くはずもなく俺を呼んだと言うわけだった。

2012-05-08 22:26:10
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 俺は棚のある鍋をとって渡してやった。「ありがと、根岸ちゃん」 空閑が礼を言う。「……どうかしたの?」 俺が見つめていると、彼女は問いかける。「いや、こうしてみるとさ…」 「うん…」 「…空閑って、かなり背が低いのな」 飯より前に、彼女の腹パンを食らった。

2012-05-08 22:32:34
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 腹を押さえつつ、俺は風呂掃除へと戻った。普段から風呂掃除は俺の仕事だったが、今日はいつも以上に入念にしている。客人、それも自分の恋人が使うともなれば気合が入るのも当然だ。

2012-05-08 22:35:21
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko ふと、そこでいやらしい想像が俺の頭の中によぎる。俺はぶんぶんと頭を振ってその想像を振り払う。馬鹿か、俺は。空閑が今日ここに来たのは、俺のことを信頼しているからで、その信頼を全て破壊する気かと、自分自身に問いかける。「根岸ちゃん、できたわよー」

2012-05-08 22:37:35
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「お、おう今行く。」雑念を追い払うかのようにシャワーで洗剤の泡を流すと俺はリビングへと向かった。そこにあったのは、決して派手ではないが素朴で家庭的な雰囲気が漂う料理の数々だった。

2012-05-08 22:40:20
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「…どうかしら?」 「すごいな、お前…おれ、こんなに料理作れないぞ」 「…ありがと。普段からお母さんと交代で料理作ってるから、自然と料理のレパートリーがあるのよ」 「…食べるのもったいないな。空閑の料理」 「…嬉しいけど、食べてくれないと料理じゃないわ」

2012-05-08 22:46:02
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「それもそうだな。」いそいそと椅子に腰かけ、手を合わせる。「いただきます。」 そして口にした料理は、その見た目の通り非常に絶品であった。どこの高級レストランに行っても決して食べる事の出来ない『家庭の味』がそこには存在していた。

2012-05-08 22:48:20
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「どうかしら…?」 「今度、料理教えてくれ」 「よろこんで」 そんな会話を交わしながら、俺は空閑の料理を頬張る。うまいどころの騒ぎではない。絶品だ。俺が料理を空閑から教わっても、この味は作り出せないだろうなと、口の中に広がる幸せを噛みしめながら思った。

2012-05-08 22:51:30
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…みなもにも、食べさせたいなこれ。」「え?」「みなもだけじゃない、母さんや父さんにも、食べさせてやりたいよ、すっげえ美味いから気に入ると思うぜ?」そう言われた空閑は、頬をほんのりと赤く染めていた。「…根岸ちゃん、貴方って時々、とても卑怯。」「は?」

2012-05-08 22:54:25
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「なんだよ、卑怯って」 「…教えてあげないわ。ニブチンの根岸ちゃんには」 「なんだってんだよ…」 「じゃあ、そろそろ片づけましょっか…」 そう言うと、空閑は立ちあがって、いそいそと食器を集め始めた。その頬が、ほんのりと桜色に染まっていた。

2012-05-08 22:58:00
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 普段は食器洗いはみなもの仕事だが、今日に限っては俺もそれをする。空閑は普段から慣れているのか、みなもと同じかそれ以上の手際の良さを見せている。「…空閑ってすごいな。」「……長年の積み重ねよ。」つ、と彼女は視線をそらした。

2012-05-08 23:04:22
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「そう言う根岸ちゃんも、すごいと思うわよ?」 「そうか?俺はお前の方がすごいと思うが」 「根岸ちゃんこそ」 「…そういうんもんなのかね」 「…そういうものなのかもしれないわよ」 空閑と並んで食器を洗う俺は、不思議な温かい気持ちに包まれていた。

2012-05-08 23:09:15
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 二人でやったせいか、早く食器洗いはすんだ。風呂がたまるまではまだ少し時間もある。さてこれからどうしようか……そんな事を考えていたら、空閑はいつの間にか俺のすぐ近くまで来ていた。

2012-05-08 23:10:47
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「どうしたんだ、空閑」 「…そばにいたくなっただけよ…」 「…風呂が沸くまでテレビでも見てるか」 「そうね」 空閑が肩にもたれてくる。温もりを感じながら、俺はそばにあったリモコンでテレビを点ける。アンビリをやっていたので、ひとまずそれを見ることにした。

2012-05-08 23:15:57
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE テレビをつけたものの、何をやっているかが頭に入らない。すぐ隣で、触れ合う位置に空閑が身体を預けているのだ。というか近い。立っている時は遠くにある顔が、座っているとこんなにも近くなるなんて予想外だ。

2012-05-08 23:18:19
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko そっと肩を抱き寄せる。空閑が甘えて首をもたれてくる。俺は空閑の髪を優しく撫でる。彼女のやわらかな髪を撫でるのは、俺の特権だ。他の人には、撫でてほしくない。「…幸せ」 空閑がぽそりと呟いた。「ああ、俺も幸せだ」 俺も続けてそう返した。

2012-05-08 23:23:16