ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/11

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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とおる7th @windcreator

父の口癖は「けしからん」。ご飯を残すと「けしからん」、お手伝いをサボると「.けしからん」、嘘を吐くと「けしからんっ」、好きな人が出来たというと「けしからんッ」、お父さん大好きと言うと「けしからん……」、花嫁姿を見たら、やっぱり『けしからん』って言ってくれたかな? #twnovel

2012-05-11 00:37:29
ささやか @ex_bungaku_girl

文学少女は今日も本を読む。図書館の二階、書棚の一番奥の忘れ去られたような空間が彼女の定位置だ。文学少女は思う。生まれる時代を間違えた、と。ここには文通も季節を愛でる心も奥ゆかしいやりとりもない。ああ、もしも叶うなら。彼女は願う。こんな古風で清楚な恋をしてみたい。#twnovel

2012-05-11 00:57:58
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel とある商店を警官隊が囲んでいる。スピーカーからお決まりのセリフ。「犯人に告ぐ。人質を解放しておとなしく投降しなさい」重苦しい空気。やがて店内から人影が現れた。警官達に緊張が走る。「ちゃんと質札と金持ってこな返さへんで」そう言うと質屋の店主はピシャッと扉を閉めた。

2012-05-11 01:01:37
clum @clum_memo

ビールを飲んだ夜は、苦いと言われた。焼酎を飲んだ夜は、臭いと顔をしかめられた。日本酒を飲んだ夜は、焼酎よりはましだと評された。ワインを飲んだ夜は、渋みが苦手とこぼされた。ウィスキーを飲んだ今夜は、甘いと舐められ続けた。これからの晩酌にはウィスキーを採用しよう。 #twnovel

2012-05-11 01:47:42
layback @laybacks

娘が学校に行きたくないと言い出した。「どうして?」「つまんないから」「学校で好きな男の子を見つけるのはどうだ? パパだって会社は嫌いだけど、好きな女の子がいる時は、毎日出社するのが楽しかったんだよ」「その子、今はいないの?」「辞めちゃったんだ。パパと結婚してね」 #twnovel

2012-05-11 02:17:11
浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel 新型が来てしばらく経ち、私の出番もずいぶんと減った。しかたない。まあ私は主人にはよくしてもらったと思うので、こっそり蓄積し続けた主人の致命的な情報の入ったフォルダは新型に託そう。かつて私が先代から受け取ったように。願わくばこの先もずっと開示の必要のないことを。

2012-05-11 07:05:12
七歩 @naholograph

庭の青虫が話しかけてきた。見事な擬態だった。「見つかる気がしないわ」と誇らしげだった。仲間が蝶になっても、青虫は青虫だった。「今が楽しいの」青虫に悪びれた様子など無かった。喰われぬまま秋を越えた。そして冬。雪の頃、青虫はひっそりと凍死した。青虫のままで。#twnovel

2012-05-11 07:58:41
ソノミヤ @sonomiya_sonoko

「あなたの顎貧弱ね。私の顎は大きいの。少し削ってあなたにあげてもいいかしら」「私は目が小さいのが嫌なの。あなたの目の大きさを分けて貰えない?」そうして互いの顔を補い合ったその国の人々は、皆が皆まったくおなじ顔になりました。気味の悪い国はこうして生まれたのです。 #twnovel

2012-05-11 11:04:45
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 男はマヤの暦を作り続けていた。「あ~、もう飽きた!面倒臭い!もう、やめる!」「そんなことしたら未来の人が、その年で人類が絶滅するって思いませんかね」「未来の人間、そんなバカじゃねえよ」「ですよね」

2012-05-11 12:09:32
くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel その事件は「無差別植物園襲撃事件!」とスポーツ紙の片隅に掲載された。犯人は多くの植物園から盗み出した大量の薔薇を、廃校のプールに敷き詰めて、その真ん中で睡眠薬を大量に服用して横たわっていたという。「彼氏に振られたから華麗に死のうと思った」などと供述している。

2012-05-11 13:13:39
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel 長年連れ添った妻と死別した夜、死神が私に告げた。「時のかけらが貯まっているので、貴方はもう数十年寿命を延ばせますよ」人生の節々で生じたロスタイムのことだという。妻のいない余生に意味はない。断ると奴は言った。「大抵の男性は辞退しますね。女性は喜んで受け取りますが」

2012-05-11 16:43:27
夢名 七志 @mumei7c

タイム・リップ。何気なく言った一言。失言。あれさえなければ私の人生は違っていたでしょう。ほんの小さないくつかの単語で。ほんの数日の逡巡。後悔と過去の心痛。取り消せるのなら戻りたい。グロスを唇の形に。違うと言えば進めるのに。吐けるのは真っ赤な嘘。未来へは飛べない。 #twnovel

2012-05-11 17:36:50
斎藤雨梟@文学フリマ東京11/11【う-40】 @ukyo_an

美しい蒸気機関車が家の前を走ってゆく夢を見た。黒い煙、遠ざかる汽笛。残像に酔ったまま朝家を出れば、道にチョークで線路が描いてある。ああ、と私は世界のなりたちを少しだけ諒解し、クッキーの空箱で切符を作った。待ち望んだ汽車はその夜も夢に現れ、私は躊躇なく飛び乗った。 #twnovel

2012-05-11 18:05:46
ゆえ @sakuyue

ぴろん、メールが着信。『私メリーさん。あなたの家の前にいるの』イタズラかな。また着信。『私メリーさん。あなたの代わりに学校にいるの』それは楽だ、なんて思ったのが間違いだった。『私メリーさん。あなたの居場所はもうないの。学校だけじゃなく、家でも』ドアが、開かない。 #twnovel

2012-05-11 19:50:54
ろばたにスエノ🦀 @robatani

時折火花が混じるような貴方の瞳の色が好きだと告げても、それは義眼の不調だと冷徹な声で返される。髪も肌も骨も肉も臓物もすべて代用品、残されたのはここのみと貴方は額を指差した。完璧な彫像の中に住む脳にも熱は移るだろうか? こつり、私の額を貴方の冷たい額に押し当てる。 #twnovel

2012-05-11 20:02:49
@mimimdr

子供の頃、私が風邪をひくと母は本を買ってきた。熱が下がった昼下がりに私はベッドで本を読み、母はパートに出かけた。年老いた母は寝込むことが多くなった。出勤前に本を渡すと「それはもう読んじゃったよ、つまんないね」なんて言われる。母の本棚には私の書いた本が並んでいる。#twnovel

2012-05-11 20:22:15
斎藤雨梟@文学フリマ東京11/11【う-40】 @ukyo_an

あの山にUFOの基地があるなんて嘘に決まってる。あれは流れ星だよ。落ちてきた星を拾って世話をして、空に帰す人が山のてっぺんにいるんだよ。そうじゃなかったら空の星がどんどん減るはずでしょ。お姉ちゃんの友だちの友だちがその人に会ったっていうから、ぜったいほんとだよ。 #twnovel

2012-05-11 20:42:08
岡崎@𝚊𝚔𝚒𝙽‌𝙾𝚔𝚊 @storyram

いつもすましたあいつとの負けられない勝負。ーー先に家からお菓子を取ってきた方が勝ち。かわいいあの子のお願いを思い出し、にやけるオレは煎餅の袋を掴んであぜ道をひた走る。秘密基地はもうすぐだ。よし勝った! 「お先に」気を抜いたオレの横を、ドーナツが追い抜いていった。#twnovel

2012-05-11 20:44:13
らし @rashi_catwillow

#twnovel 君への想いを歌にして大きな声で歌ったら、通行人が気絶した。道路はひび割れ、花は枯れ、赤ん坊たちは泣き出した。警官隊に捕まる前に、僕は今夜この国を出る。だけど誓うよ。僕は必ず戻ってきて、この歌を君に届けよう。おばあちゃんになった君の、聴力をなくした耳元へ、そっと。

2012-05-11 23:17:12
すわぞ @suwazo

#twnovel 父王が途中で数えるのを面倒臭がったので七番目以降の娘は皆ひとくくりに第七王女と呼ばれた。後宮に妾妃は溢れている。姉妹はどんどん増える。男子ならともかく女子など放置される。第七王女は剣を玩具に自由に育つ。長じて反乱を起こす。父王を殺した七人の第七王女が王位につく。

2012-05-11 23:33:31
トモロウ @tomolowland

#twnovel 先日は貴重な爪の垢をいただきまして、大変ありがとうございました。おかげさまで、生来の後ろ向きな性格もぐっと前向き、何もせずとも笑いがこみあげてくるような始末でふふふふ、ああもう一吸いしようかしら。ところで爪の垢って白い粉なのですね。初めて知りました。かしこここ。

2012-05-11 23:36:45