2012年5月18日 ヴェネツィア・ビエンナーレ2013日本館 美術評論

2012年5月18日。2013年ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表作家の選考結果について呟く、美術評論家・椹木野衣氏(@noieu)と、それに呼応した内容のまとめ。
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椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

先ごろ結果発表のあったベニス・ビエンナーレ日本代表の指名コンペ応募者名簿、および委員の選評が届く。事業主体である国際交流基金のホームページには見当たらないので、公式発表時に記者に限って配られた会見資料だろうか。見ていない人も多そうだ。私見となるが、以下に所感をツイートしてみたい。

2012-05-17 23:11:56
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

指名コンペの応募者は、大島賛都(元サントリーミュージアム天保山ほか)☞川俣正、岡村恵子(東京都写真美術館)☞石田尚志、片岡真実(森美術館)☞ 杉本博司、神谷幸江(広島市現代美)☞ オノヨーコ、蔵屋美香(東京国立近美)☞田中功起、林寿美(川村記念美)☞河原温の各氏(以下、敬称略)。

2012-05-17 23:14:52
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

選考した国際展事業委員は以下の6名。塩田純一(新潟市美術館館長、筆頭ゆえ委員長か)、五十嵐太郎(東北大院教授)、笠原美智子(東京都写美事業企画課長)、河本信治(京都国立近美特任研究員〉、南嶌宏(女子美大教授、元熊本市現美館長)、水沢勉(神奈川県立近美館長)の各氏(以下、敬称略)。

2012-05-17 23:16:52
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

残念ながら資料には選外プランの概要が見当たらない。各委員の選評から察して記す。個人的に最も関心を持ったのは、大島の川俣案。311の被災地で出た瓦礫をベニスに運び、日本館の内外にモニュメントをつくる。作家の過去の活動とも整合し、内外の政治的な問題を浮かび上がらせ、スケールも大きい。

2012-05-17 23:19:51
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

神谷のオノ案は新展開の詩的なサウンドピースのようだ。片岡の杉本案はプラトンの洞窟をメタファーとする集大成的な展示。岡村の石田案はビデオ、フィルム、写真、絵巻を複合し絵画を問う。林の河原案は作家の同意が得られていないようだ。入選した蔵屋の田中案についてはすでに連続ツイートした通り。

2012-05-17 23:22:48
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

次に選評についてコメントする。共通点は、応募6名中4名が既に国際的に評価を確立した作家であることへの違和感の表明だ。「あえて選ぶのであれば新機軸が求められる」(五十嵐)のはもっともとして、この段階で川俣案を「現実的なプランとは言いがたい」(塩田)と断じてしまうのはどうなのだろう。

2012-05-17 23:25:04
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

また、「すでに2009年に金獅子賞を受賞」したオノよりも「中堅・若手にチャンスを与える」という意見に「説得、同意」(河本)されるなら、出展が続いた前回の束芋も同様に考慮してよかった。また今回の候補案に「幾ばくかの失望」(南嶌)を抱くというのは省察を欠く(水沢評は選評に読めない)。

2012-05-17 23:27:51
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

そもそも、今回の応募者が揃って評価の確立した作家を出してきたのはなぜなのか。過去に選ばれて当然の作家たちへの応募者の強い思いゆえではないのか。作家の了承が得られずとも出した林の河原案などは特にそう感じる。これは結果的に、コンペ参加者による現選考体制への痛烈な批判になっていないか。

2012-05-17 23:29:23
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

ベニスは若い才能に機会を与える場と言えば聞こえがよいが、十分な実績のある作家を迎えるだけの予算体制がなく、無理が効く若手に選択肢がシュリンクしていった結果で、日本館の方針であったとは思えない。もしそうなら、あらかじめ年齢制限をすればよいだけのこと。応募者に失望するのはお門違いだ。

2012-05-17 23:31:11
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

国際交流基金について。たんに遅れているのを望むが、A4の用紙にして10枚に満たない本資料を、立派なホームページを持ちながら、なぜ広く公開しないのか。「ベニス」と言えば、日本のアートが業界をこえて国内外に注目される稀な機会。もっと多くの視線にさらされ、議論され、鍛えられた方がよい。

2012-05-17 23:34:54
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

これだけ情報発信が進んだ時代に、選評もホームページで公開しないのは不作為と取られ、信用を失うだけだ。選外となった案の提示が一切ないのも開かれた議論を阻害する。311以後、公的な「委員会」が、いかに都合よく組織されているか、僕らはもう知ってしまっている。美術が例外とも限らなかろう。

2012-05-17 23:36:34
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

また、選考委員は選んだら選びっぱなしというのではなく、成果の如何にかかわらず、事後の報告をきちんと公にすべきだ。結果の分析がないところには進歩もない。さらに選考委員は美術館の管理職に偏ることなく、ビエンナーレの経験がある作家や、外部の様々な学識や知見を持つ委員も加えるべきと思う。

2012-05-17 23:40:53
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

ところで今日は、そんなことばかり呟きたかったわけではない。移動を終えたらまた。

2012-05-17 23:42:03
takashi murakami @takashipom

@noieu 国際交流基金が選んでる時点でセンスの有る無しが全くわからん。まぁ、日本人は常に内側にしか目を向けてないので、バランスだけなんでしょうな。国際舞台で勝つ、ってことは全く考えられていないんでしょうな〜。笑止!

2012-05-17 23:46:34
林 容子 Yoko Hayashi @artwoods

数年前に文化庁の委託調査で調べたとき、国際交流基金のベニスの予算が広報も全て含め3000万に対し、同年のアメリカ館の予算は、2億円ほどでした。今はどうか知りませんが、余りの違いに愕然としたのを覚えています。アメリカの場合は、民間財団の助成金も込みでしたが。@noieu

2012-05-17 23:57:07
林 容子 Yoko Hayashi @artwoods

そうですね。まして、3000万は制作費だけでなく、作家滞在費や交流基金の職員の出張費など全て込みだったと思うので、制作費に回せるのはいくらになるのか。作家及びギャラリーは自力で資金集めしなければ充分な展示はできないと思います。@OKADATOMOHIRO @noieu

2012-05-18 00:05:45
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

. @artwoods そうした予算の関係なのか、過去の話となりますが、原則として国際交流基金は新作での応募を想定していませんでした。だから新作を作るならどうしても持ち出しになるし、実績のある作家ほど旧作中心のプランになるのはそういう理由もあるのではないかと。現状は知りませんが。

2012-05-18 00:06:48
林 容子 Yoko Hayashi @artwoods

私が調べたのももう数年前ですから、今の予算はどうか知りません。でも交流基金時代の財政は以前より苦しくなっています。欧米の場合は、国や財団からの予算以外に、ギャラリーも展示のみならず、キュレーターやパトロン、メディアを招いての豪華なパーティーに”投資”をしますし。@noieu

2012-05-18 00:10:45
椹木 野衣 Noi Sawaragi @noieu

. @artwoods @okadatomohiro というか、制作費という枠はそもそもなかったんじゃないかな。代理店が入ったという話は聞きませんが。

2012-05-18 00:12:13
林 容子 Yoko Hayashi @artwoods

そうですね。過去に出展した作家から制作のために独自にファンドレーズしたと聞いたことがありますから、満足の行く展示をするためには足りない分は自己負担になるのではないでしょうか。ギャラリ-にとっては、作家売り込みの千載一遇のチャンスですし。@nori_1999 @noieu

2012-05-18 00:15:43
林 容子 Yoko Hayashi @artwoods

全て込みの予算です。私も代理店が入っているとは聞いたことがありません。ただ、日本館の広報は他国に比べて無いようなものだといつも感じています。@noieu @okadatomohiro というか、制作費という枠はそもそもなかったんじゃないかな。代理店が入ったという話は聞きませんが。

2012-05-18 00:18:25
林 容子 Yoko Hayashi @artwoods

そうなんですか、電通が入っているとは聞いたことがありませんが。それにしても、広報ができてませんね。海外メディアにもほとんど取り上げられてないし。@OKADATOMOHIRO実際にあるときの管理は電通が入っていました。 @noieu

2012-05-18 00:20:53
林 容子 Yoko Hayashi @artwoods

でもベニスに電通が関わっていたとしたら、驚きですが一体いつ彼らは何をしたのでしょうか。電通が東京オリンピックの誘致に関わっていたことは周知のことですが、交流基金の予算も一種の公金ですから、もしそうなら、これも明らかにされるべきことだと思います。@OKADATOMOHIRO

2012-05-18 00:25:24
林 容子 Yoko Hayashi @artwoods

IPS細胞の研究をしている山中教授が、国が長期の支援をしないから、研究に没頭できずに研究員の給料の支払いで頭を悩ませていることとベニスビエンナーレの予算の少なさで作家が資金集めをしなければならないことが頭の中で重なります。

2012-05-18 00:26:27
田中功起 koki tanaka @kktnk

椹木さんが指摘するように講評も公開すべきですが、可能ならば候補者の提出プランも発表されるとコンペがより開かれていいと思います。前回のコンペのときも同じことが話題になりましたね。また、選ばれる側同様、選ぶ側も試されてもいるわけです。 http://t.co/Fus909de

2012-05-18 00:27:41