衛星打ち上げビジネスの難しさ

H2A打ち上げで,Escherichia tsuchiさんがツイートされていたのをまとめました.
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(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

うーん、衛星打ち上げビジネスを商業的な軌道に乗せる、って言うほど簡単な話じゃないんだがなぁ そもそも、新造ロケットで打ち上げビジネスの採算が取れてるのって、主だったところだとアリアンと長征くらいで、残りはICBMとかSLBMのスペアロケットとかエンジンを流用したもんばかりなんだが

2012-05-18 19:21:18
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

ああ、まぁプロトンとかソユーズもあるけど、ソユーズはアリアンの射点使ってたりするしな

2012-05-18 19:22:19
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

H-2A #F21は、主衛星がGCOM(しずく)で、これにKOMPSAT-3(アリラン3号)他小型衛星2機が搭載されて打ち上げられた。衛星の軌道要素はSSO(太陽同期軌道)、似た軌道だと極軌道に近いもので、非常に特殊な軌道である

2012-05-18 19:41:21
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

極軌道ってのは、北極と南極の間をぐるぐる回る軌道で、極軌道が良く使われるのは、資源探査衛星とか、陸域観測衛星みたいな科学衛星の他に、偵察衛星のような衛星で使われる特殊な軌道なわけだ

2012-05-18 19:43:42
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

H2AはSSOへの軌道投入能力が3.6トンに対して、GCOM-W1の重量は1.9トン。ペイロードとしてはあまってしまうので、ピギーパック衛星である小型衛星2基を搭載してもまだ余る。なので、この余剰分を販売して、買ったのがKOMPSAT-3だったわけ

2012-05-18 19:50:50
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

KOMPSATシリーズは、科学衛星であり、実用衛星でもあるんだが、軍事衛星っていう要素もあるってのは、ナイショの話

2012-05-18 19:51:40
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

極軌道とかSSOみたいな軌道は、あんまし商業衛星の需要としてあんましない上に、高緯度国であるロシアがICBMの中古スペアとか使って打ち上げができるわけで、数少ない科学衛星の打ち上げ需要も飽和しとる領域だったりする

2012-05-18 20:00:52
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

ちなみに、米国は商業衛星の打ち上げはほとんどなくなってしまってて、ほとんどが軍用衛星や国費を使った科学衛星の打ち上げばっかりなんだが、極軌道の打ち上げにはCAのヴァンデンバーグ空軍基地とかが使われますね

2012-05-18 20:03:48
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

今回KOMPSAT-3を打ち上げられたのは、国費で打ち上げられるGCOM-W1の余剰分を商業的に売れた、っていう幸運が重なったわけで、ロケット全体が商業的な打ち上げってわけではないのである。

2012-05-18 20:04:41
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

じゃあ、商業衛星市場のメインが何かっていうと、ほとんどが静止衛星なわけだ。通信衛星とか気象衛星とかそういう領域ですわね。打ち上げロケットの軌道要素としては、GTO(静止トランスファ軌道)

2012-05-18 20:05:45
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

商用衛星打ち上げシェアトップのアリアン・スペース社のアリアン5は、GTO打ち上げ能力が7トンから11トンある化け物ロケットである。特に、最も多く打ち上げ実績があるECAバージョンは、GTOに9トンの打ち上げ能力がある。これに対して、H-2Aは4~8トン、H-2Bで8トンである

2012-05-18 20:10:40
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

アリアンもコスト的に言えばH-2シリーズと比べて決して打ち上げ費用が安いわけではない。第一段に使用されるSNECMA製ヴァルカンエンジンはSSMEやH2AのメインエンジンLE-7Aと同じ液酸液水エンジンでクソみたいにコストが高い

2012-05-18 20:15:16
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

それでも、アリアンが商業的に成功を収めているのは、バックオーダーの多さだ。通常の通信衛星の重量は、近年重量が増えていると言っても、3トンから4トン程度で、アリアン5の能力には余る。だから、大量のバックオーダーを抱えておけば、複数の衛星を1回の打ち上げで軌道に乗せられる

2012-05-18 20:17:01
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

打ち上げ1回当たりのコストが高くても、複数の衛星で割れば安くなる。しかも、アリアンの射点は南米の仏領ギアナで、人食い族がいる以外は人口が希薄な緑の砂漠で、GTOへの軌道投入がやりやすい赤道にも近い。打ち上げ時期が限られる種子島やカザフスタンくんだりまで行く必要のあるロシアとは違う

2012-05-18 20:21:26
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

歴史的な話をすると、1980年代までは商用衛星打ち上げはアメリカが圧倒的なシェアを持っていた。ロケットの打ち上げコストのかなりの部分が開発費で占められるわけだが、ICMBの技術があったアメリカやソビエトは、衛星打ち上げロケットを低価格に開発できていたわけだ

2012-05-18 20:36:21
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

その名残が、ソユーズやアトラス、デルタみたいなロケットで、原型のICBMの名残がまったく残ってないくらい改良されてるが、中型のロケットとして実績があるので、開発費用は打ち上げ数によって薄められているわけだ。

2012-05-18 20:38:21
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

ところが、この市場に対して殴りこみをかけてきたのが、欧州宇宙機関が開発したアリアンシリーズで、アリアン5は大型の打ち上げ能力を切り売りすることで、単独での商業採算性を獲得した。開発費と並んで高い、打ち上げコストを相乗りで薄めることで商業市場におけるシェアをほぼ独占できた

2012-05-18 20:40:07
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

ここに、商業的に市場を確保すると言うのは非常に難しい。アリアン5に対抗できるだけの打ち上げ能力という意味では、H2Bが相当するのだが、H2Bがいくらアリアン5と同等の能力があるといっても、相乗りできる衛星のバックオーダーがない限り同じようなビジネスモデルで戦えるわけではない

2012-05-18 20:41:42
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

H2シリーズは、国費による打ち上げがほとんどだし、射点にも打ち上げ期間の制限があるので、数で薄めるというのも難しい。だから、ハードウェア的な改良によって打ち上げコストを低減させるくらいしかないのだが、そうすると開発費が増えて1回あたりの打ち上げコストが上昇する

2012-05-18 20:43:34
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

H3開発ってのは、1回当たりのコスト削減のためのハード改良なのだが、開発費を回収できるだけのメリットがあるかっていうと微妙なところではあると思う

2012-05-18 20:44:53
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

なので、言うほど簡単な話じゃないんだよ

2012-05-18 20:45:14
(๑╹◡╹๑) @tsuchie88

ちなみに、衛星ビジネスってのはそれとはまったく別の話になるんで、いくら三菱がロケット作ってるからって言って、衛星もって話にはならんのですよ。三菱のDS2000バスは割りと安い衛星バスではあるんだが、国際市場で戦うには、ちょっと経験値が不足してる気がする

2012-05-18 20:48:07