ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/15

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 最近は公衆電話を見かけなくなった。この間、公衆電話があった場所の近くを通ったときにケータイが鳴った。番号非通知だった。恐る恐る出てみると「助けて!取り外される!」と言って切れてしまった。あれはきっと撤去された公衆電話が自縛霊となってかけてきたに違いない。#百

2012-06-15 00:01:46
tokoya @tokoya

#twnovel あの人が死んでしまった。だから言ったのに、世界は以前とは違うのだと。原因は分からない、確かなのは死者が生者を襲い始めた事だけ。逃げるべきだと何度も訴えたのに、聞こうとしなかった。そして最後まで私の側にいた。私に喉笛を食い千切られる瞬間も、彼は静かに笑っていた。

2012-06-15 00:05:13
horirium @horirium

雨戸を閉めようとしたとき、内側の桟の上に小さな土の壺が並んでいることに気が付いた。虫が巣でもかけたのだろうか。気持ち悪くなって殺虫剤を撒いた。小さなうめき声が聞こえたような気がした。朝見ると、全ての壺にしっかりと蓋がしてあった。 #twnvday #twnovel

2012-06-15 02:47:28
明宏訊 @aliceizer

#twnovel 出港からどのくらい経ったのか、ようやく船は目的地に到着したが、港には誰も待っていなかった。どうしたことだろう、凱旋帰国だというのに猫の子一匹見かけることができない。それだけではない。下船しようとすると、拡声器を通した声が耳をつんざく。降りたら射殺するというのだ。

2012-06-15 06:01:11
銭喰 @zeniqui

#twnovel 少女が夜中トイレに起きると苦手な野菜のオバケたちが現れ、自分たちを食べろと迫った。「人参、ピーマン…あれ、おナスと胡瓜は?」「彼らはお母さんと話をしている」「ふ~ん? おかあさ…」「割り込んでははいけない。さ、我らを食べるのだ」少女はその夜、人参を食べさせられた

2012-06-15 07:47:09
葦沢かもめ @AshizawaKamome

この高校に来て、もう二ヶ月が経った。初めは戸惑っていた新生活にも慣れてきたが、今度は変なあだ名をつけられて困っている。この体格から「チビ」と呼ぶ奴はまだ許せるのだが、何に由来しているのか「トム」のように外国風の名前の時もある。私は猫にしては鼻が高いのだろうか。 #twnovel

2012-06-15 09:55:38
@ANya52lily

「お手をどうぞ、王子様。」お姫様の一人言。白馬に乗った王子様はお留守。クレヨンで作ったお城はカンペキ。シーツはドレスに変身。ピンクのクレヨンでお化粧して、すごくかわいいけど、ひとりぼっちのお姫様。夜の鐘が鳴る前に、魔法はとけるの。「おかえり、ママ」 #twnovel

2012-06-15 12:03:15
木菟みるく @golddaybreak

お母さんは毎週図書館で読み聞かせのボランティアをしている。読み方がとっても上手で、みんなお話に引き込まれて行くの。私はお母さんの声にみんなが耳を澄ませているのを見たいの。きっと誇らしい気持ちになれるでしょ。でも私も引き込まれちゃって、いつも眺め損ねちゃうんだ。 #twnovel

2012-06-15 12:59:06
木菟みるく @golddaybreak

図書館の幽霊は退屈していた。悪戯にも飽きてきたのだ。そんな時。「 はどこですか?」少女が探している本は、幽霊の好きな本だった。(この子私と趣味が合う!)少女に囁く。(あっちの棚よ)少女をこちら側に連れてくれば、たくさん本の話が出来る。幽霊は嬉しくなった。 #twnovel

2012-06-15 13:44:28
ておまさお @teomasao

男は買ったばかりの新車で恋人の元へと急いでいた。「かっこいい車ね」誰もいるはずのない後部座席から死んだはずの元妻が囁く。「アタシの保険金で買ったのね。彼女がいたなんて知らなかったわ。脇見運転は危ないわよ、この人殺し!」。目の前には大型トラックが迫っていた。 #twnovel

2012-06-15 15:59:08
miecha @miechorz

#twnovel 初めての大きな図書館、歩いてたら迷子になっちゃった!悲しくて泣きそうになったら、女の子がぼくの手を掴んだんだ。「ここのことなら、あたしにまかせなさいっ」女の子はいろんなところを案内してくれるけど、ひとつだけ教えてくれない。ねえ、出口は?終わりの音楽が鳴ってるよ?

2012-06-15 15:59:23
@apecrown

#twnovel 本蒐集家の知人から「紙の家の殺人」という題名の飛び出す絵本を貰った。早速自室で開いてみると、紙でできた殺人鬼が飛び出してきて短剣で胸を刺された。私は殺害現場と書かれた白紙の頁に倒れた。反動で殺人鬼の折り目が裏返り、紙の名探偵が登場する。「犯人はこの中にいます」

2012-06-15 18:29:05
@K20M

ずっと深刻な問題を考えていた私は、久しぶりに部屋の外へ出た。家の中はいつしか古びていて、床には薄っすら埃が積もっている。居間へ向かうと、両親が染みだらけの壁の前で小さく丸くなって座っていた。声をかけようとすると、彼らは影のように平たく薄くなり、やがて消えた。 #twnovel

2012-06-15 19:21:39
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

だらけると、どうずりになるよ。お母さんの口癖。怠け者だったアミちゃんはどうずりになって山奥に捨てられた。どうずりになった姿は、誰も見てはいけない。それが、たとえ親であっても。風に乗ってくる寂しい音は、アミちゃんの泣き声。私は布団をすっぽりかぶり、知らんふり。 #twnovel

2012-06-15 19:33:49
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

誰が悪いとか、何がいけないとか騒いでいる大人たちを、子供たちは疲れた顔で眺めている。ひとのせいにしちゃだめよ、と言ったママも、唾を飛ばして誰かに向かって怒鳴っていた。ボクたちだけで暮らそうか。ベビーベッド型の宇宙船は、喧騒のなかで静かに空へと旅立っていった。 #twnovel

2012-06-15 19:47:05
七歩 @naholograph

おたまじゃくしは考えた。頭の上をすいすい泳ぐ、この大きいのがお母さん。大きくなったらあれになる。すいすい泳ぐ合鴨は、おたまじゃくしを従える。ふと合鴨が泳ぎを止めた。ふとおたまじゃくしが泳ぎを止めた。パクッ。お母さんって僕を食べるもののこと?胃の中で僕はかんがえる。#twnovel

2012-06-15 22:08:35
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

#twnovel 「パパおかえり!」三歳の娘が笑顔で迎えた。「このまま大きくならないといいのに」『お前の願いを叶えてやろう』悪魔が笑う。娘が殺される!だけど娘は殺されることなく成長した。でも僕は気づく。自分が老いていない事を。妻も娘も死んだ後でも自分だけが永遠に生きていく事を。

2012-06-15 22:12:21
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 子供って奴は、どうして不躾に人の顔を覗き込むんだ。母親の腕の中の乳児。さっきから円らな瞳で見つめてくる。俺はサングラスの下で目を逸らす。何だ、この手の動き?14年前、殺した女と同じ。手話?そんなバカな。でも、その指は告げていた。「み・つ・け・た」

2012-06-15 23:00:36
橘 颯 @so__w

バスタブの中に世界を作る。紙製のジオラマには通い慣れた舗。熊の縫いぐるみ。紅茶を満たしたティーポット。硝子玉の指輪。エナメルのヒール。薔薇の花束。大好きな物全て詰め込んで。最後の仕上げは蛇口から流れ落ちる水。水没した世界に躯を浸し、愛しい物達と共に私を水葬する。 #twnovel

2012-06-15 23:22:46
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 村の老人たちの話題はもっぱら死期ばかりで、顔を合わせれば、宣告された余命の長さを競っている。しかし、その割にはこの村で葬式を目にしたことはない。皮を纏った骸骨が歩いているような老人たちであるが、一人も死なない。ぼくはずっと見てきた。ここ千年ぐらい、死んでいない。

2012-06-15 23:42:22
リュカ @ryuka511

#twnovel ミスが多い部下を全員クビにしロボットを雇った。彼らの仕事は実に正確だ。「先程の命令は昨日の命令と矛盾します。」「そこは臨機応変に」「マスターの命令に致命的なミスが発覚しました。」「正確な命令を。」「正確な命令を。」「正確な命令を。」「正確な命令を。」「正確な命令

2012-06-15 23:42:35
歌種 @PM23564

#twnovel その消しゴムは何でも消せた。頬の痣もクラスメイトも嫌な記憶も。綺麗になくなるのが面白くて、気に入らないものは全て消した。消して、消して、最後には何もなくなったそこに消したはずのクラスメイトが立っていて、何でも書けるペンで僕の胸に世界と書いた。そして僕が生まれた。

2012-06-15 23:56:35