同題ｓｓまとめ12/03～12/04

まさひる @masahiruru

引退する二人に寄せ書きを贈ろうというパオリンの提案は、満場一致で可決された。ハンサムの分はすぐ書けたのに(「勝ち逃げなんてズルい！」って)アイツへの色紙を前に、もう30分が経つ。伝えたい事はたくさんあるのに、この空白を埋める言葉がみつからない。＜空白＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

墓石に刻まれた数字を指でなぞる。また一つ、年の差がひらいてしまった。吐く息はただ白い。＜数字＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

外では風が吼え、雨が地面を打ち鳴らしているだろう。だが防音の施された室内までは、その気配すら聴こえない。ただ、互いの息遣いとベッドの軋む音、それに早さを増す鼓動だけがうるさい。過ぎなければいいのに。そう願ってしまう。寝室を支配する、二人だけの嵐。＜暴風雨＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

「ぶふぉっ」キッチンから異音。「どした？」覗き込むと、口の周りを茶色い液体で濡らしたバニーが喰ってかかってきた。「悪戯にしてはひどいですよ！コーヒーかと思ったのに！」突き出された瓶には「醤油」のラベル。…ちょっと日本語教えてやった方がいいかな。＜悪戯＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

隣のデスクに携帯が放置されている。持ち主は昼食を買いに外出中。ふと、いつかの仕返しをしてやろうと思いついた。画面を起動させた指が、かたまる。暗証番号など知らない。心当たりもない。彼の事を、ほとんど知らないのだと思い知る。苦い気持ちで携帯を戻した。＜悪戯＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

虎は群れない、のだそうだ。そんなのはきっと嘘だ。だってあなたは、焦がれるほどに人を求めている。あなたの言う「誰かのため」は、本当はいつだって「自分のため」だ。＜動物＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

兎は鳴かない、らしい。そんなところまで似なくていいのに。つらい時に独りになるな。周りを頼れ。俺を呼べ。ヒーローが、必ずお前の許に駆けつけるから。＜動物＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

@home 少し飲みすぎたか。俯くと左手が目に入る。指輪を外して顔の高さに掲げた。輪の内側には『Eternal Love』とありふれた刻印。笑いがこみ上げる。永遠なんて、なかった。不意にそれを投げ出したくなる衝動にかられ、強く握り込んでやり過ごした。＜笑う＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

俺のまんなかには穴が空いている。どうしたって埋まらないし、何より埋める気もないのだから、広く深くなるばかりだ。癒しを望むのは裏切りか。幸福を求めるのは罪悪か。己に問うと、記憶の中の彼女は微笑って首を振る。それでも俺は今日も穴を覗きこみ、そこに落ちる。 ＜穴＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

春が人のかたちをとったらきっとこいつになる。髪はやわらかい陽射しみたいだし、目の色は芽吹きの緑だ。あたたかく俺を包む事もあれば、静かな雨みたいに潤す事もある。偶に、閃く春雷の様な怒りを見せるのはご愛嬌だ。そうしてこいつは、立ち止まっていた俺を春へ連れ出した。＜春＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

恋も夢も絶対あきらめない。仕事も学校も手を抜いたりしない。仲間や友達を信じたいし、信じてもらえる私でありたい。そう、私は欲張りだ。全力で青い春を歌う！＜春＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

昨夜の名残を残す身体を引きずってベッドを出ようとすると、腕を掴んで引きとめられた。「今日オフだろ。」「でももう日が高い。」「いいじゃねえか、だって春だ。」春だから。この人らしく不条理で、でもなんて素敵な理由。再びシーツの海に潜り、愛しい背中を抱きしめた。＜春＞#同題sstb

まさひる @masahiruru

安心した様に体重を預けられるのは心地よかった。必要だと言われると、欠けた何かが埋まる様な気がした。でもお前が、震えながらも一人でゆく事を選ぶなら。大丈夫、仮面をつけるのには慣れている。笑顔を纏って俺は手を振る。＜依存＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

自分より高い体温を、抱きしめた時と同じ強さで引き剥がした。名残を惜しむ指も無理やり剥がす。「…ここからは、一人で。」震えた声に気づかない振りをする、あなたは優しい。でも。だから。顔を上げる。泣くな、僕。笑え。笑え。＜依存＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

酒とツマミを買い込んで、最後にレジで注文。虎徹さんは肉まん、僕はピザまん。「バニー、初めてのピザまんはどうだ？」「…不思議な味です。」顔をしかめて答えると、合わなかったかーと言いながら取り替えてくれた。…顔が熱いのは、温かいものを食べてるからだ。多分。＜コンビニ＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

「で、何故チェイサーが海に沈んだと？」「…その場の空気が…」「はい？」「だってロイズさん、海に沈む夕日で跳ね橋上がってて船がこっち来てるんですよ！飛べっていう空気ですよ！」「その船からもクレーム来てるんだよ。君達反省してるの？」「「すみません…」」＜チェイサー＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

バニーんちのトイレはいっつも掃除が行き届いてるし便座どころか蓋も閉めてあるしトイレットペーパーは花柄で柔らかくていい匂いがする。おまけに端が三角に折ってあるんだぜ！思わずお前女子か！って言ったら、あなたが一番よく知ってるでしょうって蹴られた。いてえ。＜トイレ＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

あ、虎徹さん、トイレットペーパー買うんならその特売のじゃなくてこっちのダブルのにして下さい。…あなたは良くても僕は困るんです。いいから、はい、こっちので。は？なんでって、あなたのせいでしょうが！＜トイレ＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

10秒…20秒…30秒…。僕達は言葉もなく駆け引きを続ける。まだだ。もっと。こんなんじゃ足りない。…1分。「ブハッ」虎徹さんが吹き出した。「お前その顔は卑怯だろぉ！」何を言ってもダメです。勝負の厳しさを教えてくれたのはあなただ。今日のランチはあなたの奢り。＜沈黙＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

時間が戻れば。そう考えた事がないと言えば嘘になる。しかし、膝をつき額を地に擦りつけて詫びたところで、彼等が戻ってくる訳もない。否、詫びる事すら私には許されてはならない。ならば私が進むべき道はただ一つ。退路は既に断たれている。＜土下座＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

母譲りの美貌と父譲りの実直さ。自己演出が上手いのは誰に似たのか。ともあれ、これほどヒーローに相応しい逸材はそういない。彼ならば、時流にも風化しない新たな伝説を打ち立てられる。さあ、新たな悲劇の記憶を贈ろう。「おやすみバーナビー」柔らかな金色に手をかけた。＜金＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

虎←薔薇／薬指の白金にくちづけた横顔。祈る様な、感謝を捧げる様な。(見たくなかった。)その場から逃げ出す様に走り出した足がよろよろと止まる。あの顔が、自分に向けられる事はないのだと思い知るぐらいなら。見たくなかった。見たくなかった。見たくなかった。 ＜金＞ #同題sstb

まさひる @masahiruru

能力が減退してるのに復帰して怖くないのかって？まあ二部でも危険が無いわけじゃないしな。全然って言ったら嘘になる。でも止まる方がこええよ。助けを求める人の前で止まっちまう俺なんて、俺じゃねえ。それにもし俺が足を踏み外しても、お前が受け止めてくれるんだろ？＜走る＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

何がヒーローだ。その善人面に虫酸が走る。私の作品の方が強く美しいに決まっている。そう、機械は裏切らない。機械は迷わない。それに引き換え人間はー。誰でもいい。さっさとスイッチを押してしまえ。それがお前達全員の命を奪う引き金となるのだ。＜走る＞ #同題ssTB

まさひる @masahiruru

不意に歯を立てられ、快楽のパルスが走った。脳まで甘く痺れ、潤んで密度が濃くなった空気に自分の輪郭が溶けてしまいそうでこわい。ああでも、溶けてしまったら全部この人に飲んでもらえるかな。「…何笑ってんの。」別に、と返して笑ったままその口を塞いだ。＜走る＞ #同題ssTB