日普←英の続きみたいな

名倉 @ykyrypy

多分、兄さんは代々本田家に仕えるバイルシュミット家の長男で、最初は家継いだら自由無くなるし誰かに傅くなんてやってらんねー！って拒否して嫌がってたと思う。弟に任せようにも、次男じゃ駄目！って言われて、執事としての基本的なマナーレッスンから逃げ出す毎日で間違いないね。

名倉 @ykyrypy

んで、バイルシュミット家の長男としてあるまじき乱暴さを言伝に広めながら日々を過ごすんだ。いい加減にしろ、ってお家の偉い人に捕まえられて、全身縄でぐるぐる巻きにされて教育係？みたいな人の前に転がされるんだ。睨みつけてると、教育係がため息ついて言うの。「君の使える主が可哀相だよ」って

名倉 @ykyrypy

んなもん知るかよって言いたいけどガムテ貼られた口じゃ唸るだけで。でも兄さんが抗議しようと体をばたつかせるよりも早く涼しげな声がするの。「噂には聞いていましたが･･･面白い方ですね」視線向ければ黒髪黒目の、兄さんからしたらある種珍しい色合いの少年がその体に不釣り合いな椅子に座ってた

名倉 @ykyrypy

その言葉に教育係が恭しく頭を下げる。「無様なところをお見せしてしまい申し訳ありません」ってな。「君が仕える主、菊様だ」って紹介されると、少年もとい菊は薄く笑みを浮かべる。それに目を奪われて、兄さんはそっから1ヶ月って短期間で本田家当主に仕える者として必要な事を学んで行くの。

名倉 @ykyrypy

一ヵ月後、菊の前に立つ兄さんは風貌からして変わってるの。燕尾服、片眼鏡、白手袋、そして湛えられた微笑！菊は別人のような兄さんに驚いたように目を丸くして、その後小さく笑うんだ。「これから、よろしくお願いしますね」「誠心誠意仕えさせていただきます」って頭を下げた兄さんは知らない。

名倉 @ykyrypy

噂で聞いた乱暴な振る舞いとは程遠い、『本田家当主に仕える者』へ向けられた菊の寂しげな笑みを。

名倉 @ykyrypy

本田家の当主として相応しくあるように、当主としての気品、当主としての礼儀、当主としての、当主としての。そうして育てられた菊は、初めて向けられた不躾とも言える兄さんの瞳を、嬉しく思ったの。自分を当主として扱う者しかいなかった世界に差し込んだ光。なのに次に会ったときには、彼も。

名倉 @ykyrypy

寂しいという感情は当主にはいらない。って割り切って上辺だけの笑みを浮かべる菊。折角見出した光も所詮は偽者でした。って諦めて兄さんへ笑い返すんだ。