メイさんの執事

小野D好きな普通の女の子、メイはある日執事喫茶へ行く。それが、物語の始まりだった......。めくるめく謎、少しずつ壊れてゆくメイの心。果たして、二人は結ばれるのか......衝撃のマジキチヤンデレコメディ。 ※実際の執事、及び執事喫茶には関係ありません。
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藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 「......なんという方の曲なんですか?」「えっと......小野大輔っていう、声優で......」「お嬢様は、その方が好きなんですね」「え?は、はい......」「私と」彼は、あたしをじっと見て言った。「私と、どちらが大切ですか?」

2012-06-18 21:16:00
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 あたしは思わず吹き出しそうになった。でも、彼の目は真剣だった。どう答えたらいいのかわからない。二人のどちらかなんて、選べないよ......。

2012-06-18 21:16:47
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 あたしが困惑していると、店員が入ってきた。どうやら注文したドリンクを持ってきたらしい。あたしはほっとした。

2012-06-18 21:17:26
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 そのあとは、小野Dの話題は出なかった。彼はとても歌が上手く、リクエストした曲をなんでも歌ってくれた。

2012-06-18 21:19:58
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 あたしが田村ゆかりの歌を歌っていると、彼は「お嬢様は、声がかわいらしくていらっしゃる」と笑った。そんなことないですよ、と言うと、彼は笑う。「私は、うそをつきませんよ」......部屋が薄暗くて良かった。顔が赤いの、ばれなくて済む。

2012-06-18 21:21:16
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 夢のような二時間は、あっという間に終わった。あたしはなんだかぼうっとしていた。......本当に、夢みたいだ。

2012-06-18 21:23:22
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 「さあ、お嬢様、次はプリクラを撮りに参りましょう」手を差し出されて、あたしはうつむきながら、その手に自分の手を重ねる。彼の体温を感じて、これが夢じゃないことを確認する。

2012-06-18 21:24:15
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 「どうかしましたか?お嬢様」「......あの、その、お嬢様っていうの......なんか恥ずかしくて......」いつもはお店の中だけだったからなんとも思わなかったけれど。外でそう呼ばれると、なんだかものすごく恥ずかしい。

2012-06-18 21:25:48
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 「......では、どうお呼びしたら?」「えっと......メイ、とか」「では、メイ様」「さ、様はいりません......」「いいえ、そうは行けません。私は貴女のサーヴァントなのですから」

2012-06-18 21:26:18
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 サーヴァント。召使。そうだ。彼はあたしのサーヴァント。その言葉に、うれしいような、でも切ないような、変な気分がした。......あたしたちは、恋人でもなんでもない。ただのサーヴァントと主人の関係なんだ。

2012-06-18 21:27:32
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 「......メイ様?」あたしの顔をのぞきこむ。黒曜石のような瞳。あたしはうつむき、首をふると、むりやり笑って彼に告げる。「なんでもありません。......さあ、プリクラ撮りに行きましょう?」

2012-06-18 21:28:39
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 ゲームセンターはとても混んでいた。途中うたプリや薄桜鬼のUFOキャッチャーがあったけど、ちっとも心は動かなかった。今は、彼がとなりにいる。乙女ゲームなんてしなくても、彼がとなりにいれば、あたしは乙女になれるんだ。

2012-06-18 21:31:46
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 空いてるプリクラ機に入る。彼はあまりプリクラを撮ったことがないのだという。珍しくはしゃいでいるようだ。なんだか子どもみたいでかわいいな、と思った。......変なの。あたしのほうが年下なのに。

2012-06-18 21:34:54
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 いざプリクラを撮る、となり、あたしはポーズに迷った。普通にピース、すればいいかな......でも、アヘ顔だと思われたらいやだなあ......その時、彼があたしの手を撮った。画面からカウントダウンの声。シャッターが切られた瞬間、彼はあたしの手の甲に口付けた。

2012-06-18 22:47:52
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 何が起きたのかわからず、あたしはぼけっと彼を見つめる。彼は少し微笑んで、言った。「忠誠の、しるしです」

2012-06-18 22:50:13
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 そのあとは、あまり覚えていない。いつのまにか駅にいた。そういえば、改札を通るあたしに向かって 、彼はずっと手を降ってくれた、気がする。

2012-06-18 22:51:20
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 それからはずっと、彼のことばかりを考えながら過ごした。授業中も、登下校中も、部室にいるときも、彼の声や視線やぬくもりが忘れられなかった。忘れられなくて、おかしくなりそうだった。

2012-06-18 22:53:07
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 それからも毎日執事喫茶へ行った。さすがにデートコースは値段が張るため、月に一回、と決めた。

2012-06-18 22:54:01
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 デートコースのオプションは、二回三回と回を重ねるごとに増えた。最初はカラオケやプリクラだけだったのが、レストランでディナー、映画館、水族館、動物園......と少しずつ増えた。

2012-06-18 22:55:19
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 さすがに一ヶ月経たないうちに貯金が尽きた。小野DのCDを全部売っても足りなかった。しかたがなく、あたしはバイトをはじめることにした。カフェの店員だ。

2012-06-18 22:57:33
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 バイトはつらかったけれど、彼に会うためだ、と思うと、むしろ楽しくなった。バイトは入れられるだけ入れた。それどころか、バイトのために授業を休んだ。彼に会うためなんだ。学校になんか、行ってるひまない。

2012-06-18 22:58:53
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 彼に会うことは、もはやあたしの日常そのものだった。彼の笑顔や、しぐさや、紅茶の香り、食器のカチャカチャという音、そういったものが、今のあたしを構成するすべてだった。

2012-06-18 23:06:57
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 月に一回のデートは、毎回夢のようだった。彼はあたしをいろんなところへエスコートしてくれた。二人でいろんなものを見て、食べて、聞いて、感じた。あたしは、彼を通して世界を見ていた。

2012-06-18 23:08:18
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 執事喫茶へ行くと、毎回彼の名刺をもらえた。写真付きの、カードのようなものだ。1パターンしかなかったけれど、気にせず毎回もらった。デートコースの時には、ラメ入りの、キラキラしたものをもらった。

2012-06-18 23:12:15
藤宮 南月 @fujimiyanatsuki

#メイさんの執事 あたしは何十枚、何百枚とたまった彼の名刺を、壁にしきつめて貼っていった。これは、あたしと彼の思い出そのものだ。カードで壁がうまるたび、あたしの心も、彼の優しい笑顔でうまってゆく。みたされてゆく。

2012-06-18 23:13:47
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