#366days 6月まとめ

相応恣意 @aioushii

“それ”を人は、博士の実験の哀れな犠牲とも呼ぶ。超能力者としての素質を見出された子供たちは、発明と称される人体改造でその能力を強化される。意志や感情といった、人間らしさを代償にーー中でも“それ”は完全予知能力を備えた傑作だった。そしてーー #366days 私の唯一の姉でもある。

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予言された日に隕石が衝突する。そんな噂が人々の間に流れ始めていた。誰も否定する根拠は出せず、それこそが隕石が衝突する証左だと受け止められる。漠然としていた恐怖に隕石と言う名の形が与えられ、人々はーー #366days 引き鉄は引かれた。ブレーキが踏まれなければ、後は崩れ去るだけ。

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首相は対応に苦慮していた。予言された日、地球に隕石が衝突するのは間違いない。何が起こるかわかれば、手の打ちようはある。そう思っていたと言うのに――「小さすぎる！予言は隕石ではなかったのか！」 #366days 明かされた答え、新たに現れた謎。未来はまだその全貌を杳として見せない。

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会議は紛糾していた。隕石の存在を認めるべきでないという意見もあれば、隕石は世界崩壊の原因足りえずと積極的に示すべきという意見もあった。そんな果てのない議論に業を煮やし、大臣は―― #366days 会議は踊る、されど進まず。そんな不毛な論議の結論を待てるほど、世界は寛容ではない。

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記者が書いた特ダネは反響を呼んだが、安全の喧伝を目論んだ大臣の当ては外れた。隕石の衝突を国が把握していたことが陰謀論の温床となり、隕石は世界滅亡の原因でないという事実はオミットされていく。 #366days 信じたいことだけ信じ、都合の悪い事実は忘却する。人とはつくづく度し難い。

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秘密が暴露されれば、自分の肩の荷も下りると考えていた天文学者の希望は、儚くも打ち砕かれた。予言直後以上に混乱する世界を見せつけられて、彼の肩の荷はむしろ、より重くなる。 #366days 他の人より少しだけ多くのことを識っていた。ただそれだけで課せられる責任は、理不尽なほど重い。

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暴徒たちの残党は、その衝動を再び周囲にぶつけていた。全ての責任を何か隠している国に転嫁し、罪の意識から逃れながら。けれど彼らも気づき始めている。国が何を隠していたとしても、それは免罪符足りえないと。 #366days 分かっていても実行できない。それは何も分からないのと同じこと。

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テロリストたちは深く静かに潜行していた。元より彼らには資金があった。武器を手に入れる伝手もあった。唯一欠けていた駒も、予言に抗う狂信者たちで補える。「さあ武器をとれ、同胞たちよ！この世界に混乱を齎す者に粛清を！そう、我らが滅ぼすべき敵の名は―― #366days パンドラの箱！」

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神父は人知れず憎悪を滾らせていた。テロリストの一員となった彼が武器をとる手に迷いはない。諸悪の根源たる偽りの預言者を打ち滅ぼし、世界に安寧を齎す。それが今の彼の生きる意味なのだから。 #366days 事実を告げることが罪だと言うなら、この世は罪人だらけ。裁かれるべきはむしろ――

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建築家は必死に堪えていた。自分が携わるシェルターのことを広めれば、世界の混乱が少しは収まるかもしれない。けれど今はダメだ。希望は容易く絶望へと変遷する。だからそう、確実に福音を与えられる日までは―― #366days 誰かを安心させるための一言。時に誰かを傷つける凶器にもなって。

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花屋は常連客の姿が見えなくなって狼狽えた。毎日のように顔を見せてくれた笑顔の素敵な好青年が、姿を消して一週間。彼の身に何があったの？思えど彼女にできるのは、いつものように店を開けることだけで。 #366days 便りが無いのは良い便り。そう楽観できるほど、この世界は優しくはない。

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常連客は生死の境を彷徨っていた。病院のベッドの上で横たわる彼が、何を為そうとしてこんな目に遭ったのか知る者はいない。何も語らぬまま、深い眠りに就く彼が夢見ているのは、毎日見ていた花屋の少女の笑顔で。 #366days 伝える機会を奪われた言葉に、再び伝え得る時が来るとは限らない。

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マネージャーは唖然としていた。「ライブをやりたいだと？今の状況でそんなことできるわけが……」「今だからこそよ」間髪入れずに歌姫は告げる。「こんなクソッタレの世の中、一筋の光くらいあってもいいと思わない？」 #366days 自らを光と言ってのける豪胆さ。彼女のそれは過信ではない。

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「ねえ、一緒に妖怪になろうよ」それは電波少女のとっておきの提案。「楽しいよ～。試験もなんにもないんだもん」「それはお化けだろ」「そうなの？お化けはヤだな～」そう言って彼女は「まだ死にたくないもん……」涙を流した。 #twnvday 迫る死の恐怖。縋れるのなら妖怪変化でも構わない。

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挑戦者を多くの後輩たちが追い抜いていく。彼に実力がないわけではない。されど全てを運のせいにするには、彼の停滞はあまりに長い。残された時間はもう僅か。だからせめて、彼らに並び立つところまで。 #366days 目指していたスタートがいつしかゴールに。それが妥協でも迷いがないのなら。

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草食系男子は旧友の電話に歓喜した。「結婚したのか！」「ああ、報告が遅くなって済まない」「本当におめでとう！でもお前、予言は――」「俺もアイツも聞いてるよ。けどさ、誰だっていつか死ぬんだ。引く理由にはならないだろ？」 #366days 悩みを一刀両断する旧友の一言。彼が選ぶ道は――

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少年は父の帰りを心待ちにしていた。家を空けてばかりの父が、折良く父の日のきょう帰ってくる！心躍らせる少年の家に鳴り響いたのは一本の電話。それは暴徒の襲撃に巻き込まれ、父が亡くなったことを報せるものだった。 #366days 時と場所を選ばぬ凶報。それさえもいつか生きる力に変えて。

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島民たちは台風に備えていた。想定外の事態さえなければ、万全の備えによって、被害は最小限に抑えられる。なればこそ、島民たちは理解していた。何に備えればいいのかすら分からない予言の日が、どれだけ恐ろしい災厄なのかを。 #366days 人の叡智が及ばぬ災厄。抗う術など有るのだろうか？

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臣民たちは立ち上がった。平和的になされた君主制から民主制への移行。しかし待っていたのは衆愚政治。世界の混乱が統治者たちの無力ぶりを明らかにし、臣民たちの意志は固まった。今こそ陛下による統治の再来を！ #366days 力を合わせて勝ち取った夢の形。たとえ砂上の楼閣に過ぎなくとも。

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同好の士たちは熱狂していた。顔も名前も知らぬ者たちが同じ絵を見て同じ音を聴く。時も場所も超えて想いを共有する、ありふれていても特別な体験に、人々はただ酔いしれる。 #366days 触れ合うことはできなくても、心を重ねることはできる。世界の終わりが近くとも、人の想いは終わらない。

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ねぼすけはやるせなさを感じていた。人に与えられた時間は有限。一分一秒だって無駄にしたくない。だと言うのに、今日は1年の中で最も夜が短い夏至の日。大切な睡眠時間が、いつもより短くなっちゃうじゃない！ #366days 夜は短し眠れよ乙女。夢の中で過ごす時間も大切なひと時なのだから。

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市民たちは突然の停電に戸惑っていた。こんな晴天の日になぜ？戸惑うばかりの彼らは知らない。従業員たちが逃げ出した発電所に、最早まともな機能が残っていないことを。 #366days 当たり前のように享受していた、ありふれたもの。他人から施されることが当たり前だなんて所詮は思い上がり。

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市民たちは不平不満を漏らしていた。曰く、職員の怠慢だ。曰く、責任感がなさすぎる。降って湧いた不都合に市民たちがはけ口として選んだのは、電力に支えられたネット上の掲示板だった。 #366days 不満を漏らすばかりで自らを省みない人たち。進退窮まった時に困るのは、誰よりも自分自身。

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フリーターは荷物をまとめた。バイト先も辞め、なんのしがらみもない彼が目指すのは、これまで世話になった人たちに感謝を伝える全国行脚。親友、ゼミの仲間、恩師、そして誰より……まだ名も知らぬ、君に会いたくて。 #366days 決意とともに踏み出した一歩。その足取りは希望に溢れていて。