#366days 2月まとめ

告げられた者たちの余命は残り11カ月――彼らはまだ気付かない。
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まとめ #366days 1月まとめ 半数の人が余命1年を告げられた世界―― 彼らは何を思い、何を残すのか? 1177 pv 4
相応恣意 @aioushii

“それ”は博士の最高傑作……だった。カオス理論に基づき、あらゆる未来を瞬時に予測する。ゆえに過程の検証は不可能。それでも的中率は100%であり、人々が“それ”を預言者と称し、もてはやすのも当然だった。 #366days しかしある日を境に“それ”は最悪の作品と呼ばれることになる。

2012-02-01 23:33:09
相応恣意 @aioushii

多くの人々は、これまでと変わらぬ生活を送っていた。予言の日まで残り11カ月。自暴自棄になる者の数は少なくないが、それでも多くの人は「まだ11カ月もあるのだから」と、迫る未来から目を背け続けていた。 #366days 11カ月。それは果たして、何かを為すのに十分な時間なのだろうか。

2012-02-02 23:43:19
相応恣意 @aioushii

学者たは焦っていた。予言の日まで残り11カ月、世界の半数の人が死に絶える原因は、その手がかりさえ掴めない。あらゆる地域、年代の者が同じ日に死に絶える。一体どうすればそんなことが? #366days 彼らの智慧が予言を解き明かすのと、予言の日の到来、はたしてどちらが先だろうか?

2012-02-03 23:10:47
相応恣意 @aioushii

詩人は詩う。滅び行く世界の様子を嘘偽りなく。然れどその詩には絶望などなく、愛や希望に溢れていた。「確かに世界は目を背けたくなる理不尽で満ちていますが、私は世界を、見たままに詩っているだけですよ?」 #366days 皆がエゴを剥き出しにした醜い世界。それでも見方1つで美しき世界。

2012-02-04 23:18:57
相応恣意 @aioushii

牧師はただ祈ることしかできなかった。彼の元には毎日のように救いを求める人たちが訪れる。だが彼は、そんな人たちの前では無力だった。ただせめて、その死が安らかであれと願うことしかできない。 #366days 死を見据えて何もできないと悟ってしまったとき、人はどうあるべきなのだろうか。

2012-02-05 23:53:28
相応恣意 @aioushii

神父は神を呪った。「主よ!貴方を信じた我々への仕打ちがこれだと言うのか!あまりにも酷いではないか!」彼は最早誰も信じない。真の救済を求め、その手に――武器を取る。 #366days どうしようもない現実に屈せず立ち向かう。それがどんなに素晴らしい行為に見えても、最善とは限らない。

2012-02-06 23:46:19
相応恣意 @aioushii

監督は苛ついていた。彼は世界が滅びようが、今、望む映像が撮れれば構わないと思っていた。だと言うのに、それが撮れない。ロケ地は荒れ放題で、俳優たちは逃げ出し、エキストラが集まらない現状では。 #366days 皆で1つの目的に向かう。言うは易くも為すは難き。ましてやこんな世界では。

2012-02-07 23:56:59
相応恣意 @aioushii

チームは一丸となっていた。11カ月後の死が怖くないと言ったら嘘になる。それでも彼らにできるのは、全力のプレーを見せることだけなのだ。「ちょっと引退の予定が早まるだけさ、弱小チームの意地を見せてやろうぜ!」 #366days 彼らのプレーは記録には残らない。それでも記憶に刻まれる。

2012-02-08 23:03:01
相応恣意 @aioushii

世捨て人は今までと変わらぬ生活を送っていた。彼は死を宣告されず、また、他の人がそんな宣告を受けたことなど知る由も無かった。そしてこれからもきっと、そんなことは知らずに生きていく。 #366days 知る方が幸せなのか、知らない方が幸せなのか。少なくともこれは知らない方が幸せな例。

2012-02-09 23:06:14
相応恣意 @aioushii

殺人鬼は困惑していた。彼は己の快楽のために多くの人の命を奪ってきたが、これまで狙った獲物を逃がしたことなど1度もなかった。だと言うのに今年に入ってからは、2人に1人は殺害に失敗しているのだから。 #366days 運命の日は覆らない。遅れもしなければ早まりもせず、ただ待ち構える。

2012-02-10 23:49:47
相応恣意 @aioushii

自殺志願者は今にも泣きそうだった。死の宣告を受けたうえ彼氏に手酷く振られ、自殺の意思を固めたというのに、この1カ月、首つり・服毒・リストカットと、そのどれもが失敗に終わっているのだから。 #366days 生きたくても生きられない、死にたくても死にきれない。同じ原因、裏表の結果。

2012-02-11 22:21:32
相応恣意 @aioushii

頑固者は自らの死を知り、彼女との別れを決めた。死ぬと分かっている自分と付き合っても不幸でしかない。だから欠片さえも自分に未練を遺さないよう、手酷く振ってやらなくては。 #366days 誰かのためと言いながら、その人のことを全く見ない。どんなに言い訳しても、それは単なる自分勝手。

2012-02-12 23:50:20
相応恣意 @aioushii

首相は疲れ果てていた。才覚溢れる彼でも予言による混乱を収めるのは容易ではない。それでも彼は、少しでもマシな未来を勝ち取ろうともがく。たとえその未来に自分がいなくとも。 #366days 絶望的な世界でも光を失わないリーダーに恵まれたこと。それがどれ程幸運か、今はまだ誰も知らない。

2012-02-13 23:56:45
相応恣意 @aioushii

ツンデレは覚悟を決めた。「か、勘違いしないでよね!義理なんだから!」言って幼なじみにチョコを渡すのが、去年までの彼女の精一杯。けれど今年は迷わない、迷えない。来年のバレンタインは、もう訪れないのだから。 #twnvday 間に合ったなら遅すぎたはずがない。せめて最期は幸せな時を。

2012-02-14 23:08:25
相応恣意 @aioushii

唐変木は、幼なじみの言葉にたじろいだ。「か、勘違いしないでよね!本命なんだから!」「分かってるって、毎年のことだろ……今、なんて?」「やっぱりわかってなかったのね……少しは察しなさいよ、バカ……」 #366days 傍から見れば、他愛ないやり取りの積み重ね。それさえも貴き日々で。

2012-02-15 23:23:31
相応恣意 @aioushii

嘘つきは後悔していた。「私もあの言葉を聞いたの。だから死ぬ前に1度だけ――ね?」ほんの出来心で吐いた嘘。彼女は死の宣告を聞いてなどいない。しかしそうまでして彼女が手に入れることができたのは、罪悪感だけだった。 #366days ほんの軽い気持ちでついた嘘。背負う罪はあまりに重い。

2012-02-16 23:57:46
相応恣意 @aioushii

臆病者は迷っていた。女の嘘を見破ったと、告げるべきか否か。死を宣告された人は逃れようのない現実に、目の色が変わるーー彼自身のように。だが彼女にはそれがなかった。それでも彼女の願いを断れなかったのはーー #366days 告げる優しさと告げない優しさ。きっとどちらも彼女を傷つける。

2012-02-17 23:53:56
相応恣意 @aioushii

薄情者は淡々としていた。彼にとって11カ月後に迫った身近な人や彼自身の死は、悲しみの対象ではなかった。その生き方は死ぬまで変わらない――はずだった。路地裏で行き倒れた幼女を見つけるまでは。 #366days たった1つの出逢いが生き方を変えることもある。たとえそれが死の間際でも。

2012-02-19 00:16:32
相応恣意 @aioushii

目を覚ました幼女は困惑した。視界に入ったのは、見知らぬ天井と見知らぬ男。「目が覚めたなら早くお家へ帰りなさい」男に告げられて「でも私……もう帰る場所がありません」そう、呟くことしかできない。 #366days そして始まる2人の奇妙な共同生活。生き方を変えるのは1人とは限らない。

2012-02-19 23:37:47
相応恣意 @aioushii

双子の妹は泣き暮れていた。姉にだけ告げられた死の宣告は、ずっと一緒のはずだった半身との別れを意味していた。「貴方なしで、どうやって生きていけばいいの?」嘆く妹を「大丈夫。貴方は私なんだから」姉は優しく諭す。 #366days 姉が伝える生きる術、それは世界を欺くとっておきの魔法。

2012-02-21 00:09:54
相応恣意 @aioushii

双子の姉は気づいていた。自分が今から妹に教えようとしている方法が、単なるごまかしにすぎないことを。それでも自らの半身が救われると言うのなら、彼女にそれを厭う理由はない。「貴方は貴方でありながら、私になるのよ」 #366days 世界を欺く一人二役。その秘密で救われるのは本当に妹?

2012-02-22 00:18:23
相応恣意 @aioushii

愛猫家は、晩年を供に過ごした老猫を優しく撫でていた。「お前の最期を看取ってやれるくらいには、生きてられるつもりだったんだけどねぇ」彼女の言葉を知ってか知らずか、老猫は一声「ニャ~」と鳴く。 #366days 人生は時にままならぬもの。けれどそれはきっと、人でなくても言えることで。

2012-02-22 23:50:10
相応恣意 @aioushii

ギャンブラーは生と死の狭間で命を磨り減らしていた。どうせ失う命なら惜しくない。開き直った彼は命懸けのギャンブルに身を投じるようになった。たった一つのミスが命取り。ひりつくようなスリルは、皮肉にも彼に生を実感させた。 #366days 命をベットに挑む勝負、今やそれが彼の存在意義。

2012-02-24 00:06:14
相応恣意 @aioushii

新郎は幸福を噛みしめていた。夫婦揃ってあと一年も生きられないとしても、予定していた式を取り止める選択肢などなかった。「たとえそれが一年に満たない期間でも、確かに僕たちは幸せなんだから」 #366days 残された時間はあとわずか。それでも今日は彼にとって、紛れもなく人生最良の日。

2012-02-24 23:40:03