#366days 2月まとめ

相応恣意 @aioushii

新婦も幸福に包まれていた。彼女にとって2人で一緒に過ごせる時間が短いことは、残念ではあっても悲しくはない。むしろ――「違う時間を過ごしてきた2人が同じ日に死ねるだなんて、とても素敵だと思いませんか？」 #366days 2人が交わす愛の誓い、それは最期の時まで約束された幸福の証。

相応恣意 @aioushii

ピアニストは苛立っていた。1年後の死を知って、元より素晴らしかった彼の演奏は、神の領域に達したと言われるまでになった。しかし周囲の称賛とは裏腹に彼の心は渇いていく。彼の才能に見合った曲がないがゆえに。 #366days 巡り合いは一種の奇跡。それは人と人との出会いだけに限らない。

相応恣意 @aioushii

棋士は最期の勝負を前にして、不思議と心穏やかだった。対戦相手は勝ち星の並ぶ好敵手。たとえどんな結果になろうとも決して悔いの遺さぬ勝負にしよう。言葉を交わさずとも伝わる想いとともに、棋士は最初の一手を指した。 #366days 未だ至らぬ神の一手。それは1人では辿り着けない神の頂。

相応恣意 @aioushii

好敵手は興奮で打ち震えていた。棋士が指す手の全てが、重い。少しでも油断すれば気を失いそうなほどに。しかし好敵手も負けてはいない。2人が織りなすのは、たかが将棋と侮れない聖戦だった。（あなたの最期の相手を務められる幸運に感謝を！） #366days そして遂に決した雌雄。勝者は――

相応恣意 @aioushii

私は困惑した。自慢じゃないが、私の人生に研究所以外での生活なんてなかった。空っぽな私が旅に出たところで何が出来ると言うのだろう。何の意味があると言うのだろう。 #366days 「空っぽだからこそさ。君はもっと世界を見るべきだ。その空っぽを埋め尽くしてしまうくらいに。そして――」