#366days 1月まとめ

半数の人が余命1年を告げられた世界―― 彼らは何を思い、何を残すのか?
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相応恣意 @aioushii

それは例えるなら神の啓示だった。人類の丁度半分に伝えられた、1年後に死が訪れるという厳然たる事実。天変地異か世界大戦か。何にせよ、いずれ間違いなく訪れるその未来に、ある者は絶望し、ある者は狂喜した。 #366days これから語るのはきっと、そんな1年間を生きた愚か者たちの物語。

2012-01-01 22:19:17
相応恣意 @aioushii

は1年後に自分が死ぬと告げられ、絶望した。刻々と近づく死の恐怖に耐え切れなかった男は、誰彼構わず、引き鉄を引いた。そして最後の一発は自らのこめかみに―― #366days 男はまだ目を覚まさない。予言された日まで眠り続けるだろう。死の恐怖から解放され、男は幸せだったのだろうか?

2012-01-02 22:42:20
相応恣意 @aioushii

は自分以外の村の皆が1年後に死ぬと聞いて――狂喜した。「父さんも母さんもあいつもそいつもこいつも、みんなみんないなくなる!」昏い妄想を巡らせながら、女は今日も部屋の隅でうずくまる。 #366days 他に誰もいない世界で、誰が女を助けるのだろうか? 女の想像はそこまで及ばない。

2012-01-03 21:28:15
相応恣意 @aioushii

男性は1年後の死を宣告されたが、それでも絶望しなかった。なぜなら彼が愛する妻は、彼が死した後も生きていけるのだから。「残された時間を君と生きることに、僕は全てを捧げよう。僕が死んだ世界で、君が1人でも寂しくないように」 #366days それが真実ならば、彼はきっと死ぬまで幸せ。

2012-01-04 23:29:24
相応恣意 @aioushii

女性は罪悪感に苛まされていた。「君は死んだりしないだろう!?」夫の悲痛な叫びを前に、首を横に振ることなどできなかった彼女が怖れているのは、自分の死ではない。自分の死が夫を深く悲しませてしまうことだった。 #366days その優しくも残酷な嘘を、彼女はいつまでつき通せるだろうか?

2012-01-05 23:38:57
相応恣意 @aioushii

病人は自分の死が1年後だと告げられ、胸に希望の灯をともした。「あと1年も生きられるなんて!」半年保たないと医者に言われていた病人にとって、それは紛れもない福音だった。病人は輝かしい未来を思い、夢想に耽る。 #366days 同じ1年、片や絶望で片や希望。それは誰にも笑えない皮肉。

2012-01-06 23:40:44
相応恣意 @aioushii

自分の命があと1年だと告げられても、医者は決してめげなかった。「いつだって人は、明日、生きているとも限らない。それが1年後だとわかっただけで、私のすることに変わりはないよ」 #366days 1年後に訪れる死、見方によってはそれすらも流れゆく世界の1コマに過ぎないのかもしれない。

2012-01-07 23:41:44
相応恣意 @aioushii

暴徒たちは最早、目的を見失っていた。初めは死の恐怖から逃れるため、次は欲望の赴くままに、終にはただ壊すためだけに破壊を続ける。理由を失くしても暴徒たちは止まらず、止める者もいない。 #366days 彼らはきっと、最期の日まで何も生まない。そんな生き方を選んだのは紛れもなく彼ら。

2012-01-08 22:03:09
相応恣意 @aioushii

少年は途方に暮れていた。彼は1年後の死を免れたが、周りはそうでない人も大勢いて、少年のことを構う大人などいなかった。泣きそうになった少年は、気づけば少女のことを思い浮かべる。(あの子は寂しくないかな?) #366days 少年は少女の元へ向かう。それは誰かのことを想える少年の力。

2012-01-09 23:57:30
相応恣意 @aioushii

少女は怯えていた。飛び交う罵倒と暴力を前に、少女にできるのは嵐が過ぎ去るのを待つことだけ。けれどいつまで待ってもその時は来なくて。「誰か……助けて……」少女の悲痛な叫びを耳にしたのはーー #366days 辛い時に傍にいてくれる人がいる、それはこんな世界でも起こり得る1つの奇跡。

2012-01-10 22:53:10
相応恣意 @aioushii

教師は迷っていた。(いずれ滅びるこの世界で教鞭をとることに、はたして意味があるの?)迷走する心のまま、教室の扉を開いた彼女を迎えたのは「先生、遅いよ!」子供たちの溌剌なな声だった。 #366days 今や教師に迷いはない。命が尽きるその日までに、子供たちに何を伝えられるだろうか。

2012-01-11 23:30:43
相応恣意 @aioushii

青年は吹っ切れた。やり残したことがない生き方をしよう。誓った青年は、今までの内気さが嘘のように女の子に声をかけるようになった。「ねえ、そこの君?」振り向いた女性を目にして青年は―― #366days いつか出会う運命の人、ひょっとしたらそんな出逢い方があってもいいのかもしれない。

2012-01-12 23:39:33
相応恣意 @aioushii

声を聴けなかった人々は困惑していた。周りの様子を見れば、1年後、半数の人々が命を落とすのは事実だと理解はできる。けれども実感できない。そんな彼らが選んだ道は――何もかも忘れてしまうことだった。 #366days それは最も賢くて、最も無為な選択肢。いつだって気付くのは失ってから。

2012-01-13 23:35:11
相応恣意 @aioushii

悩める人々は必死に考えていた。1年後に大切な人が死ぬのなら、自分に何が出来て、何をすべきなのか。その問いは、試験のようには正解が用意されていない。ただただ、解のない答を探し続ける。 #twnvday それは最も非効率で、最も有意義な選択肢。せめて失う前に答が見つかりますように。

2012-01-14 19:59:19
相応恣意 @aioushii

作者は愕然としていた。「あと1年でこの物語を終わらせなきゃならんのか?」彼の描く物語は、これから5年間で完結させる予定だった。未完成でこの世を去るか、無理して物語を畳むか。彼が選んだ道は―― #366days 1年以内に完結させる。それは読者が、そして自分が納得するための茨の道。

2012-01-15 23:57:01
相応恣意 @aioushii

哲学者は考えていた。1年後に自分が死ぬと分かってしまう、それは本人にとって幸運なのか不運なのか。知るとは不可逆な現象。知らなかった頃に戻れない以上、それは無駄な思考かもしれない。「だがそれでも私は――」 #366days 哲学者は今日も思考を燻らせる。それは彼にとって至福の時間。

2012-01-16 23:47:19
相応恣意 @aioushii

花屋は種を蒔いていた。その種は、彼女が生きている間に花を咲かせることはない。それでも彼女がめげることはなかった。「だって、私が死んだ後に咲いた花が誰かの心を癒すなら、それはとっても素敵なことだと思いませんか?」 #366days 彼女は今日も種を蒔く。きっと命が尽きるその日まで。

2012-01-17 22:32:12
相応恣意 @aioushii

富豪は怯えていた。「誰でもいい、金ならいくらでもやる!だから誰か……誰か、助けてくれ!」どれだけ富に恵まれていようと、原因が分からない以上、死を防ぐ手立てがあるはずもない。彼の叫びは空しく響く。 #366days 今まで貪欲に金を求め人を欺いてきた彼に、手を差し伸べる者はいない。

2012-01-18 23:56:31
相応恣意 @aioushii

詐欺師は笑いが止まらなかった。「1年後の死を逃れられる確実な方法がありますよ」そう囁けば、富豪たちは勝手に金を落としていく。おかしくておかしくて――涙が出る。 #366days 金で満たされるほど、彼の心は虚になる。口先で誤魔化そうと、彼もまた自らの死からは逃れられないのだから。

2012-01-19 23:52:16
相応恣意 @aioushii

旅人は旅を続けていた。終わりが見えなかった旅は、しかし1年後に終止符が打たれることとなった。それでも彼は歩みを止めない。「まだ俺は、何も見つけていないし為していない。それまで立ち止ってなどいられないさ」 #366days 彼が歩むのは人生という名の旅路。旅路の果てに何を見るのか。

2012-01-20 23:17:02
相応恣意 @aioushii

歌手は歌い続けていた。「お金がたまったら引退して、やりたいことやって生きるわ」そう公言して憚らなかった彼女は、しかし残り1年の命となっても歌うことを止めなかった。 #366days 「だって気づいちゃったの、私がやりたいのは歌うことなんだって」彼女の歌は今日も誰かを励ましている。

2012-01-21 22:21:25
相応恣意 @aioushii

職人は意を決した。自分の持てる技術、その全てを弟子に叩き込もうと。本来は十数年かけて熟成される技だが、彼にそんな猶予は残されていない。自然と指導にも熱が入る。 #366days そして弟子は逃げ出した。継承すべき技術に気を取られ、弟子を顧みなかった職人に、残された時間はあと僅か。

2012-01-22 22:53:56
相応恣意 @aioushii

弟子はいじけていた。職人の技を受け継がねばならないことも残された時間が少ないこともわかっている。それでも職人の指導は厳しく、何より――「私のこと、少しくらい見てくれてもいいじゃないですか」 #366days 弟子が機嫌を直すのと職人が恋の機微を悟るのと、はたしてどちらが先だろう?

2012-01-23 23:51:31
相応恣意 @aioushii

家政婦は見た。一代で栄華を築いた一族の栄光と衰退の歴史、その醜い骨肉の争いを。一年後に死ぬのが当主だけでなければこんなことにはならなかったのだろうか?嘆息せずにはいられない。 #366days せめて勤め先の本性を知れただけよかった、思いながら彼女は今日も、仕事を黙々とこなす。

2012-01-24 23:07:27
相応恣意 @aioushii

メイドは聞いてしまった。自棄になった雇い主たちの愚かな企て、その標的として自分が選ばれたことを。彼女は取るものもとりあえず逃げ出した。「あと1年の命でも、あんな奴らの慰み者になるなんて真っ平御免よ!」 #366days 日が経つにつれ溢れだすのは人の性。裁ける者などとうにいない。

2012-01-25 23:28:17