【あやかし草紙】まとめ 2012年文月

タグ #あやかし草紙 #妖草紙 のまとめ、7月分。7月末まで随時更新。
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@sktkx

わかっていたんだ。君がいなくなることは。儚い笑顔で春風と共に現れて、言葉を交わして、いつしか君を無意識に探すようになるまでたった二週間。桜吹雪のなかで頭を下げた君に手を伸ばしたけれど、残ったのは握りしめた拳の中に、薄紅の欠片がひとつ。 #twnovel #歌話題 #妖草紙

2012-07-30 12:20:00
@sktkx

「まあ、気楽に行こうぜ。俺だって下っぱの雇われ術師だしな」「ふん、よう言うわ」口ではそう言いつつも、九夜月は俺の膝の上で寝息をたて始めた。心を開けとは言わない。安心してくれる。それだけで妙に嬉しい気がして、俺は笑った。 #妖草紙  もちろん、そのあと足がしびれて悶絶したわけだが。

2012-07-29 21:30:40
@sktkx

九夜月は力がないと言うが、猫又としてそれなりの能力は持っている。人に化けるのも、能力を使うのも、自分のためにはしないだけだ。過去に何かあったらしく、自ら封じているのだ。しかし、その理由を誰にも明かさない。そういうところも周りに敬遠される原因なのだろう。 #妖草紙

2012-07-29 21:24:53
@sktkx

「お主は変わっておるな」九夜月はそういうと、もそもそと俺の膝にのぼって丸くなった。「特に強くもない猫又を望んで僕(しもべ)にする術者など聞いたこともない」「そうか?まあ、お前が嫌ならいつでも契約解除していいんだぜ?それまでは暇潰しと思って一緒にいろよ」「・・・ふん」 #妖草紙

2012-07-29 10:55:40
@sktkx

「何をしている?九夜月(くやづき)」俺の声に振り返ったのは、黒い毛並みに金の瞳の猫。少し睨むような目付きのせいで、金の瞳は上弦よりもやや満ちた、まさに九夜の月のよう。真ん丸に満ちることのない瞳のせいでいつも損をしているこの猫が俺は妙に気に入っていた。 #妖草紙

2012-07-29 10:41:30
@sktkx

「雷が来まする」不意に庭で声がした。「雷雨でございまする」その声と気配にただならぬものを感じて、俺は小太刀を手にすると縁側へ出る。庭には茶色い犬が座っており、黒い瞳で俺を見ると尻尾をぱたりと振った。「一夜の宿をお貸し願いたい」そして律儀に頭を下げた。 #twnovel #妖草紙

2012-07-28 17:22:04
@sktkx

「まあ、よかろう」達磨は重々しく頷くと目を閉じ、根付に戻った。「お前は美味そうなんだから、用心に越したことはないだろう?」心遣いはありがたい。俺はあやかしに好かれる質なのだ。食料として。それにこれが永の別れになるかもしれない。無下にはできなかった。 #妖草紙 #twnovel

2012-07-27 20:06:58
@sktkx

「そもそも切腹の命が出ているのに逃げるとは何事」「まあそう言うな。こいつの素行の悪さは噂になっているし、次男が行方をくらませても家がつぶれることはなかろうよ。諸国を見るのも修行になるしな。あんたがついていきゃ変なあやかしに襲われることもなかろう?」 #妖草紙 #twnovel

2012-07-27 20:00:35
@sktkx

「この兄弟ときたら、先祖と違っていい加減に過ぎる」達磨は目をぎょろりとさせてそう愚痴る。「兄貴、これ」「家宝だ。売るなよ」「ああ・・・じゃなくて!」「ちょっと煩いが、役に立つ」ちょっとどころじゃないのは、幼い頃からの付き合いで身に染みているんだが。 #twnovel #妖草紙

2012-07-27 18:26:12
@sktkx

「切腹ね」俺は残された上意書を横目で見た。たかだか江戸家老の息子を痛めつけただけで何でこうなるかね。「どうすんだ、お前」呆れ顔の兄に俺はニヤリと笑った。「家出て剣客にでもなるわ」「じゃあ、これ持ってけ」投げられた達磨の根付は俺を見るとため息をついた。 #twnovel #妖草紙

2012-07-27 18:16:22
春森しゆう @junju_usako

記憶、売ります。の旗を見た。 あれは先日見かけた小鬼。見かけたときより育ったようだ。 「おい、この前うちの天井を駆けていかなかったか?」 赤い小鬼の顔が青くなった。 「しかし、記憶とは誰のものなんだろう。」 #書き出し #妖草紙

2012-07-27 12:58:56
@sktkx

大切にしまって置いた記憶がない。机を探しても、タンスを探しても、どこにもない。僕は途方にくれて上を見た。「あ」天井を走って記憶を持った小鬼が逃げる。「ちょっと待て!」それは大切な・・・あれ?本当に大切なものだっけ?何の記憶だったかな・・・。 #妖草紙 #twnovel #書き出し

2012-07-27 12:47:25
@sktkx

「若殿様、お薬は飲まれましたか」屋敷の隅の古い井戸にはあやかしが住んでいる。病弱で一人臥せっていた私は、いつしか彼女と親しくなっていた。「月乃はいつも私を気にかけるのだね」「月乃を気にかけてくださるからですよ」そう言う彼女の淡い笑みが私は好きだった。 #twnovel #妖草紙

2012-07-26 20:03:21
アツコ @atsuko0077

簡単な画材を持って、近くの丘に登る。子供の頃、夏休みの写生にやって来た場所だ。特に予定もない休日を過ごすには、丁度良い。あらかた終わり片付けていると、頭上から声がした。「…」声は更にはっきりと耳に届いた。「たまたま目を覚ましたら、お前がおった」そんな奇跡とも出会う夏。 #妖草紙

2012-07-26 16:00:34
アツコ @atsuko0077

妖怪ホテルでは、この夏をご家族で楽しんで頂けるよう、新サービスを提案致します。枕返しの冷たい水枕、小豆研ぎは波音を演出、雪女のハイボールをお楽しみ下さい。お子様は座敷童とかくれんぼ。勿論、駅まで一反木綿が送迎致します。古き良き交遊を取り戻しましょう。 #妖草紙 #twnovel

2012-07-26 14:00:03
@sktkx

赤い瞳がまるで鋭利な刃物のように俺を貫いた。純粋な敵意に満ちた瞳。「殺してやる」血を吐くような呟き。額に角が生え、爪が鋭くなり、牙が見え隠れする。「お前にはその権利がある。全力で来るがいい」お前の一族を滅ぼした仇として俺はこの殺意を受け止めよう。 #twnovel #妖草紙

2012-07-26 12:53:07
@sktkx

小豆洗いのこの夏のイチオシは水まんじゅうだという。確かに半透明のぷるんとした皮にほどよい甘さのあんがくるまれている様はとても涼しげでうまそうだ。ウグイスあんや白あんなど色を変えて目にも楽しい。なにより、楽しげにその説明をする小豆洗いが微笑ましいのだ。 #twnovel #妖草紙

2012-07-26 12:39:31
@sktkx

刀に魅入られてはいけないと幾度も注意されていた。だけどそれは無理というものだろう。我の影のようにこれは存在している。今では互いがなければ生きてはいけぬ。「お嬢、なに考えてんだ?」「我の唯一の失策はこのロクデナシに惚れたことよの」「後悔はさせねえよ」 #twnovel #妖草紙

2012-07-25 18:06:55
@sktkx

人の世は儚い、と呟いてため息をつく女神に、僕は苦笑した。神にしてみれば確かに儚いであろうが、僕らには十分起伏があり充実している。「そんなにつまらないですか?」問うと女神は僕の頭をそっと撫でた。「たった何十年かでお前が消えると思うと、愚痴りたくもなる」 #twnovel #妖草紙

2012-07-24 21:01:57
@sktkx

その翼では、もう飛べはしないだろう?小さな雀の子に私はそう諭した。「私の幹のうろに住まう限り、私はお前を守ってやろうよ」雀は泣きはらした目で私を見る。「こんな立派な木に住んでいいの?」「私ももうそう長くはない。お前が歌ってくれれば寂しくないのだがね」 #妖草紙 #twnovel

2012-07-23 22:20:34
@sktkx

今日はずっと雨。紗綾は鳥居の上で空を見上げる。梅雨は明け、夏が来る。梅雨の晴れ間を教えるあやかしはそろそろ眠りにつく季節。「今年もお疲れ様」神社の狐がそういうと紗綾は頷いて、ぽん、と跳んだ。「明日はきっと晴れるよ」最後の声と共に、また来年。 #妖草紙 #twnovel #歌話題

2012-07-22 00:00:42
@sktkx

雨が降る。雨足が強く、出掛けるのが億劫になる。「おさんぽ、むり?」座敷童が俺を見上げる。「今日は無理」「うにゅう、ざんねん」彼女は最近近所の猫巡りがマイブームなのだ。「晴れたらな」「にぼしもってく」お前が食いきる前に晴れるといいな。 #あやかし草紙 #歌話題 #twnovel

2012-07-20 12:55:55
@sktkx

主「あれ?玄武、どこいった?」青「庭にいるようですが?」主「何してるんだ?玄武?玄武!」玄「・・・呼んだ?」主「うわあっ!何で首まで埋まってんだよ!」玄「土、冷たい。地下水、ひやひや。一緒に、埋まる?」主「・・・遠慮しとく」 #あやかし草紙

2012-07-19 17:03:13
@sktkx

主「この暑さ、なんとかならねえ?」朱「あら♪アタシで良ければ扇ぐわよ♪」主「いや、遠慮しとく」白「オカマはお呼びじゃないってよ」朱「オネエってお言い!」主「朱雀が扇いでも熱風が来るんだよ」朱「やっぱり我が主、優しいわ」主「くっつくな、羽毛暑い」朱「えー!?」 #あやかし草紙

2012-07-19 16:56:52
@sktkx

主「暑い!白虎、風!」白「何で俺が野郎に風吹かせにゃならんの」青「だめです、主。こいつの風は男には暴風です」主「じゃあ、青龍、雨」青「いけません。無理に雨を呼べば天災となります」主「頭、固いんだからなー。お前ら、暑くないの?」青「式神ですので」主「ずりぃ・・・」 #あやかし草紙

2012-07-19 13:03:14