まゆの頑張り物語

とあるプロダクションのフェスの記録
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@mayu_sakuma

始まった瞬間に光の速さで終わってしまったまゆ達のフェス──死と破滅の災厄が嵐のごとく吹き荒れた最初の夜を、死んだ魚の目で乗り越えたまゆ達の前に待っていたもの...一日目をはるかに凌駕するさらなる地獄の幕開けでした。まゆの頑張り物語第二幕、はじまります。

2012-07-05 01:38:59
@mayu_sakuma

まゆ達がすべてを失った敗北の夜から時は過ぎ...対抗戦二日目の夜。一日の内に三戦を消化したその日は、休日を控えた金曜日ということもあり、どこのプロダクションも冷めやらぬ熱気の余韻で、大層にぎわっていました。

2012-07-05 01:41:38
@mayu_sakuma

今日はどこそこと当たった。僅差で勝った。大差で負けた。退くか進むか。これからどう立ち回っていこうか──各々のプロダクションでは対抗戦に向けての会議が深夜まで続くところもあったことでしょう...一生懸命に働く貴方の凛々しい姿に、まゆも熱い視線を送らずにはいられません...うふふ♪

2012-07-05 01:44:31
@mayu_sakuma

そんな中...対抗戦の「た」の字すら話題に上がることなく、ただひたすらに重苦しい空気とため 息だけが流れる、完全に葬式ムードのプロダクションがありました──そう、まゆ達のプロダクシ ョンです。

2012-07-05 01:46:37
@mayu_sakuma

では二日目は惨憺たる結果に終わってしまったのか? ──いえ、そうではありません。むしろ二日目に行われた三戦において、まゆ達のプロダクションは社会人勢のアクティブ率を差し引いてなお、危なげないといっていい余裕の勝利を収めていました。

2012-07-05 01:49:46
@mayu_sakuma

それもこれも、唯一まゆ達のプロダクションでaランクとbランクの称号を持っていた二人のプロデューサーさんのおかげでした。彼らにはどれだけ感謝をしてもし足りないくらいの謝辞と賞賛の言葉が送られるべきで、まゆ達もそのためにその夜スカイプ窓に集まった...はずだったのですが──

2012-07-05 01:52:31
@mayu_sakuma

「今日でこのプロダクションを辞めます。お世話になりました」窓に残されていた二人分のログを見て、勝利を祝うために集まっていた面々の表情が一気に凍りつきました。なぜ? 辞めるにしてもなにも今じゃなくても...そう思ったのはまゆ一人ではないと思います。

2012-07-05 01:54:50
@mayu_sakuma

でも彼らを責めることは誰にもできませんでした。元々二人はこのプロダクションには不釣合いな人材──移籍して別の会社に移る話があったにも関わらず、今まで残ってくれていたのです。今日戦って勝ってくれたことだけでも、彼らには感謝すべきでした。

2012-07-05 01:56:59
@mayu_sakuma

「まだ慌てるような時間じゃない」掲示板では相も変わらず、覚えたばかりの2ch用語を嬉々として振り回す厨房のように許されざる存在と化した社長が、一人でなにやらはしゃいでいましたが、まゆ達には彼に構っている時間など一秒たりともありません。決断の時は刻一刻と迫っていました。

2012-07-05 01:59:36
@mayu_sakuma

最も多くのptを叩き出せる土日を控えたこの日の夜は、どのプロダクションにとっても今後の趨勢を占う重要なターニングポイント。そんな日の夜にまゆ達に突きつけられた究極の二択は──今辞めるか、後で辞めるかという、圧倒的に後ろ向きかつ消極的なものでした。

2012-07-05 02:02:39
@mayu_sakuma

「今、辞めるべきだ」重々しい沈黙の中、最初に切り出したのは、マニー詐欺を瞬時に見破る冷静さと、そもそもろくなレアを持っていないため、 そんなものを一度も目にしたこともないのに詐欺が来たと言い張る大胆さを併せ持つdランクのクールP──通称〝鷹の目〟の一言でした。

2012-07-05 02:05:47
@mayu_sakuma

その一言で社内に一斉に動揺が広がり──ませんでした。薄々は気付いていたのです。それが正しいのだと。皆はただ誰かが言い出すのを待っていたに過ぎませんでした。そうだな...せやな...それしかあらへん。一斉に同意の声があがりました。

2012-07-05 02:08:13
@mayu_sakuma

「いや、続行だ」今度こそ、社内に動揺が広がりました。誰だ、そんな馬鹿なことを言うヤツは...! まとまりかけた話をぶり返しやがって...! 全員が迷惑そうな気配を発散させているのをスカイプの窓越しに感じながら、まゆは寝転がって猫と戯れていました。うふふ...♪

2012-07-05 02:11:42
@mayu_sakuma

「ここで辞めるなど愚の骨頂...」いきり立つ面々を前にして厳かにそう告げた彼──アイドルをMM特訓するなど愚の骨頂が口癖の、即特訓に定評のあるパッションP──通称〝せっかち〟は、ショックのあまり一斉に緑色のゲロを吐き出す顔文字を連打するメンバーを見渡して言いました。

2012-07-05 02:13:56
@mayu_sakuma

「お前らなんのためにアイドルやらドリンクを使い捨てにしたんだよ...」社員の顔が渋柿を食ったサルのようにゆがみます。そんなことは分かりきっていたことですが改めて言われると、自分達の痴態を公共の場で晒されたような気がして、いたたまれませんでした。

2012-07-05 02:16:51
@mayu_sakuma

「いや、社長の凶荒を見て辞めたいのは分かるけどさ、もうここまで来たら最後までやろうよ。幸い今まで四勝もしてるんだから、上手くいけば賞は入れるかもしれないじゃん。辞めるのはそれからでも遅くないっしょ?」もっともな言葉でした。うん、そうだね。みんなが掌を返して笑顔の顔文字を押しました

2012-07-05 02:21:40
@mayu_sakuma

「乗せられるんじゃない!」鷹の目が顔を真っ赤にして絶叫しました。「こいつは社長とグルだ。そうやって甘言に乗せられてなにもかも失って乞食同然になったのを忘れたか? お前ら今の自分の姿を見てみろよ...惨めなもんだぜ」うっ...再び全員が緑色のゲロを吐き出しました。

2012-07-05 02:24:51
@mayu_sakuma

「合理的に考えろよ。今辞めてもデメリットしかないって...」「そうやって甘やかすから社長みたいなリア狂がつけあがるのが分からんか!?」二人の議論はヒートアップし...答えはでないまま 夜は更けていきました。結局結論は翌日の夜に持ち越されることになったのです。

2012-07-05 02:27:05
@mayu_sakuma

しかし時間は無情にもまゆ達に死ねと告げました。呆然とするプロダクションメンバーの一人が時計を見て嗚咽の涙を漏らします──そう、対抗戦六戦目の火蓋はすでに切って落とされていたのです...

2012-07-05 02:33:28
@mayu_sakuma

裏切り、崩壊、リア狂...次回、さらなる絶望がプロダクションメンバーを襲う...第三幕「私に意見するな! 初期アバ風情が!」 ありがとうございました...つたない文章でしたが、これにてまゆの頑張り物語第二幕、終了とさせていただきます...うふふ♪

2012-07-05 02:38:33