楡の木陰で待ち合わせ

ストールに釦を付けて売り歩くボタン屋・修と、白インコの血を引く女学生アルバトリアの夏祭り。 惹かれあって、誤解して、傷ついて、笑いあって。 『楡の木陰で会いましょう』
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加藤レイ @ura_kato

彼はどんな服を着てくるだろう。商売をするならきっとあの夜色のストールを巻いてる。じゃあ黒は避けた方がいいよね。やっと選んだ時には3時間たっていた。淡い黄緑に濃い紅の帯。行ってきます。*貴方へと続くいつもの道をゆくランプのように握るバレッタ @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-15 15:03:12
しづく @siduku_xxx

てちてちと歩く子供の視線の先、ボタン屋の帯には昨日少女に渡したバレッタに使ったのと同じ硝子ボタンで作ったピンで、黄緑の風船の紐を挟んである。「なんだ、やらねえぞ」*本当に来るのかどうかわからないましてやきみの心だなんて @ura_kato #空想の街 #楡

2012-07-15 15:22:14
加藤レイ @ura_kato

飛ぶように駆ける。今だけは、自分の鳥の能力に少しだけ感謝する。彼はいるかな。会いたい、な。見えてきた楡の木の下の黄緑の風船に自然と笑みが浮かんだ。*黄緑の小鳥になってちかちかと釦を纏う貴方の基へ! @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-15 15:26:37
しづく @siduku_xxx

風が吹いた。彼女、だ。*黄緑の小鳥が紅い両頬を風にとかしてひとりっきりで #空想の街 #楡 @ura_kato

2012-07-15 15:35:20
加藤レイ @ura_kato

こんばん、は!はずむ息を整えて、小さく笑う。バレッタの使い方やっぱり分からなくて、教えてもらえたら嬉しいなって思って。手を開くと、手の平にバレッタの金具の跡がついていた。 *ねえ不思議。着物のせいかな、なんとなく貴方の目を見て話せるんです。@siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-15 15:43:14
しづく @siduku_xxx

こんにち、は!と息を弾ませる少女に、ボタン屋は思わず目を見開いた。いつも制服姿ばかりだから、この浴衣姿は新鮮だ。バレッタを差し出す小さな手に、反応できない。*ぽんわりと微笑むきみのてのひらの金具のあとに嫉妬している #空想の街 #楡 @ura_kato

2012-07-15 16:06:25
加藤レイ @ura_kato

ゆっくりと手の平からバレッタを摘まみ上げる指に、いつも目を奪われてしまう。思慮深い声も夜色の髪や目も器用な指も、好きだった。今日の、黒の浴衣に白地の帯がとてもよく似合っていた。*すいすいと世界を繋ぐその指にはらはらこころ繋がれている @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-15 16:25:58
しづく @siduku_xxx

「向こう、むいて。つけるから」ひとつ頷いてボタン屋に後ろをみせる少女の短い髪がしゃら、と揺れた。呼ばれたように銀氷が降り出す。ボタン屋は僅かに震える指で、少女の髪を整えていく。白いうなじ。*風よりも風らしい髪夕暮れを反射しているしゃらら銀氷 @ura_kato #空想の街 #楡

2012-07-15 16:44:29
加藤レイ @ura_kato

首に時折軽く彼の指が触れる。どきどきで心臓が飛び出しそう、当たった指から彼に伝わってしまいそうでぎゅっと両手を握った。ああ、すごくすごく幸せだけど、同時に死んでしまいそう!*どきどきで楡を枯らしてしまいそう。あああ神さま、死んでしまうわ! @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-15 16:51:24
しづく @siduku_xxx

編みこんだ黒髪をきゅ、とひっぱる。変な沈黙がおりていた。おそらく八割がたボタン屋が口を開かないことが理由だ。だって、声なんか出したら気づかれてしまう。すきだ。この子がすきだ。*あふれそうなオレンジ、恋は指先を経由してぬばたまの髪まで @ura_kato #空想の街 #楡

2012-07-15 17:05:39
加藤レイ @ura_kato

何故か気まずい沈黙。ボタン屋は元々無口だし私もお喋り、ではないから、このくらいの沈黙は珍しくはないのだけど。今日は妙に鼓動が聞こえそうで焦ってしまう。「今日、お仕事ですか?」*良かったら、私と、祭り、そこまでで半端な勇気はくしゃりと折れた @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-15 17:09:51