【読想】『鳥船遺跡 ～ Trojan Green Asteroid (上海アリス幺樂団)』

プラシーボ読想 @placebo_dokusou

　願わくば、友の手にて優しく揺り起こされんことを。さもしい寝床を、斜光が照らすその前に。たとえ自在に飛べたとして、決して手が届かないものもあるのだと、静かに思い起こさんことを。

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★『７．ハルトマンの妖怪少女』 　七曲目。こいしちゃーん！　地霊殿Exの楽曲。どこがどう変わったとは言えないけれど、狂気を控え目に、どこかおどろおどろしさが増しているような気がします。

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　こいしさんの印象が強すぎて、この曲単体ではどうにも語れません。敢えて挙げるとするなら、テンション高めは変わらずながら、六曲目と対称的な、閉鎖と希求の幻視。

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　陽の差さぬ地下へと閉じ込められて、暗闇に現れては消える極彩色の妄想に悩まされ、時に慰められながら。足元の水面から反射する星影に、何者かの面影を探す少女哲学者。その横顔を指差し笑っている、ぱんぱかぱーん！　こいしちゃんでーす！

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★『８．天鳥船神社の結界』 　八曲目。それほどスピーディーな、アップテンポなメロディでもないのに、人の冒険心なるものを掻き立てて已まない、不思議な一曲でした。

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　足を踏み入れた遺構は、思いがけず荘厳で、透明感のある空間が広がっていた。壁面に螺旋を描く階段を、一歩一歩降りてゆく。巨大な石柱を空中に連結させているのは、失われた超古代のテクノロジーかもしれない。傍らの友人に語り掛ける。

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　遺跡とは本来未来的なものではないか。それが機能していた時代にとって、今この現代は遠い明日に違いない。ならば自分達は、未来からの訪問者といっても過言ではないのだと。一時、ロマンチックな空想に耽る。密やかな会話が、静謐な空間に反響している。

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　階段の先は、青白い光に飲み込まれていた。光の底から天井へと、色取り取りの帯や、鈴の付いた紐が吹き上がってゆく。結界は必ずしも、線引きの形を取らないのだ。会話が途切れ、足は留まる。どちらともなっく、今しがた下ってきた上方を見上げる。いや、宇宙に上も下も無い筈なのだ……。

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★『９．感情の摩天楼　～ Cosmic Mind』 　九曲目。星蓮船六面ボス、聖白蓮のテーマ曲。やはりこれも、彼女自身と切り離して考えることは、私にはできそうにありません。

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　鎖されていた世界が解放される。闇は光に払われ、澱のように沈んでいた思念が、吹き込む風に巻かれてゆく。高らかに語られるお題目と、しみじみとした呟きとが、折り重なり、積み上がってゆく。天を摩するほどの頂きにて、手を伸ばせば、星に届くのだろうか。

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　科学者も宗教家も、届く筈もない概念に目を凝らし、解凍を求め、必死にその定型化を図ろうとする姿勢は、実は似通っているものかとも考えます。何の根拠も無くこんなことを言っていますが、“お言葉”を待つだけの信者にはなりたくないものです。

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★『１０．宇宙に浮かぶ幻想郷』 　最終曲。鳥船遺跡のクライマックスは、緩やかな沈黙と、溜息によって綴られているように思えます。帰り道なのでしょうか、後ろ髪引かれるような思いと、ささやかな納得を胸に、少女達は歩きます。今日の冒険を思い返しながら、振り返ることはなく。

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　遺跡は時間的に隔てられたものであり、衛星は空間的に遠望するものである。某理論によってこの二種を同等のものと看做すことができるとすれば、過去を想うことは大空に手を伸べるも同義であり、脳裏に宇宙を描くは、過去と現在を結び付ける所業に他ならない。常識と幻想を隔絶する結界も、あるいは。

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　未来にしろ幻想にしろ、遠くを望む者が、足場を失くして帰ってこれなくなるのは良くある話で。故に、隣にもう一人くらい必要なのではないかと考えたり。

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★結び 　正直、耳に関しては不調法にて、楽曲の良し悪しを語るには憚られるのですが、様々な空想を掻き立てられる点で、やはりZunさんの音楽は素敵だなぁと。

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　此度の読想は以上です。大半まともな文章になっていないような気もしますが、ご容赦をば。