安全安心論を検討する ③

宗教学者 島薗進氏の連続ツイート。 この問題に関する第3弾です。
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島薗進 @Shimazono

0夏学期終わりやっと時間がとれます。放射能の健康影響について対策を軽視し、住民にリスク受忍を強いる政府や福島県、それを支える専門家たちの姿勢や論理のおかしさを指摘する論考はまずはブログに、やがて書物にまとめる予定ですが、それに先立ちツイッターでの報告を継続予定。ご助言等よろしく。

2012-07-26 09:20:57
島薗進 @Shimazono

1安全・安心論を検討する③リスク・コミュニケーション論は原子力推進勢力に組み込まれ利用されてきたのでは?「安全は科学・安心は心理」の両輪で、リスク管理者のリスク評価を市民に受け入れさせる方式が1990年代の後半から形成されていった。1995年のもんじゅ漏洩火災事故がきっかけ。

2012-07-26 09:23:29
島薗進 @Shimazono

2安全・安心論を検討する③96年の『原子力安全白書』以来。国民の「安心」を得ることが国の課題とされるようになった。「専門家はなぜ市民・住民の「安全・安心」の判断や考え方まで指導しようとするのか③」http://t.co/Op3Vq9AT で述べたように高木仁三郎が述べている通り。

2012-07-26 09:23:45
島薗進 @Shimazono

3安全・安心論を検討する③安全は確保されたのだから、国民の安心を得ることが課題、そのためにはリスク・コミュニケーションが重要と政府と原子力推進勢力が考え、「安全・安心」の著作がどんどん出てくるようになる。そこでの特徴は、安全は科学や確率論で正確に捉えられているという前提。

2012-07-26 09:23:59
島薗進 @Shimazono

4安全・安心論を検討する③しかし、実際には未来に大きな影響を及ぼす科学技術はその帰結を見通すのがひじょうに困難。きわめて大きい不確かさがあり、元来想定できないものを仮にこうこうと想定して数量的に表現する。時々、「想定」に反する事態が発生して被害が起こる。科学技術の不確かさを証明。

2012-07-26 09:25:31
島薗進 @Shimazono

5安全・安心論を検討する③このように科学技術が予測できない範囲がひじょうに大きいリスクを生み出すことを市民は感じ取っていてその懸念を表明する。それに対して科学技術の推進を目指すリスク管理側の専門家は、科学的な確率論によりリスク「想定」はできているという立場を固執。

2012-07-26 09:25:50
島薗進 @Shimazono

6安全・安心論を検討する③リスクの想定はできており安全は確保されているのに、市民が非合理な不安を抱く。それが推進を妨げると捉える。そこでリスク管理者側が人の心を問題にし人びとの「安心」を得ることを課題にするようになる。たとえば、村上陽一郎『安全と安心の科学』はどうか?

2012-07-26 09:26:06
島薗進 @Shimazono

7安全・安心論を検討する③村上陽一郎は2005年の『安全と安心の科学』で「「安全」でも得られない「安心」」という見出しを立て言う。「昔中国の杞の国の人で、天が落ちてきはしないかと気に病んだ人がいて、「杞憂」という根拠のない心配をすることの喩えになりましたが」

2012-07-26 09:26:18
島薗進 @Shimazono

8安全・安心論を検討する③村上陽一郎は「杞憂」についてこう論じている。「この文明のなかでは、何が何時どう起こるか判らない、という不安に耐えて、私たちは生きていかなければならないように思われます」p20安全管理の上に現代の病理である市民の不安への対処が課題との考え(③了)。

2012-07-26 09:26:35