四　赤い部屋

ハル @Haru_Alf

@horror_taiken では早速。半ば持ちネタと化してる体験談をば。便宜上、「赤い部屋」の話と呼んでいますが

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@horror_taiken ①これは、小学生の頃の体験談です。 僕が住んでいた町は少子化の煽りを受け人口も6000人と小規模で、通っていた小学校も児童が総勢で300人程度と少ないものでした。そういった関係から隣町の学校とも交流が頻繁でありイベントを合同で行うこともザラでした。

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@horror_taiken ②サマーキャンプと称したいわゆる学年規模でのお泊り会があり、他校の同学年を交えた少人数グループを作り、交流しながら先生の協力の元、カレー作りをしたり花火を楽しんだりと、有意義な時間を共有するイベントがありました。

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@horror_taiken ③その年は、僕が通っていた校舎での開催だったのですが、ひとつだけ、代々語り継がれる噂話というものが存在していました。

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@horror_taiken ④もちろん、噂話をはじめとしたいわゆる怪談というものはここにもありましたし、人面犬だとか、トイレの花子さんあるいは太郎さんだとか、どれも聞いたような話ばかりでした。その一つを除いては。

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@horror_taiken ⑤僕が通っていた校舎はコンクリ製の新校舎であり(建て替えて数十年経ちますが)かつて、同じ敷地内に木造の校舎が存在していました。 その一つだけ他と異なる噂話は、この旧校舎にまつわるものでした。

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@horror_taiken ⑥かつて、この小学校にはある若い男性教師が赴任していました。誠実で優しく、生徒にも人気で、絵に描いたような好青年だったそうです。 しかし、そんな彼はある日、恋人に酷い形で裏切られ失恋してしまい、以降、その様はとても見られたものではなかったそうです。

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@horror_taiken ⑦そしてそのときはやって来ました。 失恋から暫く後、彼が宿直の日の夜に悲劇は起こります。 彼が寝泊まりした部屋から火が上がり、また、校舎が山の中腹に位置したために消防車が到着するまでに時間がかかってしまい、結果、大炎上してしまったそうです。

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@horror_taiken ⑧当然、出火元である部屋に寝泊まりしていた教師は帰らぬ人となりました。 出火の原因は失恋による傷心自殺とも、気疲れによる煙草の失火とも言われましたが、原因はわかりません。

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@horror_taiken ⑨そんなこんなで校舎は失われ建て替えることになったのですが、生徒を深く愛し、生徒にも愛された教師を偲んで、同じ敷地内に、作りの頑丈なコンクリート製の校舎が建ったのです。 ですが、話はここで終わりません。

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@horror_taiken 10.どれ程の月日が経ったでしょうか、いつしか語られるようになったのです。彼が最期のときを過ごした部屋の噂が。

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@horror_taiken 11.深夜、校内を見回っていると、校舎の奥、かつての宿直室があった場所に(今は社会科の授業などに使う資料の準備室になっています)赤々と、あるいは煌々とした灯りがついており、近づくと炎が部屋を焼き尽くさんとする音がしたそうです。

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@horror_taiken 12.何人もの教師が宿直の際に目撃したそうです。直接、関係あるのかはわかりかねますが、僕の通う頃には宿直制は廃されていました。

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@horror_taiken 13.…というような噂話が伝えられており、このサマーキャンプの日の夜にも、誰が話し始めたかわかりませんが怪談語りの場が設けられ、この噂を含めた色々な話を披露し合い、多いに賑わいました。

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@horror_taiken 14.さて、キャンプといえども監督付き、それも教師が管理しているのですから、宴もたけなわ、といった辺りで消灯時間になり、皆、床についたのでした。 そして…

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@horror_taiken 15.深夜2時を過ぎたあたりでしたでしょうか、不意に揺り起こされ、気持ちよい時間から引き戻されました。 目の前には同級生の子が。 何事か尋ねると、御手洗いに行きたいが、就寝前に聞いた怪談が怖くて一人で行けない、とのことでした。

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@horror_taiken 16.彼女とはいわゆる幼馴染みであり、家の方にもよくしていただいていたので、日頃、頼られたら力になれと言い聞かされていたので断るわけにもいかず、渋々ながらも連れ立って御手洗いに向かうことにしました。

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@horror_taiken 17.僕らが寝泊まりしていたのは体育館であり、もちろん体育館にも御手洗いは併設されていましたが、生憎、室内の電球が切れていた為、灯りがついていて、なおかつ比較的キレイということで体育館とは反対側にある来賓・教諭用の方へと向かったのです。

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@horror_taiken 18.行きはよいよい帰りはなんとやら〜とはよく言ったもので、彼女を連れ目的の御手洗いへ至るには(先生方が飲み会をしているらしい事務所を通るのに難儀しましたが)問題ありませんでしたが、帰りが問題でした。

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@horror_taiken 19.用も済んだようで、出てくる彼女を待ち構えて少し驚かせてやろうと碌でもないことを考え、出て来たのを見計らって僕は物陰から飛び出しました。 予想通り彼女は驚き、どころか尻餅をついてしまったので流石にやり過ぎたと思い、彼女に手を差し伸べました。

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@horror_taiken 20.しかし、よく見ると何かがおかしい。いくら声を掛けても、真に驚くと言葉が出ないものなのでしょうか、言葉にならない息を漏らすだけで要領を得ません。そこで気付いたのです。 彼女が見ているのは僕ではなく、後ろにある"何か"だと。

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@horror_taiken 21.まさかドッキリを仕掛けられたその体で咄嗟に逆ドッキリを仕掛けたりしないだろうと、僕は振り返りました。 何も、ありませんでした。 ずっと廊下が続いた先、準備室に灯りが灯っていたこと以外は。

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@horror_taiken 22.おかしい、ありえない。その瞬間、僕の頭の中は思考にならない思考で埋め尽くされました。 その準備室がある廊下は一本道になっており、僕がいた御手洗い前を通らなければ至れませんし、誰にも遭っていません。 なのに一人でに準備室に灯りがつくはずがない。

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@horror_taiken 23.もちろん、御手洗い前に着いたときには灯りなんてついていませんでした。 そして、やめればいいのに僕は腰を抜かした様子の彼女を残し、目の前の異常を確かめるべく歩を進めました。

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@horror_taiken 24.その様子はまさに、噂話の通りでした。 ドア越しでもわかる程に、煌々とした、むしろ絵の具を塗りたくったような赤い光が漏れ、近づくほどにバチバチと燃え盛る音が大きくなっていきました。