unpeu_k #twnovel 2012/7 「今時飛ぶのは流行らない」他

twnovelまとめ:その⑧
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二月大笑 @unpeu_G

狼男と結婚した。燃え上がるような恋も落ち着き最近所帯染みて来た。彼は意外と駄洒落好き。後はやっぱり抜け毛がすごい。掃除しながら思わず愚痴る。「何でこんなに毛が抜けるの。あなたの毛ってすぐわかる。」彼は尻尾を脚に挟んでしょんぼりと言う。「けだもの。みつを」 #twnovel

2012-07-01 23:26:23
二月大笑 @unpeu_G

初老の店主いちおしの二の腕を借りて帰ってきた。薄暗い部屋で包みを開ける。白くて重くて生温い。骨の入っている重み。机に置くと置いたところが少しつぶれる柔らかさ。横目に見ながら書き物をした。 #twnovel

2012-07-03 21:41:02
二月大笑 @unpeu_G

「あなたが同じレベルだからそんなに腹が立つのです。」夜景を見下ろせるバーで微笑む男はそう言った。「もっと自分を引き上げなさい。そうすれば気にならなくなる。」とぼとぼ歩いて帰る途中で探しに来てくれた彼に会った。「また二人でけんかしようね。」笑った彼と手をつないだ。 #twnovel

2012-07-04 19:01:25
二月大笑 @unpeu_G

待ち合わせ場所に現れた彼の服を見てぎょっとした。ダサい。絶妙にダサい。それなのに目が会った途端つられて笑顔になってしまった。何より恐ろしいことにその後会っている間まったく気にならなかった。とにかく楽しくて嬉しくてすっかり忘れていたことに、帰って気付き愕然とした。 #twnovel

2012-07-06 00:36:19
二月大笑 @unpeu_G

みんなが徹夜で踊るからアマテラスが来て朝になる。彼女はクラブを楽しむがしつこいナンパに辟易し男を灰にしてしまった。次に機嫌を損ねたら何が起こるかわからない。担当の署は震え上がった。彼女が来るから朝になる。前日であれば彼女は来ない。踊りは12時までとなった。 #twnovel

2012-07-08 01:57:20
二月大笑 @unpeu_G

「絶対におかしいだろこんなの」「ちょっと考えればわかるのにまわりに流され過ぎっすよね」「都合悪い事は認めない事なかれ主義の保身だろ」「外からとか後から見れば絶対変な事なのに何で起こっちゃうんでしょうね。その時はそれが『絶対』だから?」(なんだよこいつ空気読めよ)#twnovel

2012-07-09 20:03:29
二月大笑 @unpeu_G

廊下からは怒号と振動とガラスの割れる音が聞こえた。恐らく野球用バット。あれは振り回しやすいから。ドア一枚隔てたこちらでは誰一人声を上げることなく一心不乱にテストを解いた。外の暴力に憑かれたように叩き付けられるシャープペンシル。一刻も早く出たい。ここから。 #twnovel

2012-07-12 02:17:21
二月大笑 @unpeu_G

大学に行くには金が要り稼ごうとして就職するには大学に行かなくてはならない。奨学金は実質ローン。バイトとコンテストで稼ぐ。論文エッセイ創作詩歌、賞金狙いでひたすら書いた。ぼつぼつ狙い通りに勝ったがこの作戦には穴があった。「賞金は学校と折半。」永い戦いは終わらない。 #twnovel

2012-07-12 12:42:35
二月大笑 @unpeu_G

小さい頃から母親の絡まったネックレスをほどいて喜ばれるのが好きだった。私もパパみたいな人にあんなプレゼントを貰いたい。大きくなって探偵になった。どんなに絡んだ事件でも細い鎖を丁寧に辿れば解けない謎はない。素敵な人にも沢山会える。まあでも大抵死んじゃってるけど。 #twnovel

2012-07-13 13:45:53
二月大笑 @unpeu_G

「次はあの惑星にしようぜ。」狙いを定めて乗り込んだ。繁殖期初期のオスの前にメスの姿で現れる。「私、宇宙から来たの!」だが反応はいまいちだった。「お前の擬態がまずいんだ。」求められる姿を調べ上げ可視光の範囲だけでも似せる。この作戦が上手く行けばすごい絆が手に入る。 #twnovel

2012-07-14 03:00:32
二月大笑 @unpeu_G

こんな世の中絶対おかしい。このまま行けばジリ貧なのに誰も何にもしようとしない。皮肉を言うだけじゃダメだ。俺は行動を起こす。「どこに訴えたらいいですか?」「市民生活課じゃないですか?」「うちじゃないです。行政課かな?」役所の中をたらい回し。ほらみろダメな世の中だ。 #twnovel

2012-07-14 11:58:49
二月大笑 @unpeu_G

ついにゴールにたどり着いた。ゴールには天使たちがいた。ゴールテープと花束と、あたたかいねぎらいの言葉を受けて振り返ればしみじみとした。「諦めないで良かった。」思わず言葉が口をついた。天使たちは静かに微笑んだ。ああそうか。違う。私には諦める権利なんて無かった。 #twnovel

2012-07-14 12:22:34
二月大笑 @unpeu_G

今時飛ぶのは流行らない。確かに難しいし疲れるしお腹も空くし落ちると痛い。歩くだけでも困らない。だからこそ飛びたかったのだ。必死で風を読み地図を読み、歩きの時は線だった道が面である事を実感した。地上から見えない位置に飛ぶ人向けの看板もある。意外に仲間も多いのかも。 #twnovel

2012-07-15 21:58:00
二月大笑 @unpeu_G

主の栄光の花畑に尽きることなく咲くという花を召喚する魔方陣。打ち上げることで発動し夜空に小さな穴を空け一部をこぼれ落ちさせる。ただその花はこの世の空気に耐えられなくてすぐ溶ける。それでも人に顔を上げさせ網膜に心臓に焼き付ける。そこに確かに光があると。 #twnovel

2012-07-15 23:07:29
二月大笑 @unpeu_G

空気予報はヒットして莫大な影響力を持った。「今日のトレンドは左寄り。そろそろ現状が飽きだされ革新的意見が受けます。極保守的な意見を言うと荒れる恐れがあるでしょう。」きちんと予報を見ていれば叩かれず叩き間違えない。まあでも積まれる物によっては予報を変える事もある。 #twnovel

2012-07-17 23:56:46
二月大笑 @unpeu_G

うっかり出しっぱなした桃は一晩で泥になっていた。この暑さなら仕方ない。樹からもがれて死んでしまえばあっという間に腐りだす。這うようにして片付ける。何がなんでも生きねばならぬ。止まってしまえば追い付かれる。 #twnovel

2012-07-19 01:20:42
二月大笑 @unpeu_G

無人島に持っていくもの三つ。暇潰し程度の話題にも真剣に悩んでしまう。「ナイフ…斧かな?マッチ…ライター?」出ない答えに真剣に悩んでいると彼女が笑う。「そんなの私が何とかするからとりあえずまず私でしょ?せっかくだからサーフボードとトランペットを持って行こうよ。」 #twnovel

2012-07-19 02:00:29
二月大笑 @unpeu_G

両手は一杯になっていた。何か捨てないともう拾えない。わかるがどれにも拾った理由、握りしめていた訳がある。また拾えるかもしれないくらい二度と拾えないかもしれない。今しか持てないのはどれだろう。考えたすえ閃いた。全てを一気に今ばらまく。これこそ今しかできない事では? #twnovel

2012-07-20 01:16:11
二月大笑 @unpeu_G

妹はぷりぷり怒っている。「いっつもバカだバカだっていってほんとしつれいしちゃうよね!あたまがわるくてなにがわるいの!」姉は静かに聞いている。「そうね、頭じゃないかしら。」 #twnovel

2012-07-20 23:27:17
二月大笑 @unpeu_G

「フン、しかし俺を倒した程度でいい気になるのは間違いだ。俺なんてただの下っ端さ!」「それは違うぞ。」「なんだって?」「魔王はそんなお前たちでも住みよい世界を作りたいんだ。つまり組織はお前自身でお前が組織そのものさ。」「…!」「だから死ね」 #twnovel

2012-07-21 21:03:01
二月大笑 @unpeu_G

やっと待ちに待った夏休み。自転車に乗って川へ行く。今日こそあの主を釣り上げる。毎日死闘を繰り広げしかし今遂に勝利した。キラキラ輝く銀色の腹ははち切れそうに膨らんでいる。何か飲み込んでるのかも。開いて中を見てみると丸々とした八月が出てくる。 #twnovel

2012-07-23 09:39:10
二月大笑 @unpeu_G

一年ぶりの母親はまた少し縮んだような気がする。いそいそとスイカを持ってきた。「もうすこしまめに帰ってきなさい。いっつも夏場ばっかりで。」少し振った塩はすぐ溶ける。「うん…でも次も夏かなあ。」仏壇から目をそらして笑う。「だって閻魔さま怖ぇんだもの。」 #twnovel

2012-07-24 08:51:14
二月大笑 @unpeu_G

駅まで見送りに来てくれた。「一緒に乗ろう?」と聞いてみたけど「どうしてよ」と笑われた。一人で改札を通る。「私が女じゃなかったら」声だけが追いかけてきた。「『じゃあまたね』って言えるのにね。」続けて改札をすり抜ける途切れない人々の流れが彼女を小さくして飲み込んだ。 #twnovel

2012-07-29 01:10:47
二月大笑 @unpeu_G

被告を“後悔”刑に処します。いえ“公開”ではありません。来歴を全て調べ上げ「手に入ったかもしれないもの」「失ってしまったもの」に“正解”を創って囁くのです。「こうしていればよかったのに」と。とても手間のかかる刑ですが人が人を裁くのですからこのくらい必要でしょう? #twnovel

2012-07-29 22:41:52