ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/29

七歩 @naholograph

「お客さん刺青お断りだよ」俺の腕に住まう龍神を見つけると、番台のおばちゃんは言った。「実はこれ刺青じゃないんだ」「何言ってんだ刺青だろ」俺は腕を掲げる。「出でよ闇の眷属、翔べ漆黒の翼！」ゴゴゴ。俺の腕に描かれた龍神は腕を抜け現実に姿をとった。「ペットもお断りだよ」#twnovel

キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 暑さでフラフラの俺は林の中を彷徨っていた。林の奥に泉を見つけて一休みしていると妖精が現れた。しかし何も語りかけて来ない。それはそうだ。おれは泉に何も落としてはいないのだから。では何故妖精は現れた？ よく見ると妖精の左手に俺の命が握られていた。

おりひか いくお @Orihika

#twnovel ある所に勤勉温厚な翁と怠惰性悪な媼の夫婦がおりました。ある日媼が湖で溺れ、翁が慌てて駆け寄ると、女神が現れ言いました。「沈んだのはこの勤勉な媼ですか、それともこの心優しい媼ですか」「神様、余計な配慮はいいんで、うちの婆を返してください」「愛は深遠なのね」

Gabb-- @itisnot

着るものもろくになく、荷物袋には馬の糞しか入れてないような人間だ。それが「私は勇者だ」と言ってきている。この村の問題点を尋ねてきたが、果たして彼は信用できるのだろうか。決意に輝いた瞳はとうに私を映していない。たんすを開けて壺を割って、激しい舌打ちを響かせている。 #twnovel

かなりひこくま @kanarihikokuma

金魚鉢にのり夏の夜空へと降りると、星の影から巨大な魚たちがよってきて、ぼくを観察するとこう言った。「狭い場所に閉じ込められて、なんて可哀想な子。でもきっと。閉じられた場所にいることも分かってないのね」嫌味な魚たち。そして。すっごい余計なお世話！　　 #twnovel

birdboiled @birdboiled

#twnovel ネットオークションの画面を見つめる。流浪の王を象ったその人形は、十年前図録に見たのと同じ。つけられた値にはとうてい手が出ないが、毎日そのページを開かずにはおれない。いつしか意識は物語のなかへ連れ去られ、わたしはかすれた声で呟く。いつか、王位に戻して差し上げます。

@kissmint_xxx

私が、苦手なブラックコーヒーを我慢して飲むのは、彼に近付きたいから。毎朝缶コーヒーを買う彼に、私もそれ好きなのって言いたくて。でも彼が好きなのは、甘い甘いミルクティーの彼女だった。だから今朝、自販機の前で彼に言ってやったの。「そんなの好きなんだ。」 #twnovel

@kissmint_xxx

自分で淹れるのは何年ぶりだろうか。博士はコーヒーを淹れながら考えた。いつも助手が作ってくれるのだ。道具の場所は知らないが、コーヒーの成分は知っている。化学の知識を駆使して、完璧なコーヒーを淹れた。しかしそれは、何だか違う味がして、博士は助手を恋しく思った。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 坊主のお経が続く。僕の視線は遺体と遺影を行ったり来たりしている。白い布の下の顔は遺影よりずっと若く、とても同一人物には見えなかった。しかし故人の孫である妻もその両親も親類も何も言わない。僕は故人とは殆ど面識がなく確証が持てない。お経が続く。暑い。明日は火葬場だ。

二月大笑 @unpeu_G

被告を“後悔”刑に処します。いえ“公開”ではありません。来歴を全て調べ上げ「手に入ったかもしれないもの」「失ってしまったもの」に“正解”を創って囁くのです。「こうしていればよかったのに」と。とても手間のかかる刑ですが人が人を裁くのですからこのくらい必要でしょう？ #twnovel

那由多 @lost_story00

転居して数日、アンドロイドの僕の機能はある日突然上手く働かなくなった。きっとこれは未対応な未知の地域に来たから起こったことで、人間でいう風邪みたいなものなんだろう。ダルい自身の体を抱き締め、人肌、マスターの体温が恋しいこと思った。僕を捨てた、僕の大好きなヒト。 #twnovel

雪月 @setugetufuka

森のくまさんは白い貝殻のイヤリングを探していた。それがあるとお嬢さんと歌う事ができるって聞いたから。でもどうしても見つからない。蛇の卵殻をイヤリングにして持っていくと、お嬢さんは逃げてしまった。残されたくまさんはイヤリングを自分の耳につけてみた。涙が出てきた。 #twnovel