ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/06

birdboiled @birdboiled

#twnovel 日の照りつけるコンクリートの外階段で、蜥蜴が動かなくなっていた。まだ艶の残る黒い体の下、ほの赤く乾いているのは血だろうか。息をつき、その隣に腰を下ろして目を閉じると、意識が遠くなってゆく。蜥蜴の血も赤かったんだな。俺も今日まで、自分の血が赤いとは知らなかったよ。

silf⛩️ @athene1020

窓から空を覗くと、シダみたいな植物が熱風に揺れていた。ベランダにはラフレシア。ブーンと虫の音がする。あたりはむせ返るような葉っぱと、蒸気のにおいであふれかえって、息もつけないくらい。「熱帯夜だもん。しょうがないわ」眠る前に麦茶を飲んだ。 #twnovel

銭喰 @zeniqui

#twnovel 道化師は、城の人気者だった。言葉を持たず、喜怒哀楽のうち楽のみを持ち、城の片隅に佇んでいた。あるとき新たな芸を覚えた。彼の頭をはたくと、彼は大きく反りかえって転げ回る。その反応が滑稽で、城のものは皆、彼をはたいた。はたいてはたいて、そのうち彼は動かなくなった。

七歩 @naholograph

もう流されたくない。いいように流され降るばかりの人生。すくわれたと思ってもしょっぱい思いをして終わる。もう沢山だ。流し素麺は逃げ出した。#twnovel　今では普通の素麺として生きてる。みかんで飾られやさしい鰹だしに抱かれる。穏やかな人生。けれど時々ふとあの頃を懐かしく思い出す。

かなりひこくま @kanarihikokuma

退屈を友とした王様のお相手は大変。道化の仕事は王様にゴマをするとか、ましてや宮廷の人々を笑わせるとかではなくて、自由に振る舞うことだった。道化は誰よりも出鱈目に、誰に対しても変わらず言いたい放題、斑の服は自由の特権。だが自由は風みたいなもの、止まったら死ぬ。　 #twnovel

Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel 突然の別れを告げられた後も、雑踏の中で度々君の姿を見掛けた。思わず伸ばす手はいつも、立体映像のように君の体をすり抜けていく。「これからは別々の世界で生きましょう」いかにも有言実行型の彼女らしい。彼女は今、どの次元にいるのだろうか。「ハザマさん、考え事？」「いや」

ておまさお @teomasao

突如ロンドン上空にUFOが現れた。遥か彼方の遊星からやってきた異星人は、異様な光景をまのあたりにする。筋骨隆々とした屈強な者たちが、目も眩むほどの早さで走り、鉄の塊を軽々と遠くへ飛ばしているのだ。「コノホシハ、ヤメテオコウ」UFOはそそくさと地球を後にした。 #twnovel

@sktkx

人間に翼が生えた。心の色が羽の色。僕は灰色だったけど、君は柔らかな夕焼け色をしていた。それが「終わり」を受け入れて、それでも「またいつか」を信じていた君の心の色。それを知った僕の羽は、君を見送った日に鮮やかな緑に染まる。悲しみの青と希望の黄色が心を染めていた。 #twnovel

falsewhere @nowherenotime

#twnovel 余りに渇き皮も剥かずオレンジに齧りつく。果汁が溢れ食道を通過するがもどかしい。体の一部が刻一刻と干からびる一方、別の箇所は水に戻され激しい勢いで膨んでゆく。せめぎ合いの末、果実一個分の水はすぐ消費されつくし、私はまたぶらぶらと薄っぺらなまま軒先で風に揺れていた。

碧 @mimimdr

ポチが動かなくなった。クラスの奴らが殴って蹴って壊したんだ。大丈夫、父さんがなおすよ。ヤだよ、新しいの買ってよ、こんな旧式ダサいよ。父さんは困ったように笑った。父さんは感傷的で非生産的だ。チキュウに残してきたポチそっくりの本物の犬とやらもどうせダサいに決まってる。#twnovel

トージ @yuzubath

ふと目を開くと、少女は小川の畔にいた。辺りには幾千もの蛍が舞っている。幻想的な風景に見とれていた少女だったが、気がつくと彼女自身も蛍となって輝いていた。夢のようだと心を踊らせながら少女は他の蛍とともに対岸を目指した。　小川に映った血だらけの自分には目もくれずに。 #twnovel

七歩 @naholograph

お姫様はこんなに要らない。お伽話の世界にも人件費削減のメスが入る。姫様達は話し合う。何があっても物語だけは汚さない。「我ら全員大人になります」かくして姫はいなくなり、お伽話も消えてった。元姫達は信じてる。いつか誰かが恋をしてまた新しい姫になる。恋は決して滅びない。#twnovel

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 魔法のマッチを手に入れた。人の心に火をつける。煮え切らない彼も、これでプロポーズしてくれるかな。次のデートで使ってみた。気弱な表情が消え、彼の瞳に炎が燃える。「決めたよ。もう迷わない」まっすぐ見つめられ、私の心臓は高鳴った。「他に好きな人がいるんだ。別れてくれ」