一五 押入れのベスト
- horror_taiken
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@horror_taiken あれは確か、私がまだ幼稚園に上がったばかりの頃の事でした。その日の夜はなかなか寝つけず、布団で何度も寝返りを打っていました。隣の部屋では母が電気を点けたまま本を読んでいました。
2012-08-06 23:22:07@horror_taiken ふと横を見ると、押入れの戸が開いていることに気づきました。そこには私が冬の間に着ていたベストが置いてありました。普段なら畳んである筈です。しかしその日は何故か畳まれておらず、しかも人の形をしていました。
2012-08-06 23:22:16@horror_taiken 白い髪の、私と同じくらいの大きさの、人間。それが私のベストを着て押入れの中にに座っていたのです。咄嗟に「見えていることがばれてはいけない」と思いました。ばれてしまったら何か、まずいことが起こるような気がしたのです。
2012-08-06 23:22:22@horror_taiken 目を合わせず、音を立てず、かといってそこにいるそれから目を逸らす事もできませんでした。隣の部屋にはまだ母がいましたが、そちらへ行くこともなんだか恐ろしく感じました。
2012-08-06 23:22:29@horror_taiken それから5分ほど、しばらくその状況が続きました。しかしいきなり、押入れの中のそれが私の方を見て、口を動かして何か言ったのです。
2012-08-06 23:22:38@horror_taiken がちゃん、と玄関のドアが開く音がして父が家に帰ってきました。一瞬玄関に目をやり、再び押入れを見た時にはもうそれはいませんでした。ベストもきちんと畳んで入っていました。
2012-08-06 23:22:44@horror_taiken それ以来私は押入れの戸を開けて眠ることができません。どうしてもあの時のことが脳裏に焼き付いて離れないのです。
2012-08-06 23:22:52@horror_taiken 今思えば、あれは私自身だったのかもしれません。というのも、私は小さいころから男の人が苦手で、父の事も怖がっていました。男の人が現れたら消えてしまったこと、私と同じくらいの大きさだったこと。あれは一体なんだったのでしょうか。これで私の話はおしまいです。
2012-08-06 23:23:28