#twhihyo 【まとめ】 「Live Without You」(コメント含む)
なんか電撃文庫関係でTwitterやってる人たちが飲み会を開催するらしい。東京もんは楽しそうですな! けまらしいのでその日に合わせてTLで小説書く。来週火曜日だっけ。
2010-07-11 02:22:39急な用事などが入ったら延期する可能性もありますが、延期しない場合はまた当日に改めてお知らせします。前にやった時と同じ感じで、ちょっとした短編をリアルタイム執筆で連投……という感じになると思います。
2010-07-11 02:25:48今回もこんな感じでいきます。ルールも前回と同じ。1「リアルタイムで書く(まとめて書いた物を投稿しない)」/2「書き直さない(一旦postしたものは消去しない)」/3「詳しいプロットは立てない(ぐだぐだになっても泣かない)」
2010-07-13 16:51:24予告通り、21:00から始めます。小説本文は、文頭に【XX】とナンバリングすることで通常POSTと区別。疲れたら一回か二回休憩を挟む、と思う。
2010-07-13 20:54:22【01】僕の姉さんは美人で頭もいい言ってみれば才媛で、東京の有名な大学院に通っていたのだけれど、24歳の時に妊娠した状態で自殺未遂をした。
2010-07-13 21:01:14【03】姉さんのお腹の中にいた赤ん坊の父親が誰なのかはわからなかった。それは姉さんしか知らないことであったのに、姉さん自身が何もわからなくなってしまったのだから。両親はショックを受けていたが、どうしようもない。だから『そうなった』という結果だけが残った。
2010-07-13 21:06:23【04】それから三年間、姉さんはずっと家にいる。外には出ない。僕のことや両親のことは覚えているので「ここはどこ、私は誰」みたいなことも言わないし、暴れたりもしない。でも、外には出せない。
2010-07-13 21:07:30【05】姉さんの世話は僕の役目だ。僕は学生で(もちろん当時の姉さんのように優秀ではないけれど)比較的時間に余裕がある。それに僕は、姉さんが好きだから、世話は苦にならないーーこうなる前も、こうなった後も、同様に。
2010-07-13 21:10:15【06】「今日の夕ご飯は何が食べたい?」「オムレツがいいわ。オムレツは辞書の味がするのよ」「プレーンでいいのかな? それとも何か入れる?」「カズくんはオムレツが可哀想だとは思わないの?」「そうだね、可哀想だね」
2010-07-13 21:13:02【07】「姉さん、僕は大学に行ってくるから家で大人しくしていてね」「大丈夫よ、家の外は硫化水素ナトリウムの雨が降っているもの。恐くて出られやしないわ」「じゃあ、行ってきます」「カズくん、長靴を履いても無意味なのよ」「これはブーツだよ姉さん」「そうね、ブーツはレとミの音がするわ」
2010-07-13 21:16:59【08】そんなふうに繰り返される会話に、果たして意思の疎通があるのかどうかはわからない。けれど姉さんはいつだってにこにこ笑っているし、僕はだからそれで構わないんじゃないかと思っている。
2010-07-13 21:18:30【09】生活能力がない訳でもないのだ。家でひとりでいる時は、僕が作り置きした食事をきちんと食べてくれる。歯を磨いたりパジャマに着替えたり、そういったことにも支障はない。時々、お風呂に一緒に入ろうと子供のように駄々を捏ねられるのは困りものだが、まあ、それくらい。
2010-07-13 21:22:44【10】父さんと母さんも、今ではこの生活に、狂った姉さんに、慣れてしまっている。ただふたりはやはり時折、つらそうにしていた。気持ちはわかる。だって今の姉さんは残滓なのだ。聡明で、家族思いで、優しくて、感性豊かで、とにかくありとあらゆるものが完璧だった彼女はもう、どこにもいない。
2010-07-13 21:25:39【11】バカで、家族のことなんか気にもしないで、優しさという概念を他者に用いる術を忘れてしまっていて、豊かな感性の代わりに壊れた感覚が詰め込まれているーーそれが今の姉さんだ。外見だけが同じだけど、中身がまったく違う。
2010-07-13 21:28:08【12】時々両親は、すまなそうな顔で謝ってくる。ごめんねカズくん、ミカの世話をずっと任せきりにしちゃって。いいんだよと僕は答える。正直、大学なんてどうでもいい。僕はサークルにも入っていないし、アルバイトもしていなかった。友達もいらない。必要ない。姉さんがいればそれでいい。
2010-07-13 21:33:21【13】姉さんは時々、夜、僕の部屋へとやってくる。枕の代わりに何故か分厚い専門書を持って「カズくん、反転マトリクスの夢を見ないように一緒に寝ましょう?」と。
2010-07-13 21:46:33【14】ベッドの中で僕に背を向け、すやすや寝息を立てる姉さんは幸せそうだ。持ってきた専門書は枕代わりに使わず、抱き締めたまま。その専門書にどんな思い出があるのだろう、もしくはないのだろう。僕にはわからない。
2010-07-13 21:48:18