「Live Without You」

Twitter上でリアルタイム執筆した小説。 何らかのエラーかまとめ作成の際に【43】のみがTL上に表示されなかっため、終了後に再度POSTしたものを使っています。そのため【43】のみ投稿時間にずれがありますがご了承ください。
Twitter小説
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藤原祐@FANBOX始めました @fujiwarayu
先日予告した通り、TLで小説書きます。21:00より予定。前回やった時「もうやりたくない」って言ってたのにね……。
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今回もこんな感じでいきます。ルールも前回と同じ。1「リアルタイムで書く(まとめて書いた物を投稿しない)」/2「書き直さない(一旦postしたものは消去しない)」/3「詳しいプロットは立てない(ぐだぐだになっても泣かない)」
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【01】僕の姉さんは美人で頭もいい言ってみれば才媛で、東京の有名な大学院に通っていたのだけれど、24歳の時に妊娠した状態で自殺未遂をした。
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【02】赤ん坊は流れ、本人は三日間ほど昏睡状態に陥った。そして目を覚まして以来、姉さんは才媛ではなくなってしまった。
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【03】姉さんのお腹の中にいた赤ん坊の父親が誰なのかはわからなかった。それは姉さんしか知らないことであったのに、姉さん自身が何もわからなくなってしまったのだから。両親はショックを受けていたが、どうしようもない。だから『そうなった』という結果だけが残った。
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【04】それから三年間、姉さんはずっと家にいる。外には出ない。僕のことや両親のことは覚えているので「ここはどこ、私は誰」みたいなことも言わないし、暴れたりもしない。でも、外には出せない。
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【05】姉さんの世話は僕の役目だ。僕は学生で(もちろん当時の姉さんのように優秀ではないけれど)比較的時間に余裕がある。それに僕は、姉さんが好きだから、世話は苦にならないーーこうなる前も、こうなった後も、同様に。
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【06】「今日の夕ご飯は何が食べたい?」「オムレツがいいわ。オムレツは辞書の味がするのよ」「プレーンでいいのかな? それとも何か入れる?」「カズくんはオムレツが可哀想だとは思わないの?」「そうだね、可哀想だね」
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【07「姉さん、僕は大学に行ってくるから家で大人しくしていてね」「大丈夫よ、家の外は硫化水素ナトリウムの雨が降っているもの。恐くて出られやしないわ」「じゃあ、行ってきます」「カズくん、長靴を履いても無意味なのよ」「これはブーツだよ姉さん」「そうね、ブーツはレとミの音がするわ」
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【08】そんなふうに繰り返される会話に、果たして意思の疎通があるのかどうかはわからない。けれど姉さんはいつだってにこにこ笑っているし、僕はだからそれで構わないんじゃないかと思っている。
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【09】生活能力がない訳でもないのだ。家でひとりでいる時は、僕が作り置きした食事をきちんと食べてくれる。歯を磨いたりパジャマに着替えたり、そういったことにも支障はない。時々、お風呂に一緒に入ろうと子供のように駄々を捏ねられるのは困りものだが、まあ、それくらい。
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【10】父さんと母さんも、今ではこの生活に、狂った姉さんに、慣れてしまっている。ただふたりはやはり時折、つらそうにしていた。気持ちはわかる。だって今の姉さんは残滓なのだ。聡明で、家族思いで、優しくて、感性豊かで、とにかくありとあらゆるものが完璧だった彼女はもう、どこにもいない。
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【11】バカで、家族のことなんか気にもしないで、優しさという概念を他者に用いる術を忘れてしまっていて、豊かな感性の代わりに壊れた感覚が詰め込まれているーーそれが今の姉さんだ。外見だけが同じだけど、中身がまったく違う。
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【12】時々両親は、すまなそうな顔で謝ってくる。ごめんねカズくん、ミカの世話をずっと任せきりにしちゃって。いいんだよと僕は答える。正直、大学なんてどうでもいい。僕はサークルにも入っていないし、アルバイトもしていなかった。友達もいらない。必要ない。姉さんがいればそれでいい。
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【13】姉さんは時々、夜、僕の部屋へとやってくる。枕の代わりに何故か分厚い専門書を持って「カズくん、反転マトリクスの夢を見ないように一緒に寝ましょう?」と。
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【14】ベッドの中で僕に背を向け、すやすや寝息を立てる姉さんは幸せそうだ。持ってきた専門書は枕代わりに使わず、抱き締めたまま。その専門書にどんな思い出があるのだろう、もしくはないのだろう。僕にはわからない。
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【15】そんな時、ああ僕と姉さんの間にはこの専門書一冊分の断絶があるのだな、などと思い寂しくなる。もちろん、顔には出さない。僕は姉さんがおかしくなってしまったあの日、決めたのだ。絶対に姉さんの前で、僕は泣いたり怒ったりしない、と。
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【16】何故なら僕が笑っていて、姉さんが笑っていて、そうすれば今のこの幸せな日々がずっと続くのだから。それを保ちさえすれば、僕らの生活は永遠なのだから。僕はそう思うーー思っていた。
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【17】6月、ある日のことだった。
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【18】僕の従兄が結婚する、という報告が我が家に入ってきた。ついては僕ら家族にも是非出席して欲しい、と。それに関しては構わなかった。従兄であるヒロシさんには子供の頃姉さんともどもよく遊んでもらっていたし、祝福したい気持ちもある。でも問題は、姉さんのことだった。
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【19】姉さんは式に出られない。親戚たちも頭の狂った身内を披露宴の会場へ入れるのは避けたいだろう。だから置いていくことになる。でも式は東京で行われて、行くとすれば一泊二日、どんなに時間を切り詰めてもまる一日家を空けることになるのだ。
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【20】そんな長期間、姉さんを放っておける訳がない。僕は「行けない」と言った。だけど両親は困った顔をした。「ヒロシくんも、カズくんには来てもらいたいって言ってるんだ」しばらく行くだの行かないだのの押し問答が続き、その間、姉は話の意味もわからずにこにこと笑っているだけだった。
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【21】家政婦みたいな人を雇おうとか、一日だけ入院させようとか、そんな案が両親から出たけどどれも厭でたまらなかった。姉の世話は僕がしないといけないのだ。他の奴らになんか任せたくない。でもそうしているうちに、僕が我が儘を言っているみたいな空気になり、結局、僕は折れた。
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22】ぎりぎりまで家にて、ぎりぎりに家を出て、式場に駆け込んで終わると同時に家へ帰るーーそれで朝八時から夜中の十二時までの外出。随分と家を空けることになるけど、そこは姉を信じるしかなかった。
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コメント

Yasu @yasu01 2010年7月14日
これすごいね!これがリレーとして誰かが続けられれば、さらにすごいのに!
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