世界樹妄想日記まとめ

練習兼ねて作ってみた。
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世界樹探索開始前、ギルド編成をあれこれ考えていたころの話。

里村邦彦 @SaTMRa

ツキミは形見の櫛で前髪を上げた。東の大岸壁を見る。渓谷を抜けさらに東には、失われた故国がある。最後の遺児として、取り戻さねばならぬ。弓を引く。弦を張る。「お父様。お母様。行って参ります」率いるギルドは、イル・ミリオネ。かつて故国を尋ねた異邦の学者が讃えた黄金の尊名だ。#人畜世界樹

2012-07-08 16:07:57
里村邦彦 @SaTMRa

「かくて冒険は始まる、と」キヨミはカルテにペンを走らせる。谷の魔物に食われ、一人生き延びた隊商の娘。彼女は発狂している。だがその狂気に興味がある。前人未到の大世界樹への到達。条理の外にある人間の可能性。そのための膳立てには手をかけた。「期待してますよ、ギルドマスター」#人畜世界樹

2012-07-08 16:08:22
里村邦彦 @SaTMRa

マリカは上機嫌で杯を重ねている。明日からは冒険者であり、騎士である。マリカは平民の出だが、騎士とは生き方だ。物語のように、悪しきを挫き弱きを援ける。あの眼鏡の話に乗ったのはその為だ。姫の為に戦い死ぬ。いや死なずともよい。命を賭す。素晴らしい。「騎士ごっこ? 上等よ!」#人畜世界樹

2012-07-08 16:10:08
里村邦彦 @SaTMRa

アラタは眉間を揉んだ。酒場の席で娘四人が和気藹々と騒いでいる。どうしてこうなったのか。自分はあの姫の側近らしい。無論縁も紫もない。顔立ちが東方風(らしい)で、借金で身を持ち崩した、トウの立った冒険者志願。それだけの筈が。あの狂人眼鏡に掴まって。「…逃げられんかなァ…」#人畜世界樹

2012-07-08 16:10:28

第一の大地を探索開始のこと。資金の潤沢さに驚いたりしてました。

里村邦彦 @SaTMRa

初陣、廃坑での鉱石探し。勝手がわからずぼちぼち苦戦。「わあるいんど殿でしたか。恩を受けてしまいました。いずれ報いねば」「姫らしいですね。私そういうの好きですよう」「オイ、これ、大丈夫なのか…?」「苦難あってこその大探索よ!騎士の誉れ!」サチだけ嬉々と地図を描いている。#人畜世界樹

2012-07-08 23:04:06
里村邦彦 @SaTMRa

「思ったより何とかなったな」「皆、ご苦労でした。しかしマリカ、ずい分手馴れていましたね」「まあ、家の手伝い…じゃなかった、うわ」「はて? マリカは騎士では」「ええ、ええ、そうです姫。領内に鉱山が…こら笑うな眼鏡!」「え、笑ってませんよう」「?」「…前言撤回していいか」#人畜世界樹

2012-07-08 23:21:36
里村邦彦 @SaTMRa

気球艇は大きな修繕の跡があった。真新しくはない。「これが、私たちの城なのですね」夢見るように言う。「姫。名前はどうしましょう?」「そうですね…」「あ、私パスですよぅ」「…俺もそういうのは、ちょっとな」まとまらない中、差し出される紙切れ。「ウルメンシュ?」サチは笑顔だ。#人畜世界樹

2012-07-09 23:53:01
里村邦彦 @SaTMRa

ウルメンシュ。羽ばたくように踊りまわり伝える、それは鳥の人の名前。昔、遠い国に、もっと遠い国から来た旅人の名前。「ウルメンシュ。よいではないですか。我城の名とします」「御意!」「♪」「…つうかよ」「何です直臣殿」「それやめろ眼鏡。…いや、あいつ、シュは発音できるのな」#人畜世界樹

2012-07-09 23:57:14

今回の冒険者は美食屋だと思います。

里村邦彦 @SaTMRa

冒険者の仕事とは何であるか。「美味い刺身ですね。故国を思い出す」「…泥臭ェよこれ」「川魚ですからねぇ」気球艇により魔物の跳梁する谷を超え、食材を狩り集めることである! 「御飯もいいけど、やはり大探索成就させたいものですね。姫様」北の果てに輝く樹。「ええ、東へ」「東」 #人畜世界樹

2012-07-10 00:47:11
里村邦彦 @SaTMRa

果樹園にていく度となく重傷者を出す一行。「ばったは倒せるのですが」「いや、いいから防具買えよ」「…盲点でした」「すごいなぁ、予想以上!」「あんた、何楽しんでんのよ…」#人畜世界樹

2012-07-10 12:06:55
里村邦彦 @SaTMRa

谷を気球でゆく。ツキミの視線は、巨大な獣に据えられている。見定めて舵を躱すため、それだけか?「谷の魔物に食われたんだってな?」「ええ。姫のご両親が。痛ましいことですねぇ」「…笑うな」「真面目です」遠巻きにしていた甲板を渡る。「言っておく。勝てんぞ。…なんだ、姫」 #人畜世界樹

2012-07-10 12:27:29
里村邦彦 @SaTMRa

力不足はわかっている。だが、魔物は人を脅かす。谷の先、祖国への道は開かれねばならぬ。最後の落胤を、案じているだろう。だが、たっときものの責務というものはあるのだ。…廃坑の風景。往来する、一際凶悪な大猿。「箴言感謝します、アラタ」「いや、分かってるならいいんだが…」 #人畜世界樹

2012-07-10 12:31:20
里村邦彦 @SaTMRa

姫様が大猿討伐を言い出したのは翌日のことであり、酒場の百匹狩りを自称する老人へ熱心なインタビューを敢行するに至り、アラタはひどい頭痛を覚えた気になった。ギルドの他の連中が大体楽しげなのも錯覚をいや増す。何を考えているんだこいつらは。 #人畜世界樹

2012-07-10 12:35:17
里村邦彦 @SaTMRa

マリカは武具の手入れに余念がない。二度大猿に挑み、二度負けた。どちらも最後は気絶した。魔物に敢然と挑む騎士。絵物語だ、難しい。「頑張りなさいよ、私」盾の革紐を締める。考えた末の結論は、騎士に憧れて遮二無二学んだ防御戦術を活かすこと。「本当にしてやろうじゃないの」 #人畜世界樹

2012-07-14 09:14:46
里村邦彦 @SaTMRa

宿の屋根の上で、サチが踊っている。「危ないですよ、サチ」「手当しますから大丈夫ですよぅ」「そうですか」サチは上機嫌だ。生傷は増えた。でもこれは皆と冒険している証。お客さんは喜ばないかもしれないけど。といの端でぐっと身をそらす。私は大好き。次は何をするんだろう。 #人畜世界樹

2012-07-14 09:19:59
里村邦彦 @SaTMRa

冒険者は五人一組、大原則だ。「両翼、散開! 足を止めないでよ!」だから、縦横に動いて相手の勢いを殺す。防御陣形。「早く黙ってくれよなァ…こちとら撃たれ弱いんだ!」「弱音は許しませんよ!」腕を矢で縫い止められ、大猿が絶叫する。通じている。「電撃ぃ、びりびりー」「…♪」 #人畜世界樹

2012-07-15 07:11:01
里村邦彦 @SaTMRa

イル・ミリオネが緑谷の小迷宮、FOEというFOEを狩り、大物狩りで妙な噂になりはじめたのは、その数日の後のことだ。「次はあのカンガルーを…」「いや、姫様。先に大迷宮に挑みましょうや…」「そうですねぇ。あっちには熊がいるって話ですし」「熊!」「相手にとって不足なしね」 #人畜世界樹

2012-07-15 07:14:05
里村邦彦 @SaTMRa

ウルメンシュの気嚢越しに見上げる空は、夜の色をしていた。舵を握らない間、晴れていれば、ツキミはいつもこんな様子だ。東の空を見ている。東には祖国がある。祖国への道を阻む魔物は悉く倒さねばならぬ。魔物は人を喰らう。民が安らわぬ。自分には、最後の姫としての責務があるのだ。 #人畜世界樹

2012-07-15 07:16:27
里村邦彦 @SaTMRa

黒熊を下し、揚々と進撃するイル・ミリオネ。しかし迷宮に新たなる魔物の報あり。「赤カブトですねぇ」「何ですか?」「お伽話の化物熊ですよぅ。勇敢な白犬と戦います」「…なんだそりゃ」「辺境伯から名指しでの討伐依頼。つまり倒すべき敵よ!」「如何にも」「…気は進まんがなァ…」 #人畜世界樹

2012-07-16 02:32:48
里村邦彦 @SaTMRa

入り組んだ枝が迷宮の壁を造る。下手な岩より厚く、堅い。それを打ち抜いた痕は、「地下三層か。…瓢箪から駒っつうのか、これは?」「運命の導きでしょう。我々の為すべき戦いがあるのです」「姫様、ご機嫌ですねぇ」「いや、運命てなァ…」「あ、サチ、覗かないのよ! 危ないから!」 #人畜世界樹

2012-07-16 02:35:40
里村邦彦 @SaTMRa

キヨミは楽しんでいる。この状況をだ。執拗に凶悪な魔物を狩り続ける。狂気の沙汰だが、その結果として(偶然の助けもある。偶然! 狂気だけが運命的偶然を引き寄せるのだ。彼女は信じている)未踏の地域を見つけ出した。「本当にやってくれますかねぇ。楽しみですよぉ、これは」 #人畜世界樹

2012-07-16 02:37:46
里村邦彦 @SaTMRa

アラタは大爪から削りだした、見事な長剣を眺めていた。信じ難いが。「ヤッちまったんだなァ…」赤熊の親玉。馬鹿とキチガイと自分の五人がかりで。思ったより、ずっとあっさりと。しかも、「次の谷への道か。…英雄? 冗談じゃねェぞ、俺は」道場一の剣技。試したかっただけだ。それが。#人畜世界樹

2012-07-16 02:42:48