四ツ谷階段

夏には幽霊話が定番ですよね。
0
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel アパートの階段に巣食う幽霊に出会ったのは俺が酔っ払って帰宅した夜の事だった。らしい。正直覚えてない。酔うと記憶をなくす俺がどんな行動をとるかなんて俺に責任は無いのだ。「ひ、ひどいです!無理やり連れてきて!」翌朝目の前には半泣きの幽霊。…どうしよう。

2012-08-14 02:39:15
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 「ほ、本当に覚えてないんですか?」「全然」「あ、あれですよ!?幽霊といえども、女性の私に、あ、あんな」「すまん、記憶がさっぱりで」「う、訴えます!」「どこに?」「え、え、天国?えと、幽霊の世界って警察ってあるんでしょうか?」「知らん」「わーん!」

2012-08-14 02:44:35
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 起きたばかりで二日酔いの頭ではさっぱり頭が働かない。「まあ…なんだ」手を伸ばす。びくっとした幽霊の肩をすり抜ける。「触れもしない俺が、幽霊のアンタに何したんだ?」「私に話せって言うんですかセクハラです顔から火が出ます恥ずかしくて死にそうです!」

2012-08-14 02:50:11
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 死んじゃってますよね、の俺の突っ込みは届かなかった。半透明のくせにすごく真っ赤になった表情で、幽霊が睨んでくる。おお、呪われそうだ。「とにかく、私を元の場所に戻してください。あの階段落ち着いていい雰囲気なんです」「戻せって…戻れば?」「できません」

2012-08-14 02:53:42
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel そろそろ頭が働きだしてきた。幽霊と少し話した俺はこう言った。「つまり、地縛霊だった筈のアンタが、何故か俺の部屋に縛られてるって事か」「そうです」「出れるか試してみた?」「一晩中試しました」「すごい努力だな」「貴方の傍なんていられません!」俺何したの。

2012-08-14 02:59:50
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel ぷるぷる半泣きの幽霊が部屋にいる。すごいシチュエーションだ。まあ…とりあえず。「じゃあ、俺大学行ってくるから」「え、私の事は!?」「もうすぐ講義あるし。遅刻だし」「幽霊ですよ!?優先順位違いませんか!?」「見解の相違だ。行ってきます」「ちょっと!」

2012-08-14 03:10:56
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel アパートの階段を降りながら俺は部屋を見上げた。幽霊なんて初めて見た。結構、人間ぽいのな。というか、酔うと記憶なくすのは問題だな。しっかり反省しよう、俺。幽霊とは言え、女性に何かしたらしいというのは落ち着かないし気分が悪い。何をしたか聞きたいところだ。

2012-08-14 03:15:16
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 「…無理そうだけど」反応を思い出し、うーんと思案する。その日講義を受けつつ考えたが聞き出すのは難しそうだ。コンビニで夕食を買い帰路に着く。「ただいまー」「わーん!待ってましたー!」ガン泣きの幽霊が出迎えた。「こ、この部屋、幽霊が出ます!!」えー。

2012-08-14 03:20:21
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel アンタが言うか、は涙目で却下された。「ラップ音が一日中するし!TVがいきなり物騒な呟き声出すし!蛇口から真っ赤な血が出るし!怖いです!」「えーと幽霊ですよね?」「幽霊だから幽霊が怖くないって言うんですか!私、生きてた頃はホラーが大の苦手でした!」

2012-08-14 03:24:41
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 「俺、そういうの一度もあって無いんだけど」「だって!今日は一日中私怖くって!…って、あれ?」幽霊は、ふと周囲を見渡した。「そういえば今は…静かです」「俺、霊感ないからなー」「その言葉私の目の前で言いますか?」「そういやそうか」

2012-08-14 03:29:32
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 「俺が見えるのはアンタだけ」「貴方がいると、この部屋の怪奇現象は起きない…何か特殊な力とか持ってます?」「いや、そういう少年漫画的なのは…うーん、もしかして昨夜の俺の行動がきっかけ、とか?」思いつきで行ったら、幽霊の顔が火を噴いた。うお、真っ赤だ。

2012-08-14 03:34:01
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 「そ、そ、そそそそ、そんな事がありえるでしょうか、あんな、あんな事で、私…」両手で顔を隠しながら羞恥に耐える幽霊。なあ、昨夜の俺。いったい何したんだ?しばらくの後、落ち着きを取り戻した幽霊が言った。「とりあえず、階段に戻る方法が見つかるまで…ここに」

2012-08-14 03:39:26
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 幽霊が言う。「貴方の部屋にいるしかないみたいですね」「まあ、いいけどさ」何か俺が原因みたいだし。不満は言うまい。「あ、いい事思いつきました」幽霊がぽんと手をつく。「ん?」「貴方という存在が、この現象の原因なんです。私が階段に戻るためには貴方が邪魔」

2012-08-14 03:44:53
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 幽霊が微笑む。「だから、ねえ、貴方死にませんか?」「ぶっ」とんでもない事言い出した。「そうです、私幽霊なんです。呪い殺すとかできますよね、私。どう思います?」「相手に聞くか、そんな事」「私、頑張ります!応援して下さい!」「誰がするか」

2012-08-14 03:50:31
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 四ツ谷アパート404号。それが俺の住む部屋だ。1LDK風呂付トイレ付。家賃は安く環境もいい。筈だった、昨日までは。「ねえ、昨夜の私の呪詛効きました?」「効いてない」おまけに幽霊付。「じゃあ大学行くから」「だ、駄目。留守番怖いです!」しかも幽霊が苦手。

2012-08-14 03:57:35

ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 俺の部屋には幽霊がいる。「ひ、ひどいです!あんなの見せるなんて!」透き通った身体は宙に浮き足首の先は見えない。「いや、まさかアンタが見るなんて思わなくて」長い黒髪はその表情すらも隠すほど。「ホ、ホラー映画とか!怖いです!」お前が言うか、は却下された。

2012-08-14 23:39:49
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 「暑い…」手団扇でパタパタ。まったく効果なし。クーラーが壊れた室内は地獄だ。「なあ、ちょっと怖い事してみて?ヒヤッとするかも」「そんな理由でなんかできませんよ!?」幽霊が呆れ顔で言う。「涼しいトコに行けばいいじゃないですか」「アンタ泣くじゃん」「う」

2012-08-19 12:57:43
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 俺の部屋にいる幽霊は幽霊が苦手である。幽霊なのに。「例え自分が幽霊になっても!無理なものは無理です!」力説する幽霊。「同じ幽霊同士仲良くすれば?」「無理です!ここの幽霊怖いことばっかりするんですよ!?あの手この手で!」可愛がられてるんじゃあ…。

2012-08-19 13:03:48
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 幽霊と言えば【ポルターガイスト】天井がきしんだ音を出したり、人形が宙を浮いたり、それは幽霊が現世に影響を及ぼす力の一つだ。「あ、もうすぐ始まりますね」夕食時、TVを見ていたら幽霊が現れた。「こら勝手にチャンネル変えんな」「この番組好きなんですよ」

2012-08-19 13:09:41
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel バイトから帰宅すると半泣きの幽霊が部屋の片隅にいた。「ただいまーどうした?」「ぐすっ…おかえり…ひっく…なさい…」「また、幽霊に驚かされたか…」荷物を片付けながらため息をつく。幽霊の矜持は無いのか。「違…今見てたドラマが悲しくて…」そっちか!

2012-08-27 22:25:22
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 貧乏学生ではあるが、パソコンもあるし、インターネット回線も引いている。「えーと、検索検索、と」ブラウザの検索欄をクリック。と、幽霊が叫んだ。「あ、駄目です!」の、と打った瞬間表示される検索履歴。『呪い はじめて 簡単』『呪い 怖い 死ぬ』「…」「…」

2012-08-27 22:31:15
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 俺の部屋に出る幽霊は女性である。推定二十代前半。黒髪色白の貞子系女子。最近のマイブームは、俺が見てるTVの画面からズル…ズル…と這い出て来ること。ウザイ事この上ない。試しに貼ったお札は効かなかった。「私…悪霊じゃないです…」泣かれた。延々泣かれた。

2012-09-09 18:54:41
ハラヨシ @harayosy

四ツ谷階段 #twnovel 梅雨が終わり夏も本格化してくる今日この頃。俺の部屋には幽霊が出るというか、居着いている。「私の時代がきました!」無駄にテンション高い幽霊。「夏は呪いの季節ですよ!」恋の季節みたいに気軽に言わないで欲しい。「じゃあバイト行ってくる」「平常運転ですね!」

2013-07-16 18:23:22
ハラヨシ @harayosy

四ッ谷階段 #twnovel 茹だるような暑さにやられながら部屋に戻ると、幽霊が部屋の片隅で体育座りをしていた。「…どうした。また他の奴らにいじめれたのか」コクンとうなづく幽霊。 同じ幽霊なのに、驚かされるってどうなんだ。「私…怖くて…」グスグス泣く幽霊。非常にうっとおしい。

2013-08-06 15:02:50