「ヒー・コールズ・イット・”ニンキョ”」♯1

NINJASLAYER(@njslyr)の二次創作小説です。見ての通り実際安いですが、お読み頂ければ幸いです。
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欺瞞動画の会社 @naclaqns

二次創作短篇集「エイト・ミリオン・フラウズ」より:「ヒー・コールズ・イット・”ニンキョ”」♯1

2012-08-16 00:32:57
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((フォローワーの皆さんへ:これはニンジャがない日にニンジャ・アトモスフィアを自給自足すべく勝手に書く二次創作小説だ。加えて前回ので調子に乗った。))

2012-08-16 00:35:43
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((よって公式のあれとかなんかとは全く関係がなく、色々なものが間違ったり食い違ったりする。ごようしゃください。あと今日はゆっくり更新だ))

2012-08-16 00:36:38
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ウシミツ・アワーを迎え、先ほどまでツブテのごとく降り注いでいた重金属酸性雨は霧雨へと変わった。とうに終電を走らせたサッキョー・ラインのガード下から一人の着流し男が現れた。対重金属酸性雨加工すら施していないただのカラカサが、彼の身を守る唯一の品であった。1

2012-08-16 00:45:40
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傷の縫い目が数本走る顔、本来眼球があるべき部分には大量生産品の埋め込み式サイバーサングラス。角刈りの髪、うなじには「Y-11/SK(--)」の文字と消えかかったバーコードのイレズミ。5分ほど歩いた彼は、懐からチリガミを取り出し痰を切ると、1件のパブのフスマを開いた。2

2012-08-16 00:54:04
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カロンカロン。ナリコベルが響く。カウンター席があるだけの店内には、客の一人も居ない。望ましいことだった。だからこそ彼はウシミツ・アワーを待ったのだ。オイランめいた、と言うには少々ラフな格好の女性が一人、カウンターの内側で深夜オスモウ番組を観ている。3

2012-08-16 00:58:03
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「サケ…ンッ!」男が再び痰を切る。「サケだ。ショーチュー・サケ…一番高いのをくれ」オイラン店主はTVの電源を落とし、つまらなさそうに振り向いた。「プッ!」そして口に手を当て、吹き出した。男は無言でカウンターを見つめる。4

2012-08-16 01:01:30
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「アンタねェ、アー…、カンバンに出してないウチも悪いんだけどねェ、ウチは…ンー…このエリアはヤクザご禁制ヨ?そりゃ、ウチはこの辺じゃ一番うらぶれた店だけどねェ…」苦笑するオイラン店主。5

2012-08-16 01:05:31
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「だいたいアンタ、その格好…カートゥーン?ムービー?今どきそんな分っかりやすいヤクザ…。実際クラシックヨ」口に手を当てたまま、クククと笑う。男は眉毛をハの字、口をヘの字にして、出口へとゆっくり振り向いた。「スマン。邪魔をした」「アラ?もうオミカギリ?」「?…ンッ!」6

2012-08-16 01:09:41
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「そこ、座りなさいヨ。ショーチューだっけ?高いやつ?アンタ、金あるんでしょうネ?」「いや、俺は実際ヤクザで…」「見れば分かるわヨ!飲みたいんでショ?取っておき出してあげるから。あのカチグミのボトル、頂戴しちゃおう」ハの字眉とへの字口のまま、男は首を捻りつつカウンターに着いた。7

2012-08-16 01:18:52
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店の奥からオイランが持ってきたのは、ショーチューの茶色い瓶。「無限に高級 ブッダが涙」とラベルが貼ってある。そして出来合いと思しきサシミ。オイランが男の隣の席に腰を下ろし、2つのユノミグラスに氷を3個づつ入れる。まずはヤクザのグラスに、次は自分のグラスに「ブッダが涙」を注いだ。8

2012-08-16 01:25:20
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ヤクザがグラスを半分ほど干す。「クゥーッ!タマンネエ…!」「アンタ、ホントにカートゥーンみたいねエ…」「アッコラー?カートゥーンナンデ?」「怒らないノ。何て言うの…ステレオタイプ?今どき見ないヨ」「ンッ!そうかもしれないな…」「ホラ、そのドスとチャカ、外しナ」9

2012-08-16 01:30:07
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バツが悪そうに、男は懐からヤクザガンを出した。「ドスは…勘弁して欲しい。すまない」「まあ、いいワ。アンタ、悪いヤクザじゃなさそうだし」「悪いヤクザ?ナンデ?」「そりゃネ、こんな街で店やってりゃネ、分かるわヨ。アンタは良いヤクザ」「ヤクザは、ヤクザだ」「それでもヨ」10

2012-08-16 01:34:35
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男の眉が再びハの字を描く。コワモテ(威圧的表情)を武器にするヤクザには、全く似つかわしくない仕草だ。「アンタ、面白いネー…」「ナンデ?」「アンタサ、何か、お話してヨ。長話はダメヨ。それ飲む間…」「サシミは?」「プッ!食べなさいナ!」「ンッ!…分かった」11

2012-08-16 01:39:20
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「…この店、盗聴器の類は?」「プッ!無い無い!」「なら、オイラン=サン、あんたの口は?」「シツレイヨ!」「なら、話そうか。…オヒケーナスッテ!」男が叫んだ。エンシェント・ヤクザスラング!Y2K以前に失われたとされる、威圧の中にも奥ゆかしさを残した、呪文めいたパワーワード!12

2012-08-16 01:56:20
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「アイエッ!?」「オヒケーナスッテ!ドーモ、タイガーファング・ニクタベルクランのリュージです」「アイエッ、ドーモ、ユミです」「ウマレはヨロシサン製薬ネオサイタマ第4プラントです。実際安いです。よろしくお願いします」「アイエッ…よろしくお願いします」13

2012-08-16 02:00:37
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碩学の徒たる読者諸氏はご存知であろう。「ジンギ」…古代ヤクザクランに伝わる神秘的プロトコル。決して相手を下に置かず、自らの素性を明かし威圧する。奥ゆかしいだけでも、利己的に過ぎても立ち行かない、ヤクザ世界独特の礼法…。マッポーの世に、その誇り高い声が響いた。14

2012-08-16 02:06:32
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「…ンッ!驚かせたか。すまない」「スゴーイ!私そのアイサツ、ムービーで見たことあるヨ!ヤクザスゴーイ!スゴイヨ!ねェ、お話!」「ムービーか。実際ムービーめいているかもしれん」「タノシミよ!ホラ、飲んデ!」オイランが男のグラスにショーチューを注ぎ足す。15

2012-08-16 02:14:22
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「実を言えば、俺も誰かに話したかった。どこから話せば良いか…実際こういう機会は無かった…」ヤクザが顔を上げ、グラスに口を付けた。オイランがサシミを指で摘み、ショーユも付けず口に入れた。16

2012-08-16 02:19:29
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ヒー・コールズ・イット・”ニンキョ”」プロローグめいた♯1終わり。♯2に続く

2012-08-16 02:20:15