【SQ4】世界樹妄想日記 二周目【第一の大地-2】

第一ミッション開始なんだけど、一周目の連中と比べてスリルがない! バステ頼みの一発芸ってのは男の子だよな。 …まあ堅実なのはいいことかなと言い聞かせつつ。
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◯(仮名) @kamerimaru

『世界樹妄想日記R2 ミッション2回目編』 1

2012-08-17 17:38:59
◯(仮名) @kamerimaru

碧照ノ樹海。十年、冒険者たちが挑み続けた場所。誰ともなく、世界樹の迷宮と呼ぶようになっている。僕にとっても慣れた仕事場だーー一階に限るなら。「入り口が梢のてっぺんで、根元の方へ広がってるらしいんです」地図帳を指差す。「ただ、地下二階より先は詳しく見た人がいません」「何故だ?」 2

2012-08-17 17:43:09
◯(仮名) @kamerimaru

「迷宮なんスよ。文字通り。なんつーか、人の手が入ってるんです。…クロロくん、いいスか?」「あ、どうぞ」地図を渡す。リリさんが示すのは地図に書き入れた記号。扉と宝箱だ。「ここまで見てきたと思うんスけど、樹海には完璧人工物が埋まってるッス」「他の小迷宮も同じね」ラナさんが欠伸する。3

2012-08-17 17:47:40
◯(仮名) @kamerimaru

「ただ、どこも、魔物やら、そうじゃない生き物で機能不全起こしてるわけ。…たとえばここなら、あれね」「ん…なんだ、木の壁?」「そ。…ああ、ミリアム。走る準備しときなさいね」「え」「そうですね。来ますよ」「来るって何が」説明する暇はなかった。木の壁が砕け散る。咆哮。「わああっ!?」4

2012-08-17 17:52:00
◯(仮名) @kamerimaru

「人が…悪いぞ」走るのは苦手だ。認めたくないが。「あの熊が、つまり」「そ」ラナが肩を竦める。「人間では破れない木の壁と、それを破壊できる魔物熊。そのバランスで道が開いてるのよね」人間の限界、というわけだ。「だから、ある意味生き物のように道が変化するんですよ。ここは」「なるほど」6

2012-08-17 17:56:59
◯(仮名) @kamerimaru

「まあ、ここまで来れば、地下二階まではもうすぐッスよ。そしたらお弁当でもどうスか?」「リリの料理、なかなかよ。宿の女将さん程じゃないけど」「いや、アレと比べられたら辛いッスよ…」少し笑いが起きた。ふと、クロロが真顔になり、手で制する。「どうした?」「待ってください。血の臭いだ」7

2012-08-17 17:59:59
◯(仮名) @kamerimaru

クロロの号令、私たちは隊形を整える。堂に入ったものだ。素人とは思えない…素人とは? 私は玄人を知っているのか? 「やあ、君たちか。助かった」聞いた声が思考を遮った。「風殿?」「さすが、名うての冒険者プラス1。動きが早いが…少し待った方がいい。薬を分けてくれないか」リリが走る。 8

2012-08-17 18:04:26
◯(仮名) @kamerimaru

風殿は、兵士を連れていた。血だらけで、重症で。リリが手際良く手当てをはじめる。道化た口調と裏腹に頼もしい姿だ。「何があったのだ、風殿?」「新型の魔物だよ。未確認のやつ、赤い熊だ。どこから出て来たんだか…」「そうとう、厄介そうですね」「だろうね。兵士だって手練れぞろいなんだ」 9

2012-08-17 18:06:45
◯(仮名) @kamerimaru

辺境伯も、討伐ミッションを発令するだろうね。そう言って、風殿は傷ついた兵士を連れ、糸の開いた門へ消えた。「そうとう近くまで来てたんですね、赤熊。そうじゃなきゃ、下の階で糸を使ってたはずだ」 なるほど。「しかし、どうするの。あたしらで勝てる相手?」「勝たなきゃならない相手です」10

2012-08-17 18:09:44
◯(仮名) @kamerimaru

クロロは、何かを確信したような表情をしていた。誰かに似ている気がした。記憶をたどろうとして、何もないことに気づく。いや、施療員の先生とかなら思い出せるんだが。「必要、というのは?」「もしかしたら」クロロは地図を指でなぞった。「この迷宮が、打開できるかもしれません」 11

2012-08-17 18:10:54
◯(仮名) @kamerimaru

あー。「あの、自分、後ろ下がってていいスか?」「駄目」そう言うと思ったッスよラナさん…。「まあ安心するといい。いざとなれば私が庇うさ」ミリアムさんが盾を叩く。技能刻印入りのッスね。いや、それにしても、自分治療師なんスよ。それがなんで、…うわ、真っ赤な熊、超威嚇してるッスよ! 13

2012-08-18 20:21:00
◯(仮名) @kamerimaru

「お願いします。リリさん」いや、そんなまっすぐな目で見られても。…見られても困るんスけど。「何眉毛下げてるの」「下げてねッスよ!」「あたしには下がってるように見えるな」「愛らしいと思うが…」「いやいや!」豪胆つーか、よくこの状況でそんなこと言ってられるッスねこの人たち…。 14

2012-08-18 20:33:57
◯(仮名) @kamerimaru

「まあ、リリさんは可愛いと思いますけど」オイイイッ!クロロくん、工房の娘はどうしたんスか!素で言うな!社交辞令にして!「それとして…見てください。あいつの背後、あれ、蜜の樹の壁です」ああ…言われてみりゃ見えるッスね。魔物じゃないと破れない壁。破れかけ。向こうから来たんスかね。15

2012-08-18 20:38:41
◯(仮名) @kamerimaru

「この先、スペースがないんです。あんな大型の魔物が棲むにしては狭すぎますよ」地図は…ああ確かに。「下手すりゃ樹の外側ぶちぬくッスねこれ」「…馬鹿?」「いや、どういう意味ッスか!判ってるスよ!」「じゃあ何?」「そりゃ…」地図を睨む。威嚇する赤い熊を見る。「あの先に、地下三階」 16

2012-08-18 20:41:33
◯(仮名) @kamerimaru

「…つまり、先へ進む手掛かりがあるかもしれない、ということだな!」「そッスね…ああ待ってくださいってば!一人じゃ自殺行為ッスよ!」「リリも来るだろう?」「う」いや、そりゃ全員突っ込む前提なんでしょうけど…。「どうするの?」「…やったるッスよ畜生めッ!」試験管の貯蔵は十分か! 17

2012-08-18 20:44:39
◯(仮名) @kamerimaru

周囲が白い光に包まれた。「結んだわ。合わせて」「はい!」クロロが切り込む。弾ける白は術式光。私は…あれを知っている。いや、自分で使おうとしても、そんなことはできないのだが。続けざまにリリのハンマーが突き刺さり、赤い熊の身体を覆うように、白い光が閃いた。苦悶のうめき声。 19

2012-08-18 20:52:27
◯(仮名) @kamerimaru

私も、一拍遅れて剣を打ち込む。熊が咆哮。当然、白い光は散らない。動きが鈍いのだ。私の。努力の必要があることだ。走り込みをするべきだろうか。熊の腕。盾で流す。強烈に重い。巻き込まれて、「リリ!」「へへ、どってことないッスよ…下がってください!」投げられる試験管。治癒の術式光。 20

2012-08-18 20:59:13
◯(仮名) @kamerimaru

こちらは回復している。が、熊はまだ動く。「格別に頑丈だな、貴様!」鈍い。ああ、構わない。私の役柄は判った。クロロが切り込み、私が後詰め。はっきりしていて迷うところがない。何一つ余分なものがない。戦いとはこうあるべきだ…きっとだ。「合せてください、もう一太刀行きます!」「応!」21

2012-08-18 21:07:42
◯(仮名) @kamerimaru

もうワンセット…打ち込もうとする。間に合わなかった。ひとつ大きく叫ぶと、熊がくるりと身をひるがえしたのだ。「なに?」轟音。蜜の樹の壁が爆砕する。「…逃げたッスか?」「追いましょう!…あ!」クロロが嬉しそうな顔をする。何だ?「予想、正しかったみたいね?」「ん?」ようやく気付く。22

2012-08-18 21:17:37
◯(仮名) @kamerimaru

砕けた樹の壁の向こう、地下三階への階段が、口を開いていた。「おお…なあクロロ。この先は誰も行っていないわけだよな?」「そうなります」「…そうかあ!」「…思ったより冒険馬鹿?」「意味がよくわからんが」「反語的な褒め言葉よ」「反語?」「褒め言葉」「判った!」「…わあ、ッス」 23

2012-08-18 21:19:01
◯(仮名) @kamerimaru

活き活きしてるよね。と、彼女は言う。そうかな、と僕は答える。クロロだけじゃないよ。と彼女は言う。みんな顔が変わったよ。入ってくる素材も増えたし。それが目当てじゃない?そうだよ。職人冥利に尽きるよね!現金だなあと僕は笑う。彼女はむくれた顔になる。ごめん、ごめん。25

2012-08-19 11:52:23
◯(仮名) @kamerimaru

ハンマー任せてもらえることになったんだ。彼女は笑う。つくるのは親方じゃなきゃ駄目だけど、だから頑張って強化入れていってよと。わかったよ、と僕は頷く。しっかり頼むよ。任せときなって。と。みんなのぶんの新しい鎧と、薬と、アリアドネの糸を仕入れて。さて、孔雀亭に戻ろうか。26

2012-08-19 11:55:46