茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第697回「ツイッターも、月への着陸も」
- toshihiro36
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つつ(1)アポロ11号が月面に着陸した時、私は6歳だった。しかし、大人たちが騒いでいたのを何とはなしに覚えている。当時、うちには白黒テレビがあったはずだが、その中継の画面を、なんだかぼんやりと記憶する。大人たちの騒ぎ方から、何かとんでもないことが起こっているということはわかった。
2012-08-26 07:16:53つつ(2)人類で初めて月に降り立ったのは、ニール・アームストロング船長。「これは私にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な躍進だ」という最初の一言が有名になった。そのアームストロング氏が亡くなったというニュースに、時代の流れを感じざるを得ない。
2012-08-26 07:18:27つつ(3)子供心に、人類の月面到達によって、何かとてつもなく素晴らしい新時代が来るような気がした。今すぐにも月面に基地が出来て、宇宙ホテルができて、私たちみんなが宇宙旅行をできるようになるのではないかと妄想した。しかし、もちろん、実際にはそんな時代は来なかった。
2012-08-26 07:19:25つつ(4)幼い私にとっても心が痛かったのは、アポロ11号の熱狂はあっという間に冷め、続いてアポロが月面に到達しても、「またか」という雰囲気が世間を覆っていったこと。新しい機材を使ったりといった工夫をしても、新鮮さは戻って来ない。いつの間にか、月面がくすんだ日常になっていった。
2012-08-26 07:21:08つつ(5)かわって、地上の問題を解決する前に宇宙開発に巨額の費用を投じることに対する批判が増えていった。アポロ計画は17号で終了し、その後人類は月面に戻っていない。時折計画が報じられるものの、それを実現する意志も、熱意も地上の政治にはもはやないようだ。
2012-08-26 07:22:54つつ(6)月面着陸に対する熱狂が冷めたことは、人間の移り気を反映しているようだが、別の見方をすれば私たちの脳の刺激に対する反応特性を示している。「ビール」でも、「キス」でも、「最初」が一番反応が大きい。アームストロング船長は月面に立った「最初の人類」だったからこそ、価値があった。
2012-08-26 07:25:00つつ(7)月面着陸だけではない。例えば、ツイッターなどのソーシャル・メディア。その登場時に、私たちは向こうに無限の輝かしい未来を見てしまう。とんでもないことになるんじゃないか。素晴らしい新世界が来るのではないか。その期待は半ば実現するが、最初の熱狂は決して戻って来ない。
2012-08-26 07:26:09つつ(8)ついこの間のことだから、覚えているだろう。ツイッターの前に、テレビや新聞などの「旧メディア」が価値を失うかのように言われ、ツイッター有名人が輝いていた。熱狂の時期は去り、今ではツイッターも日常のくすんだ道具。旧メデイアはしぶとく、ツイッター有名人の勢いも落ち着いた。
2012-08-26 07:27:52つつ(9)ツイッターも、月への着陸も、それが最初に人類史に登場した時にこそ、輝く。そして、最初が一番難しい。アポロ11号が月面に着陸したときのまばゆく輝かしいクオリアを記憶している人は、アームストロング船長死去のニュースに感慨にふけるだろう。アームストロング氏の偉業は永遠である。
2012-08-26 07:29:30