牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

長年付き合った彼女に振られた真樹。いつも隣にいたはずの君はもういない。同じ毎日をただ繰り返すだけの日々に疲れ、心の穴は埋まることはなかった。そんなある日、通勤バスの中で君に出会った。 この物語は、好きになることを忘れた男が、再び恋をするためにもがき苦しむ恋愛ストーリーである。
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れい @freireirei

いつも通りの朝。いつも通り乗るバス。いつも通り聞く音楽。いつも通り見える風景。いつも通り君が乗ってきた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-28 00:30:17
れい @freireirei

よくバスで見かけるあの子。小柄で可愛らしい顔にポニーテールがよく似合う。不思議と落ち着いた印象も受ける。惹かれている。そう感じていた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-28 00:46:44
れい @freireirei

もう人を好きになることは出来ないと思っていた。もうあんな風に人を愛することは二度と... そんな僕の前に、君が現れたんだ。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-28 00:51:27
れい @freireirei

今日の帰りもあの子と一緒。降りる場所は同じ。神様、僕にいつもよりほんの少しの勇気を... 君より先に降りた僕は、ゆっくりと後ろを振り返る。バスから降りた君と視線が交わり、二人の動きが止まる。バスはゆっくりと動き出していた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-28 00:58:02
れい @freireirei

永遠のような一瞬が過ぎ、僕は君に歩み寄った。君の顔が強ばるのも分からないくらいに頭は真っ白だった。名刺を持つ手が君の方へ延びる。その名刺の隅っこで、震える手で書いたメールアドレスが恥ずかしそうにしていた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-28 23:51:22
れい @freireirei

何を言ったのかは覚えていない。君が名刺を受け取ったのかもわからない。気がつくと僕は君を背に歩いていた。振り返る勇気もなく、戸惑う君の視線に背中を押され、その場から離れた。握り締めた手の中に名刺がないことに安堵した。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-28 23:55:58
れい @freireirei

その日、彼女からメールが来ることはなかった。だけど、不思議と気持ちはすっきりしていた。達成感にも似たこの気持ち。僕の心は、台風が過ぎた後のように晴れ渡っていた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-30 00:23:05
れい @freireirei

翌日、仕事後、携帯を見ると1通のメールが届いていた。「こんばんは。誰だかわかりますか?」はやる気持ちを抑えてメールを打つ僕。メールを打つスピードが焦れったい。「こんばんは。すいません、どなたですか?」やっと打ち終わったメール。確信犯だった。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-30 00:30:54
れい @freireirei

「昨日アドレスもらいました!」予想していた結果に、こんなにもうれしい気持ちになるのは初めてだった。周りも気にせず僕は、バスの中でニヤケていた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-30 23:43:54
れい @freireirei

「失礼しました(>_<)メールありがとうございます!昨日はいきなりすいませんでした。名刺にあるように、牧園っていいます!もし良かったら、これから仲良くしてください!」メールを打ち終え送信した頃、降りる予定のバス停を、バスが出発した所だった。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-08-30 23:48:40
れい @freireirei

その日、もう返信は来なかった。 だけど、彼女がメールをくれたことが嬉しく、僕は心地良く眠りについた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-01 23:10:26
れい @freireirei

次の日、寝坊した僕はいつも乗る停留所の一つ前からバスに乗った。いつも通り一番後ろの席に座る。バスが出発し、しばらく走り、止まる。いつもの停留所から彼女が乗ってきた。僕は、緊張で固まった顔を笑顔でほぐし、「おはよう」と声をかけた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-01 23:16:29
れい @freireirei

彼女も笑顔で「おはよう」と応えてくれた。そして、僕の横に座ってきた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-01 23:18:54
れい @freireirei

不思議と緊張はおさまっていた。「連絡してくれてありがとうございました。」僕の声に、彼女は微笑んだ。僕はさらに話を続ける。「いきなり、声を掛けられて驚きましたよね?しかも、緊張していたから気持ち悪かったかも。」 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-01 23:52:59
れい @freireirei

「そんなことなかったですよ。」と彼女は言った。彼女はまっすぐに目を見て、話をする。それに、顔全体をクシャっとして笑う笑顔が印象的だった。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-01 23:55:46
れい @freireirei

それから僕たちは、バスが着くまでの間、色んな話をした。彼女は言葉数は少ないけど、素っ気ない感じはしなかった。そして彼女の表情は、言葉以上に伝える力があるように感じた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-02 22:39:21
れい @freireirei

名前は結衣っていうこと。僕より年上であること。普段は大学に通っていて、学校の先生を目指していること。土日は横浜の靴屋で働いていること。彼女のことを知っていくのがとても楽しかった。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-02 23:30:49
れい @freireirei

彼女は元々、高級ブランドの販売員をやっていた。しかし、販売員の仕事を長く続けるのは難しいので、将来の事を考え、その仕事を辞めて大学に通い、学校の先生の資格を取ろうと決意したらしい。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-03 22:30:04
れい @freireirei

僕はその話を聞いて、彼女に対して尊敬に近い感情を抱いた。自分も販売員をやっているので、将来が不安になることはある。だから彼女の気持ちが良くわかった。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-03 22:33:37
れい @freireirei

こんな素敵な人に自分は釣り合うのだろうか。彼女にますます惹かれていく一方、どこか遠慮する気持ちも芽生え始めていた。束の間の二人の時間は終わり、バスは横浜駅に到着した。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-03 22:34:48
れい @freireirei

僕はその気持ちを悟られたくなくて、無理に明るい声で「今日は朝からテンション上がる!いつもよりたくさん売れそう!」と言った。「ほんと?良かった。頑張ってね!」と彼女は優しく笑った。その笑顔が少し辛かった。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-03 22:42:28
れい @freireirei

「ばいばい」二人は手を振って別れ、それぞれの仕事に向かった。言葉にならない複雑な気持ちの中、ゆっくりと歩きながら僕は、千尋のことを思い出していた。 #牧園真樹のクリスマスウォーズ2012

2012-09-03 22:47:32