刻乃のゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

「…あら、気が付いた？お目覚めの気分はいかが？」──寝起きの身体に鞭打って起き上がる。「ナノマシンによる体内からの分解、浄化、修復は成功のようね…よくもまぁ、こんなモノを人体内部に詰め込んだものだわ、それも一晩で」どうやら実験は成功のようだ。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

地獄から逃げ延び、その後悔と身体の秘密を抱えて、人目を避けて暮らしていたある日、どこから嗅ぎつけたのか、奇妙な女博士がコンタクトを取ってきた。『その身体、元に戻す気は無い？』胡散臭い話だったが、即座に飛び付いた。それほど追い詰められていたのだ。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

「これだけのオーパーツ並みの部品があれば、どんな発明品が──」興奮しているのか、誰にともなく始まった説明を無視して、ベッドの傍らに置いてあった仮面を手に取り、覚束ない足取りでその場を後にした。「あ、ちょっと、あなたそんな身体でどこに──」後半は聞き取れなかった　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

数日後、どこをどう彷徨ったのかはよく覚えていない。それは脱出ルートを確保しなかったという愚行でもあるのだが、ナノマシンの副作用なのか、どうやら街に関して、ある程度の記憶の欠落があるようだ。ともあれ、彼はおもむろに仮面を着け、──再び、その地獄に降り立った。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

再開二日目。病院警護を次の担当に引き継いだ後、街の探索をする。民家には既に事切れた住民がいたが、地下室で食料と包帯を発見。避難が間に合わなかったのか…。代わりにそれらを頂戴して、更に探索を続けていると、見知った顔の男とジャーナリストと思しき女性がいた。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

彼女はこの街の惨状を伝えるために、こうして密着取材をしているらしい。全く、わざわざ死地に飛び込もうとは、変わった人だ。「あら、脱出できたのにわざわざ帰ってきた貴方の方が、よっぽど変人じゃなくて？」違いない。でもそうしなければ、きっと後悔して死んでいただろう。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

「…そうね、今度は貴方を取材させてちょうだい？『地獄に舞い戻った仮面のヒーロー』…ちょっと陳腐だけど、このぐらい非現実的なネタの方が受けがいいわ。…えぇ、『受け』がいいわ」…好きにしてくれ。俺は人助けがしたくて帰ってきたんだ。でも何か寒気がしたのは何故だろう。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

再開三日目。「…凄いわね。ビルの屋上伝いにゾンビから逃げてて、後方確認の為に後ろ向きながら走ってそのまま空中に飛び出して、気付かずに５ｍは空中ダッシュしてたわよ？つられたゾンビたちもそのままダイブして一網打尽とは、まるで『ハーメルンの笛吹き』ね」　＃ゾンビサバイバル

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「おまけに落下跡地に人型の穴開けるだなんて、コミックやカートゥーン以外でお目にかかれるとは思ってもみなかったわ。惜しむらくは、空中ダッシュを録画し損ねた事ね…ねぇヒーロー、もう一回やってみて下さらない？」…それが重傷を負った人間に対する言葉かこの女狐め…。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

えぇと、君は俺を取材してるんだよね？「えぇ、活躍を記事に残すつもりよ」ならいつも俺の近くにいるわけだ。「そりゃ密着取材ですもの。でもプライベートはちゃんと考慮するわよ」なら普段は危険を知らせてくれてもいいんじゃね？「声出したら見つかるじゃない」この女狐ェ…。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

再開四日目。…流石にこの量のゾンビ相手は厳しいな…。「うええええごめんなざいいい～」諦めが早いな、いつもの減らず口はどうした？「最後だから言うけど、私、貴方の…」お、おい？「他の人と貴方でホモネタ書いてましたぁー！」そんなカミングアウトはいらんわぁー！！　＃ゾンビサバイバル

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『おい、こっちだ！』声の方角を見れば、勢いよく転がってきたドラム缶が、ゾンビの群れの一角を崩した！今だ！女狐を抱えて強行突破する！何度か引っ掻かれるが…抜けた！軍人らしき男が、ドラム缶に向けて発砲する。急いで女狐をかばって、地に伏せる。そして──引火、爆音。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

…ふぅ、助かった。俺達を救ってくれたのは、顔見知りの軍人と同じ軍隊の空挺師団員と、虎のマスクを被った男だった。残ったゾンビに、クナイを投げてトドメを刺していた。お礼と情報交換をして別れ、ひとまず安全な所まで移動する。流石に今回の負傷は堪えた…。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

奇跡的に汚染されていない川では、かに玉の炊き出しをしていた。有難い。だが先に治療をしなくては…。女狐に救急箱を渡して、ここ数日の傷を手当てしてもらう。「…えと、その…あ、ありが、とう…」命の危険に瀕したからか、彼女はいつになく素直だった。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

吊り橋効果なのか、随分としおらしくなったものだ。だが俺は見逃さなかった。女狐が軍人と虎男のスケッチとなんらかのメモを認め、嫌な笑みを浮かべたその瞬間を。覚えてろ。それはそうと、川には何故かアルパカがいた。モフったら荒んだ心が和んだ。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

「そこの兄ちゃん、ちょいと聞きたいんやけど」あぁもう、今日は千客万来だな。「この近くに病院があるらしいんや。慰問に行きたいんやけど、場所知らんか？」関西弁に金色の派手な着物姿の、熊のように恰幅のいい、やけにいい声の男だ。慰問、ということは、演歌歌手か？　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

場所なら知ってるが、一人ではキツイだろう。よければ送っていこう。「ホンマか！？いや、どこもかしこもゾンビだらけやし、アルパカに聞いても分かれへんし、助かったわ！泣けるで！」なんかこの人俺より強そうな気がする。…おい女狐、今何をメモった。おい。おい！　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

再開六日目。「フゥーッハハハハハ！！この悪のマァッドサイエンティストの俺が、貴様らの武器の隠された封印を解き、真の力を解放してやろう！！」イラッときたので、最大の武器であるウォーカーキックをブチ込んで、近くにいた女狐の元同行者に押し付けた。さぁ、病院へ急ごう。　＃ゾンビサバイバル

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再開七日目。さて、ここが病院だ。今妙な集団に散発的に襲撃を受けてる。とはいえ、それ以上の数の有志が警護してるから、当面は安泰だろう。「おぉ！兄ちゃんおおきに！ほな早速行ってくるわ！」元演歌歌手は、意気揚々と病院内に駆け込んでいった。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

ついでに警護もしていこう。襲撃組を追い払ったところで、（ＨＰ92→89）演歌歌手のおっさんが戻ってきた。あぁ、お疲れ様。「おぅ、俺の歌を聴けば、寝た子も起きるし元気も出るで！」いや起こすなよ。「せやけど、ここは俺がおらんでも大丈夫そうや」　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

「今度は、兄ちゃんらみたいに、誰かの為に身体張って戦っとる連中の助太刀行脚しよかと思てな、体力が六割切っとる連中には、俺の歌がよう効くで！」なんだその具体的な数字は。「兄ちゃんはまだまだ元気そうやし、今度はあっちのお嬢と同行するつもりや」　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

そこにはやや負傷が目立つ女性がいた。…あの感じ、『館』に挑んだみたいだな…。その女性は、せっかくだから、と、治療薬を譲ってくれた。治療薬では体力は回復できないからな。宝の持ち腐れよりは遥かにマシだ。「ほな、世話になったな、おおきに！」二人は去っていった。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

「『…ヒーローの篤い情けに、ホンマに泣けた。浪花節は地獄でも死なず』…ってところかしらね」あ、仕事する気あったのか。「今まではゾンビに襲われてばっかりで、取材どころじゃなかったでしょうが」違いない。さて、探索に戻ろう。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

安全靴か…これって実際には脚に結構負担がかかるからなぁ。治療薬は必要だし、…えぇと。「どうかした？」いいや、なんでもない。正直、何を考えてるのか理解できない部分はあるが、彼女がいれば、誰かを助けられたという証が残せる。思った以上に、彼女は必要な存在だ。　＃ゾンビサバイバル

刻乃・響 @tokinokyo

再開八日目。なんというか、こちらに戻ってきてから、ゾンビの大群に追い回されてばっかな気がする。君、よもやゾンビをネタに何か書いてないだろうな？「そんなネタ誰得だってのよ！そんな事…（パラパラ）してないわよ」自分で自分を疑わなきゃならんのか。　＃ゾンビサバイバル