公のやるべき仕事とは

DrlitK @DrlitK

1公がやるべき仕事とはなにか。2009年、小泉政権は「民間にできることは民間に」「地方ができることは地方に」と所信を表明した。これには違和感を覚えた。民間はお金と目標さえ与えられれば何でもできる。必ずしも民間のやり方が効率的なわけではない。公の存在意義は何なのか。

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2公が金を出すならば、実施主体が民間であってもそれは公の仕事に他ならない。今は公共サービスの民営化について議論が盛んに交わされている。しかし、公がやるべき仕事の定義が不十分であり議論が混乱している。社会保障と公共投資―まずそこから整理する必要があるのではないか。

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3社会保障は資本主義とともに成長した概念で、競争の結果生まれる貧困層にも等しく社会サービスを提供することを目的としている。国民はその所得にかかわらず、適度な教育・医療を受け、一定の生活水準を保証されることが、国民の幸福度と国力を高めることにつながる。

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4これには公衆衛生や治安、基礎研究も含まれる。全ての国民はその所得にかかわらず、良好な環境や基礎研究の成果も享受すべきだろう。もし、一定の水準を超えるサービス（塾や高度医療、末梢研究の成果など）を得ようとするならば、それは自らの所得によって、民間から受けるべきだろう。

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5公共投資は市場経済の活性化のために行われるものであるから、経済波及効果によってのみ選択されるべきだろう。近年は失業対策などの目的が語られることが多いが、それは社会保障の観点で解決すべき課題であり、公平性の観点から混同してはならない。

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6公共投資の対象は何か。非競合性と非排除性のいずれかの性質を持つ、あるいはそうした方式が効果的な利用を促す「公共財」を対象にすべきだ。非競合性とは多数が殺到しても追加費用が発生しない性質で、非排除性とは対価を支払わない者を消費から排除できない性質のことだ。

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7公共投資で有効なのは、モノと情報の流通インフラ投資だ。流通インフラは流れを良くすることにより経済を活性化させることが目的であるから、本来、誰でも自由に無料で利用可能にすべきものだ。流通インフラ投資を民間が行うと市場独占が起き、競合性が経済の活性化を阻害する。

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8国土環境整備もその非排除性から公の仕事としなければならない。排除性を持たせれば人やモノの流動性を阻害して経済の活性化を阻害する。公共投資は流通インフラと国土環境だけを対象にして経済波及効果のみによって評価すべきで、それ以外は市場メカニズムが働く民間がやるべき仕事だろう。

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9ここで、具体例を挙げて公がやるべき公共投資を明確化したい。最低限の社会サービス：教育・医療・公衆衛生・治安・基礎研究、流通インフラ：道路・鉄道・港湾・送電・水道・郵便・電話・通信、国土環境：土地改良・堤防

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10公が担うべき仕事について、生活水準を公平に向上させるための社会保障と、経済活性化のための公共投資とに分類し、公共投資の対象を非競合性と非排除性の観点から、流通インフラと国土環境とした。

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11その観点で考えると、なぜ水準以上の社会サービスを公が担っているのか、なぜ無線基地局や送電線を民間が作っているのか、なぜ不動産投資を公が担っているのかなど疑問に思えてくる。独立行政法人や補助金行政についても、行政の歪みだと言える。

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12アマルティア・センは、環境破壊や公害、品質の低下など民間の市場メカニズムが機能しない点を指摘しており、公の仕事の定義は難しい。しかし、市場メカニズムが機能しない多くの点は法規制によって解決できる上、社会保障の観点で論じられるべきものが多い。

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13社会保障は公平性の観点が重要であり、経済力に応じて公が担うべき水準を上げていくことが大切である。その水準を現在どこに置くべきかについて、政治はよく議論しなければならない。公共投資はその波及効果が投資に見合うかどうか、政治はよく監視しなければならない。

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14しかしながら現代の政治を鑑みるに、とてもその議論・監視が適切に行われているとは思えない。この状態を放置して、民営化や地方分権を進めることでさらに問題を複雑化して分散・拡散することが、本当に正しいことなのかよく考えてほしいところだ。