「残念ながら不採用です」

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@annamoiras

「残念ながら不採用です」きつい香水を漂わせた中年女性の面接官は私に向かって微笑んだ。「え、だって誰でも出来る簡単な仕事だって…」私は納得がいかず、向かい合って座る面接官に詰め寄る。

2010-07-08 13:36:29
@annamoiras

面接官は笑顔で告げた。「私より若い人は嫌い」「は、」「それに私より仕事が出来そうだから嫌い」「はぁ…?」無言の室内に香水の臭いが充満している。はっきり言って不快だ。「あの、御社の選考基準は、そんな…そんなくだんない意見が通るのかい」

2010-07-08 13:36:50
@annamoiras

なにもかも不快だ。私はパイプ椅子の背もたれを掴み立ち上がると同時に振り上げたそれを女性の頭上に振り下ろした。呻き声をあげて前のめりに崩れる女性。声が不快だ。もう一撃。香水が不快だ。さらに一撃。

2010-07-08 13:39:18
@annamoiras

灰色のスーツに血が飛んだのを気にして手を止めると、部屋は血と汗のむせるような臭いで充満していた。これまた不快だ。騒ぎを聞きつけ様子を見に来た総務の男性が呻き声を洩らす。

2010-07-08 13:44:13
@annamoiras

「…採用です」呻き声をあげた男性は口元を押さえたままそう呟いた。

2010-07-08 13:46:53
@annamoiras

「実はお局様にはみんな困らされていまして。彼女に抵抗できる人を探していたのです。これで会社も正常になる、つまり貴女はゲボアッ」渾身の力を込めて振り回したパイプ椅子が男性の脇腹にクリーンヒットした。男性も椅子もくの字にひしゃげる。

2010-07-08 13:52:56
@annamoiras

パイプ椅子の残骸を放り投げて扉へ向かう。そうそう、扉の前で向き直り、香水を漂わせて冷笑する女性面接官に一礼する。「ありがとうございました、よろしくお願いします。では失礼いたします。」パタン。

2010-07-08 14:00:12
@annamoiras

扉を閉めて、受付で総務の男性に挨拶。会社を背にとぼとぼ歩きながら私は嘆息した。ああ、現実ってのはなかなか思い通りには行かないもんだなあ…。

2010-07-08 14:00:24