1、動機の錯誤の可否及び認めた場合の二重効について具体例をあげて検討 2、本人と無権代理人との相続について類型化し追認拒否権をそれぞれ行使できるかについて検討(続く)
2010-07-22 14:18:393、不動産の登記と取得時効うんたらかんたらについて時効完成前後での原所有者及び承継人と時効取得者の優先関係について検討 4、債権消滅時効完成後の債務承認について検討
2010-07-22 14:18:531(1)動機に錯誤があった場合に95条の錯誤が成立するか。 この点、そもそも錯誤の効果について、意思表示は効果意思、表示意思、表示行為の3つの構成要素に分析できるが、錯誤においてはその表示行為に対応する効果意思が不存在なのであり、それ故にその効果は取消ではなく無効なのである。
2010-07-22 19:36:48よって、錯誤とは表示に対応する意思の不存在と捉えるため、原則として効果意思を発生させる過程に瑕疵があるにすぎない動機の錯誤は錯誤に当たらない。 しかし、現実として訴訟で問題となるのはほとんど動機の錯誤であり、これを95条の範囲外としては表意者保護に欠ける。
2010-07-22 19:37:12(2)動機の錯誤と詐欺による意思表示(96条)の二重効をいかに解するか。 詐欺による意思表示は効果意思の形成過程に瑕疵があるにすぎず、故にその効果は取消にとどまっている。しかし、詐欺による意思表示は一方で表意者に動機の錯誤の場合といえる。そこで表意者は詐欺取消を主張しうるか。
2010-07-22 19:38:48この点、動機の錯誤が成立していればその効果は無効であり、無効である以上取消は問題とならないようにも思える。 しかし、無効も取消も表意者保護のために法律行為の効果を否認する手段である点は変わらず、無効というのも単なる規範的評価の問題に過ぎないといえる。
2010-07-22 19:39:00具体的には、偽ブランドのバッグをシャネルのバッグだと騙された故に、そのバッグを購入してしまった場合、動機が意思表示の内容として表示されていれば動機の錯誤と詐欺の二重効が認められる。
2010-07-22 19:39:192(1)無権代理人が本人を相続した場合について (ア)無権代理行為の瑕疵は相続によって治癒され、無権代理行為は当然に有効となるのか。相続によって無権代理人と本人の地位が融合するのかが問題となる。
2010-07-22 19:39:30この点、相続という偶然の事情によって相手方の取消権を奪うべきではない。 また、共同相続の場合、共同相続人の追認拒絶権を認めるためにも、相続によって地位が融合し、無権代理行為が追完されると解すべきでない。
2010-07-22 19:39:43よって、無権代理人と本人の地位は併存し、すなわち、相続によって無権代理行為が当然に有効となるわけではないと解する。 (イ)では、両者の地位が併存するとして、無権代理人は本人の地位に基づいて追認を拒絶できるか。
2010-07-22 19:39:51この点、無権代理行為を行った者自身が追認を拒絶することは信義則(1条2項)に反し許されないと解する。 ただし、本人が追認を拒絶してから死亡した場合は、本人による追認拒絶の時点で効果不帰属が確定しているため、相続人は追認拒絶しうる。
2010-07-22 19:39:59(ウ)では、本人の地位を相続した無権代理人は追認拒絶できないとしても、それが共同相続であった場合に他の共同相続人が追認拒絶をした時の無権代理行為の効力をいかに解するか。 この点、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するものだと解する。
2010-07-22 19:40:08よって、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然有効となるものではない。 (2)本人が無権代理人を相続した場合について (ア)本人が無権代理人を相続した場合にも地位併存を前提に、本人は追認拒絶できるか。
2010-07-22 19:40:25この点、本人が無権代理人の地位を相続した場合は、無権代理行為を自ら行ったわけではないので、その追認拒絶についてなんら信義に反することはない。 よって、無権代理人を相続した本人は追認拒絶できる。
2010-07-22 19:40:34(イ)追認拒絶できるとして、相手方は相続人である本人に対して無権代理人の責任の承継を主張できるか。 この点、相続は包括承継である以上(896条)、本人は無権代理人の責任を拒絶することはできない。
2010-07-22 19:40:43(3)第三者が本人と無権代理人の双方を相続した場合について この場合においても地位併存を前提に相続人は追認拒絶できるか。 この点、相続の順序に従い、上記(1)無権代理人が本人を相続した場合、(2)本人が無権代理人を相続した場合に分類し、それに応じて処理をするという説がある。
2010-07-22 19:41:19そこで、そこで相続人は本人の地位に基づいて追認を拒絶できると解すべきである。 何故なら、相続人は自ら無権代理行為を行ったわけではないので、それを追認拒絶したところで何ら信義に反することはないからである。
2010-07-22 19:41:383 時効による所有権の取得を第三者に対抗するのに登記が必要か。 (1)この点、時効完成前には、時効取得者は所有権の取得を登記しようにもできないのに対し、時効完成後は登記をすることができる。とすれば、権利の上に眠る者を保護しない
2010-07-22 19:42:03という時効制度の趣旨から、時効完成後の第三者に対する関係では登記を要するとすべきであり、時効完成前の登記名義人に対しては登記を要しないと解すべきである。具体的には以下検討する。
2010-07-22 19:42:09(2) 時効による所有権の取得を時効完成前の原所有者または承継人に対抗するのに登記が必要か。 この点、時効取得は原始取得ではあるが、時効取得者とそれによって権利を失う者との関係は承継取得の当事者類似の関係である。
2010-07-22 19:42:19よって、原所有者でも承継人でも、時効完成時の登記名義人に対しては登記なくして時効による所有権の取得を対抗できる。 (3) 時効による所有権の取得を時効完成後の承継人に対抗するのに登記が必要か。
2010-07-22 19:42:32(2)に対して、時効完成後の第三者との関係では、時効の遡及効を一種の法的擬制であると考え、登記名義人から時効取得者及び第三者への二重譲渡類似の関係と見ることができる。 よって、時効完成後の譲受人に対しては登記がなくして時効による所有権の取得を対抗できないと解する(177条)。
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