東京国際ブックフェアでの講演における、ファウスト編集長太田克史さんの発言

ファウスト編集長・太田克史さんが備忘録として、東京国際ブックフェアでの歴史学者・樺山紘一さん、丸善お茶の水店店長・草彅主税さんとの講演におけるご自身の発言をツイートされたのでまとめてみました。
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太田克史 @FAUST_editor_J

今週、星海社がその設立以来「初」となる記念すべき入金がありました。先日の東京国際ブックフェアでの歴史学者・樺山紘一さん、丸善お茶の水店店長・草彅主税さんご一緒した講演のギャランティーです。備忘録として、僕の講演での発言をTwitterでまとめてみます。

2010-07-24 02:46:43
太田克史 @FAUST_editor_J

「本は魂の食い物」という熱い言葉を『モーニング』初代編集長の栗原良幸さんから以前に伺ったことがあり深い感銘を受け続けているが、今という時代は自分が「何を食べたいのか?」を自分で決められない読者が増えてきたように感じている。

2010-07-24 02:50:40
太田克史 @FAUST_editor_J

一編集者として、読者の「人生のカーブを切らせる」に足る「魂の食い物」を世に送り出していきたい。星海社もそういった会社にしていきたい。

2010-07-24 02:54:22
太田克史 @FAUST_editor_J

(草彅さんの「丸善お茶の水店にいらっしゃる30代男性のお客様の購書率は13%」という興味深いお話を受けて)「僕はその、丸善さんまで出かけたのにも関わらず本を買わなかった残りの87%の人にぜひじっくり話をうかがってみたい。そこに大きなチャンスがある気がする!」

2010-07-24 02:58:38
太田克史 @FAUST_editor_J

ソフトとハードの変化においては常にハードの変化が先行する。「石版」や「粘土板」が発明されて「長編叙事詩」や「物語」が生まれ、「ブック」が発明されて「小説」が花開いたように、「電子媒体」というハードから、ネクストノベルとも言うべき新しい文芸のソフトが必ず生まれてくるはず。

2010-07-24 03:02:48
太田克史 @FAUST_editor_J

デジタル技術による文芸の革新は、今この講演にやってきているほとんどの人が生きているうちに必ず起こる。僕、そして星海社という会社はその来るべき文芸の革新を強力に後押しする側に立ち続けたい。

2010-07-24 03:04:44
太田克史 @FAUST_editor_J

歴史上、大きな変革が行われる過渡期の時代は誰もが歴史に名を残すチャンスのある時代。あの坂本龍馬も幕末という時代に生まれなければ、そして日本に黒船がやってこなければ、土佐の剣術道場の良き師範、で人生が終わっていた可能性が大いにある。

2010-07-24 03:08:11
太田克史 @FAUST_editor_J

かつて「小説」が「物語」「長編叙事詩」といったフォーマットを更新したように、来るべき文芸の革新において「小説」というフォーマットを更新する「ネクストノベル」の概念を発明し、実践できた人物は歴史に名前が確実に残る。そこを狙っていきたい。

2010-07-24 03:10:16
太田克史 @FAUST_editor_J

現状の「電子書籍」なるもののコンセプトの多くは、「紙」で「石版」の読み味を再現してみよう、的なものに止まっている。それでは文芸の革新は起こりえない。発想の飛躍が必要。

2010-07-24 03:13:04
太田克史 @FAUST_editor_J

たとえばあのモスバーガーだって、ハンバーガーに使っている野菜の産地のみならず「誰がつくったか?」を紹介している。その伝で言えば、「魂の食い物」である本の送り手である編集者の名前が読者から黒子であり続けていることに対しては疑問がある。

2010-07-24 03:18:02
太田克史 @FAUST_editor_J

太田は個人的には編集者の黒子の美学(ここ、本当は黒衣としたいw)を信じているし実践したいと思っているが、そういった思いは今という時代の流れからは逆行しているのではないだろうか。読者はいったい誰がつくったのかわからない「魂の食い物」を食べさせられている。

2010-07-24 03:20:50
太田克史 @FAUST_editor_J

今、プルタークの『英雄伝』を読んでいるが、2000年近く以前に書かれた本にも関わらず最高に面白い。評価の定まったあらゆる古典は確実に面白いんです。多くの読者にとっては、その人のアンテナに引っかかってくる古典だけを読んでいれば「一生」外れのない読書ができるはず。

2010-07-24 03:25:51
太田克史 @FAUST_editor_J

古典は確実に面白い。しかし書店に足を運ぶ読者の100%は「古典」コーナーではなく、まず最初に「今月の新刊」コーナーに最初に足を運ぶ。もちろん僕も運ぶ。効率という尺度で測れば、それはそれはどう考えても非効率な読書なのに。

2010-07-24 03:29:58
太田克史 @FAUST_editor_J

なぜ人は「新刊」を求めるのか。そしてなぜ我々出版社は「新刊」を世に問うのか。それは、「新刊」の一ページは、未来を切り開く、未来の一ページだからだ。たった今書かれた未来の一ページには圧倒的な魔力がある。

2010-07-24 03:32:56
太田克史 @FAUST_editor_J

たった今書かれた未来の一ページには圧倒的な魔力がある。その意味では、古典は、古典と言うだけで価値はない。古典と比べてたとえどんなに内容が劣っていても、新刊には未来を切り開いているという価値がある。

2010-07-24 03:34:53
太田克史 @FAUST_editor_J

読者は未来の一ページを読みたがっている。未来の魔法を「たった今」かけられたがっている。

2010-07-24 03:35:40
太田克史 @FAUST_editor_J

書店の「今月の新刊」コーナーに足を運んで、「期待の新人のデビュー作!」などという、リスク100%でしかない惹句に惹かれて新刊本をつい買ってしまうのは、そこに「未来の一ページ」という魔法がかかっているからだと思う。

2010-07-24 03:37:47
太田克史 @FAUST_editor_J

新大陸と旧大陸と称されるデジタルの世界とアナログの世界はお互いを認め合って、お互いに船を出し合って積極的に交易していくべき。そこに出版の革新のチャンスがある。

2010-07-24 03:40:57
太田克史 @FAUST_editor_J

「黒船」がやってきたからこそ、幕末に生きた若い日本人は胸を躍らせて人生を過ごすことができた。今の出版界もまさにそうではないか。太田も、今という時代を生きる一編集者として胸を躍らせている。

2010-07-24 03:43:15
太田克史 @FAUST_editor_J

明日は今ある今日の延長、という人生には僕は耐えられない。だから、まだ誰も見たことのないものを次々に見ることのできる・・・、そんな明日を迎え続けたい。編集者はそれが出来る仕事なんです。

2010-07-24 03:46:14