しえのべノート

子影 @Shewi_4A

あーそうだ。私ゃかなり汚い＆どうしようもない物書きですが、そんな私でも文章にしてみてほしいって奇特な方がおりましたら名乗りを上げてもらってかまいませんです。本音を言えば二次創作の練習を兼ねますが。

子影 @Shewi_4A

「はい、いらっしゃい」店主はそう言って、手元の本から視線を上げた、と思う。店主は可愛らしいウサギの仮面を被り、楽しげに頭をゆらゆらと振っている。「お客さん、いい目をしているね。この福耳古物商、こと動物に関してはよい品揃えを自負しているんだよ」楽しそうに、彼は言う。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

仮面に手をかけ、ゆるりと外す。糸のような目と柔らかな笑みを浮かべた唇が福々しい。が、特に目を惹かれるのはその立派な「福耳」だ。揺れる頭に合わせて緩やかに踊るその耳たぶは、恐らく大黒様にも匹敵するほどだろう。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

「さて、何をお探しで…いえ失礼しました。こちらをお探しで」彼は言って、傍らの箱を開く。そこには美しくなめされた狐の毛皮。「古いものではありますが、これは歴史のある物でして。大丈夫、福耳古物商の名にかけて、悪いものではないと保障いたしましょう」 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

その毛皮は美しかった。妻へのプレゼントを確かに探していて、マフラーなど良いだろうかと思っていた事を透かされたその瞬間は気味が悪かったが、その感情を飲み込むほどに。艶やかで不思議と生気に溢れるその毛皮は、聞くと三万程度だという。これは躊躇する理由もない。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

「はい、毎度」彼はそう言って、またウサギの面を被る。その面は大きな体に似合わないと思ったのだが、今見ると妙にしっくりとはまっている。「奥さんに喜んでもらえると良いですね」背を向けた私に、彼の声が優しく響いた。 \e #しえのべ

子影 @Shewi_4A

くすくす、くすくす。笑い声が聞こえる。僕はその声の主を探す。闇の中、浮かんできたのは白いゴシックのお洋服。ちりちりと音を立てて、鍋を暖める柔らかな火が、彼女の整った顔を照らし出す。その顔はどことなく楽しそうで、それでいて何も浮かんでいないような、そんな笑い顔。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

体を少し動かす。緩く足を縛られているようで、体勢を整える事は簡単だった。その音に彼女はこちらを向いて、大人しくしててと言う。僕をどうするのかと聞いても、くすくすと笑うだけで返事はない。その手は腰にある。なのに鍋に刺さっている棒はひとりでにぐるぐると回っている。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

僕は魔女に捕まったんだな。そう理解して、彼女に好きなようにして、と伝えた。彼女はもちろんそのつもりと答えると、また鍋に向かって、今度は何かを入れ始める。ああ、僕はどうなるのだろうか。そう考えた僕の鼻に、甘い香りが届き始めた。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

そして、僕はまた魔女の家の前にいる。あの日、彼女は僕に魔法をかけてしまった。それはとてつもなく強く、僕の心を掴んで離さない。今日、僕は彼女に弟子入りをお願いしてみるつもりだ。彼女の甘い魔法は、これからの僕の人生を狂わせて、そのまま引きずり込んでしまったのだから。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

「ぱぱー。あのどーぶつ、なにー」可愛い娘が聞いてくる。「あれはね、カビパラというネズミだよ」「えー、ねずみにみえなーい」そんな話をしている間も、カビパラはもさもさと鈍重に草を食んでいる。「でもかわいいねー」「何でしたら、触れ合ってみますか」囲いの中から、飼育員の声。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

飼育員に薦められるまま、私と娘は囲いの中へ。数匹が娘と私の近くに寄ってくる。「この子達は人懐こいんです。草をあげてみて下さい」言われるままに娘が草を食べさせると、もさもさと手を優しく尼噛みしながら草を食べていく。「くすぐったいー」娘も喜んでいるようだ。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

「いや、ありがとうございました。えーと…」「あ、私はバビガロといいます」「不思議な名前ですね」そんな話をしつつ、囲いを出る。娘はカビパラの一匹に情が移ったようで、小さな手を振ってお別れの挨拶をしている。「またねー」「また来てくださいね」 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

「ところで、お嬢さん」バビガロと名乗った飼育員が聞く。「何であの子が気に入ったんですか？」娘は口を開く。「あのね、背中の模様がミッ」私は慌てて口をふさいだ。 \e #しえのべ

子影 @Shewi_4A

子猫を拾ってきた。会社からの帰宅途中、何故か私に付いてきた子だ。全身が白く、足の先だけちょっとソックスを履いたように黒い。足元でにーにーと泣くので、温めたミルクを差し出すと凄い勢いで舐め始める。余程お腹が空いていたのだろうか。時々顔にミルクが跳ねる様は可愛らしい。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

ついでに煮干もやってみたが、齧るには齧るのだがどうやら硬いようだ。子猫の間はミルクと何を食べさせよう。そんな事を考えていると、子猫はおもむろに煮干にパンチをし始めた。てしてしと煮干を叩き、その反動で跳ねる煮干を追いかけてまたてしてし。手間がかからなくて結構。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

煮干遊びにも飽きたのだろう、私の足によじ登る子猫。足に傷をつけられてはかなわないので、抱っこして膝に乗せてやる。膝に乗った子猫は、私の手に興味を示してまたてしてしと叩き始めた。肉球の感触が心地よい。てしてし、ふにふに。まるでマッサージされているかのようだ。 #しえのべ

子影 @Shewi_4A

手を揉まれるかのような感触に、いつしか眠りを誘われていたようだ。ふと目を覚ませば、膝の上に丸まって眠る子猫。時折にーと寝言を言うのは、何の夢を見ての声だろうか。今日はこのまま寝てしまおう。ミルクの香りの子猫と一緒に。 \e #しえのべ