Twitter小説「息苦しいハシビロコウ」

漫才師・蓮華による、コンビ間交換小説。 「息苦しいハシビロコウ」まとめです。 100話完結予定。 (山)→山下隆章著 (ち)→ちゃんだい著 続きを読む
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蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第23話(ち)】 「今よ!」 広がる暗闇に響く女の声。 女は僕の手を引いて、裏手にある扉へ向かう。 「くそっ!逃げる気か!?」 松山大老人は蛍光灯の破片に塗れ、狼狽を隠せない。 僕は女の勢いに身を預け、裏手へ向かう。 このまま本当に逃げられるのだろうか。

2012-08-08 04:56:57
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第24話(山)】 ドラマでは裏口を開けた瞬間に松山大老人の仲間がいて捕まるんだろが僕達は拍子抜けする程簡単に動物園から逃げれた。 「今日は帰りましょ。また連絡するわ。これ」 そう言って女は紙切れに連絡先と名前を書いた。 松山咲という名前が書いてある。

2012-08-09 23:57:30
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第25話(ち)】 呆然とする僕を尻目に松山咲は姿を消した。 事の大きさと過ぎ去った時間のアンバランスさに、僕の頭の中は混乱していた。 松山咲と名乗る女、いったいあの女は何なのか。 松山大老人が言っていたあの鳥の秘密とは何なのか。 分からない事だらけだ。

2012-08-11 00:03:09
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【息苦しいハシビロコウ 第26話(山)】 部屋でそんな事を色々考えながらいつのまにか寝てしまった。 夢を見た。 ハシビロコウが僕に話しかけてくる夢。 「僕は檻から出る事が怖いんだ。でも出ないといけないって事も知ってるんだ。月明かりが綺麗だという事を僕は知らないといけないんだ」

2012-08-13 23:37:23
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【息苦しいハシビロコウ 第27話(ち)】 ハシビロコウは続ける。 「この世に生ける全ての物を僕は見たい。誰が否定しようとも僕にはその権利がある。君なら分かってくれるはず。君なら。」 ハシビロコウの顔は見えない。 ただ声だけが脳内に響いてくる。 僕はただ狼狽するしかなかった。

2012-08-15 01:59:59
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【息苦しいハシビロコウ 第28話(山)】 「そんなに心配しなくても大丈夫さ。だって君は……………なんだろ」 よく聞こえない。何て言ったのだろう。 「今何て言ったの?」 「君は……………だから大丈夫って言ったんだよ。じゃあもう行くね。またね」 そこで目が覚めた。

2012-08-16 00:22:51
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息苦しいハシビロコウ 第29話(ち) 目が覚めた僕は、何とも言えない陰鬱な気持ちになっていた。 しかし意識ははっきりしている。 とにかくまた動物園に行かなければ。 日課であった動物園通いだが、今回は妙な使命感に駆られている。 あの鳥をもう一度見るのだ。 いや、会いに行くのだ。

2012-08-18 01:08:00
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【息苦しいハシビロコウ 第30話(山)】 しかし普通に考えてあんな事があった次の日にあの動物園には行けるはずもなく、仕事が終わった後に行きつけのバーでお酒を飲むことにした。 全く酔えないが兄について思いをはせてみる。 顔もぼんやりとしか思い出せない。 なぜいなくなったのだろうか

2012-08-18 23:21:09
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【息苦しいハシビロコウ 第31話(ち)】 兄とは幼い頃から仲が良かった気がする。 特段、目立った喧嘩もした覚えはない。 頭の中をうっすらと、ぼんやりと幼少の頃の思い出がよぎる。 それはとてもおぼろげで薄黄色の思い出。 2人の少年が道を走る。 不思議な事に主観ではなく客観なのだ。

2012-08-20 23:08:50
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【息苦しいハシビロコウ 第32話(山)】 確かに経験しているのに客観的に感じる。 妙な気分だが酒が入ってるせいもあるのだろう。 やはり家族がいないというのは何ともいえない居心地の悪さがある。 本当に会う事が出来るのか? 僕は松山咲からもらったメモを見ながらそんな事を考えた。

2012-08-22 23:32:43
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【息苦しいハシビロコウ 第33話(ち)】 どちらにしろ兄に会うにはこの女を頼るしかないのだ。 散々迷った選択が必ずしも正しいとは限らないが、ここは連絡するしかないだろう。 正直気は進まない。 しかしそんなことは言ってられないのだ。 僕は携帯電話を取り出した。

2012-08-27 18:24:08
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【息苦しいハシビロコウ 第34話(山)】 メモに書かれた電話番号を踏みしめるように押した。電話は2コール目で繋がる。 「もしもし。松山ですけど」 「あのー昨日お世話になった者ですが」 「あっ!君ね!今から会わない?」 こちらが返事する前に場所を指定され一方的に電話を切られた

2012-09-04 23:18:31
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【息苦しいハシビロコウ 第35話(ち)】 指定された場所はよりによって動物園の近くにある古びた喫茶店だった。 少し急いで来たせいか、店内には客が一人もおらず、やる気のなさそうなマスターが煙草を吸いながら僕を一瞥した。 気まずい空気の中窓際のテーブルに座る。 松山咲を待つしかない。

2012-09-07 03:44:20
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第36話(山)】 待ちながらいろいろ思索をしてみる。正直めんどくさい事になったとも思うが今までの人生でこんな刺激的な事に巻き込まれたのも初めてだ。 普通に暮らし、普通の考え方で普通の行動をしてきた人生。 そんな思いを巡らしていると突然電話が鳴った。

2012-09-11 22:18:12
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【息苦しいハシビロコウ 第37話(ち)】 「もう着いてる?」 松山咲だ。 既に到着していて、窓際の席に着いている事を告げると、松山咲はわずかではあるが声を弾ませた。 「その席を選ぶとは流石ね。動物園がよく見えるでしょう?今から行くわ」 確かによく見える。しかし心は穏やかではない。

2012-09-18 02:10:10
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第38話(山)】 「なんて顔してるのよ。また行くけど今日は流石に行かないわ。今日は少し話をしましょ。聞きたい事たくさんあるだろうけどまずは私から話させて。でもその前に」といってコーヒーを頼んだ。 運ばれてくると角砂糖を8個も入れた。 全く変な女だ。

2012-10-04 00:50:14
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第39話(ち)】 多量の角砂糖を銀色のスプーンで掻き混ぜながら女は言う。 「一番聞きたいのはお兄さんの事よね?」 兄の話が投げかけられると、僕の身体は思わず硬直する。 そうだ、僕は兄に会いたいんだ。 その為にこの女といるのだ。 「・・・兄は今どこに?」

2012-10-05 01:51:25
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第40話(山)】 「そりゃ気になるわよね。ねえあなたお兄さんの事って好きだった」 そう言われると正直よく分からなかったが「好きでしたよ。そりゃ家族ですから」と答えた。 「そう。お兄さんは今この街にいるわ。会いたい?」 僕はうなづいた。 女は微笑を浮かべた

2012-10-16 00:54:10
蓮華(れんげ) @renge_info

息苦しいハシビロコウ 第41話(ち) その後女は店内をぐるりと見渡し、再度僕を見つめた。 「率直に言うわ」 女は急に真剣な目つきをした。 「お兄さんには必ず会わせる。でもその為にはあの鳥が必要なのよ」 僕には理解が出来なかった。 兄とあの鳥に何の関係があるのか? だが女は真剣だ。

2012-10-18 01:33:58