【ついのべまとめ】自作ついのべ15選

500編達成記念
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@mimimdr

サンタに出会ったのは7歳の頃だった。家にサンタが来ないと嘆く貧しい私に、近所のお兄さんがくれたプレゼント。赤い帽子も白い髭もなかったけど、私にとってはサンタさんだった。その12年後、サンタに貰った最後のプレゼントはプラチナの指輪だった。サンタはもうどこにもいない。#twnovel

2011-12-24 18:29:39
@mimimdr

品質管理部では出荷前のコドモの製品検査をする。僕の仕事はコドモが十分に屈強な精神を持っているか試験すること。顔を殴り、口汚く罵り、餌を与えない。この程度で挫ける心では社会でやっていけない。僕もかつてはこの試験をパスした存在なので、胸は痛まない。#twnovel #twnvday

2012-01-14 17:21:55
@mimimdr

彼が留守の間の暇つぶしに、棚にあった本を手に取った。陳腐な恋愛小説。ふーん、こういう話がお好み? ヒロインはどこか元カノに似ている気がする。略奪してやった時、さめざめと泣いていた。彼女を捨てて私を選んだんだから、この本も要らないよね? 私はそれをゴミ箱に放った。#twnovel

2012-01-28 20:30:37
@mimimdr

夕日が美しかった。隣にいた彼がそれを必死にスケッチしていた。その後画家として大成した彼は美しい絵を沢山描いたが、あの日に彼が慌てて描き写した夕日より美しい絵は一枚も無かった。別れを告げた夜は星空が綺麗だった。隣で彼が黙って見上げていた。美しい空を彼はもう描かない。#twnovel

2012-02-16 22:41:07
@mimimdr

悲しいニュースが流れた瞬間、テレビは突然号泣しだした。慌てて電動ポンプを持ち出すが間に合わず、部屋は涙の海になった。塩水に浮きながら思う。最近色々あったのに、全然泣けなかったなあ。ぼんやりしていると、涙を出し切って乾いたテレビは無機質にニュースの続きを流していた。#twnovel

2012-02-22 20:19:36
@mimimdr

「ぼくも滑り台で遊びたいな」と言う毛虫の坊やに、お母さんは「だめよ、あれは人間の遊びなの」と言う。諦められずに木の上から覗くと落っこちてしまった。「きゃー!」人間の親子達は皆逃げていき、公園には坊やだけ。滑り台で遊んだ後、坊やは木登りの方法がわからず途方にくれた。#twnovel

2012-04-17 22:27:50
@mimimdr

イキジビキ・ロボットは少女が幼い頃から沢山の疑問を解決してきた。「あの子に会うとどうして動悸がするんだろう」美しく成長した少女がそう問うと「きっと彼は危険な男なのですよ」とイキジビキは答えた。イキジビキはどうして突然自分の出力装置が壊れてしまったのか判らなかった。#twnovel

2012-05-06 18:01:02
@mimimdr

長々喋り続ける男の口は乾きに乾き、砂漠化が進んだ。交通手段としてラクダの需要が高まり、猛烈な勢いで繁殖した。増えすぎたヒトコブラクダとフタコブラクダの間で第二次ラクダ大戦が今にも起きそうな段になって男が水分を摂取したため、ラクダの塊はのどちんこの下を流れていった。#twnovel

2012-05-11 19:18:35
@mimimdr

君が慌てて隠そうとして、ぬぐいきれずに零れた涙は、ぽろぽろと丸い結晶になるのを知ってるかい?とてもとても小さな音で地面をころころ転がるから、耳の良いハムスターの夫婦だけがそれに気付いて、しょっぱいねえ、しょっぱいねえ、なんて言いながら頬袋に詰めているのさ。#twnovel

2012-06-07 22:08:29
@mimimdr

お湯が注がれた。4分カップ麺はドキドキしていた。カップ麺は3分だという思い込みから、友人らはみな3分で食べられてしまった。4分カップ麺は、自分は4分で食べられたいと思う。だが3分経った時、蓋は開かれた。だめ、お願い、あと1分…!4分カップ麺の涙が蓋の裏にはりつく。#twnovel

2012-06-10 10:16:00
@mimimdr

ホタルイカは納得できなかった。夏になると異性を惹きつけるために光るという、色ボケ虫と同じ名前を付けられたのが腹立たしかった。なにが鳴く虫よりも…じゃい!人間との関係に疲れたホタルイカはきゅうきゅう鳴きながら浜辺に身投げし、拾われ、茹でられ、酢味噌をつけて食われた。#twnovel

2012-06-14 20:41:49
@mimimdr

雄鶏は夢を見る。ティラノサウルスだった頃の夢だ。果てしない荒野を大きな二本足で駆け抜ける。地上の王者だったあの頃。ひとつ雄たけびをあげると地面が大きく振るえ、森がざわめき、動物達が慌ててそこに逃げ隠れる。そこで目が覚める。狭い小屋の中で朝の訪れを感じ、雄鶏は泣く。#twnovel

2012-06-16 11:20:53
@mimimdr

ある日突然、三輪車は目覚めた。小さな手にハンドルを握られ、小さな足にペダルを踏まれ、狭い道をゆっくり進んでいる。小さな主が、側にいる大きな男を、お父さん、と呼んだ。翌日、三輪車は主の父が大きな二輪車に乗り颯爽と走るのを見た。自分の父はあの二輪車だろうか、と思った。#twnovel

2012-07-03 21:17:47
@mimimdr

ポチが動かなくなった。クラスの奴らが殴って蹴って壊したんだ。大丈夫、父さんがなおすよ。ヤだよ、新しいの買ってよ、こんな旧式ダサいよ。父さんは困ったように笑った。父さんは感傷的で非生産的だ。チキュウに残してきたポチそっくりの本物の犬とやらもどうせダサいに決まってる。#twnovel

2012-08-06 18:48:27
@mimimdr

鞄の中、折り畳み傘は思い出していた。大雨が降った日、帰宅するなり暗い部屋で大泣きした主人。傘はちゃんと仕事をしたのに、主人の顔はびしょ濡れになった。だから、鞄から取り出された折り畳み傘は今日はいい加減な仕事をする。仲直りした主人と恋人が狭い傘の下で肩を寄せ合った。#twnovel

2012-09-19 23:01:32