@taiyo_smith さんの映画「最強のふたり」感想

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太陽スミス @taiyo_smith

今日観た『最強のふたり』というフランス映画だが、前評判通り、とても良い作品だった。『おとなのけんか』や『人生はビギナーズ』、『ドラゴンタトゥーの女』を超えるかはちょっと怪しいが、今年観た洋画でもベストに近い。前述の3作品はやや異端な作風と言っていいが、本作は極めて正攻法な作り。

2012-09-23 01:41:41
太陽スミス @taiyo_smith

意地悪な人は、この映画の設定を見てこういうだろう。「なるほど。重度な身体障害を持つ金持ちの白人と、移民の貧乏な黒人の交流。なんて美しくも道徳的な話なんだろう!今から心を温める準備をしておかなくちゃ!ところで・・どの場面で涙を流せば、僕って道徳的に見えるかな?アッハッハ!」

2012-09-23 01:45:07
太陽スミス @taiyo_smith

そういった邪心を、嫌な大人である僕も多少抱えて赴いたのだが、見事に裏切られた。「何が良いのか?」に答えることは難しい。本作は言うなれば「『ぼく』と『きみ』」系の話であるが、終盤に主人公の二人が離れ離れになる際の絶望を観客に共有させることに成功している。それほど、二人の空気が良い。

2012-09-23 01:49:11
太陽スミス @taiyo_smith

物語自体は、穴も多い。まず、主人公の二人の生活環境はよくわからない。白人の過去の一部は当人の口から語られるが、彼がどうしてこんなに金持ちなのかは最後まで不明だ。黒人も、移民の宿命というべき荒んだ環境と生活苦に囲まれるが、その描き方は幾分ステレオタイプとも言える。

2012-09-23 01:53:51
太陽スミス @taiyo_smith

正攻法な作品なので、意外な展開も少ない。ただし、非常にユーモアに溢れた作品であり(フランス映画と聞いて想像されるシニカルなジョークとは、やや一線を画するが)、ほぼ満員の劇場全体が笑いに包まれることが何度もあった。

2012-09-23 01:57:52
太陽スミス @taiyo_smith

あと、この映画は実話に基づいた話だが、最後にモデルとなった主人公二人が出てくる。個人的な意見だが、こういう演出にはウンザリする。『127時間』(2011)もそうだったが、実話という「保険」を有効なものにするために、そこまでやる必要があるだろうか?観ている側が馬鹿にされている気分だ

2012-09-23 02:00:40
太陽スミス @taiyo_smith

こうまで批判しておいて、しかし『最強のふたり』は素晴らしい映画なのである。それは、先に書いたように、主人公2人の間に醸成されていく空気がまさに「化学反応」なのである。決してベタベタするわけではなく(実際、無教養な黒人の障害者イジりはなかなか辛辣だ)、しかしこの2人しか有り得ない。

2012-09-23 02:05:37
太陽スミス @taiyo_smith

『最強のふたり』は本国フランスで記録的な大ヒットを飛ばした。日本では想像もつかぬほど移民が深刻な社会問題となっているフランスで、この映画がどう受容をされたかはわからないが、一つ言えることがある。それは、フランスの観客も「このふたりをずっと観ていたい」と思ったであろう、ということ。

2012-09-23 02:08:38
太陽スミス @taiyo_smith

この「ずっと観ていたい」という空気は、大衆的作品に不可欠なのだと最近思い始めた(そして、それは恐らく理論的に作れるものでもない)。例えば『踊る大捜査線』シリーズ。映画はどれも記録的大ヒットを飛ばしているが、映画好きからは「くだらない」の一言で一蹴される(三作目は、確かにそうだが)

2012-09-23 02:11:46
太陽スミス @taiyo_smith

その通り、『踊る大捜査線』の映画版ストーリーはビックリするぐらい欠陥だらけである。しかし、客はたくさん入る。それは日本の観客が阿呆ばかりだからか?そうではなくて(そうかもしれないけど)、やはり「湾岸署の人々を観ていたい」という思いを根強く抱かせることに成功しているからではないか。

2012-09-23 02:16:20
太陽スミス @taiyo_smith

『最強のふたり』(なかなか酷い邦題だが、観終わってみれば・・)にしても、物語に足りない部分はあるが、とにかく主人公二人のやり取りをずっと観ていたくなる。「障害者と黒人というマイノリティを扱った偽善的映画」と勘違いする向きがあるのは非常に残念。単純に「最強なふたり」を描いた作品だ

2012-09-23 02:28:20