【折空に至る7日間】ログ

※男性同士の恋愛を扱った二次創作です※ 10/29-11/4に開催された折空字書きクラスタ祭り。折空が意識してくっつくまでをテーマにした7日間連作をIDごとにまとめました。 掲載・削除依頼などは@you_at_TBまで(直接編集もしていただけます)非公開アカウントからのツイートも本人のご要望があれば掲載可能です。
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えどぴ @_edo3_

(1/4)休憩から戻りトレーニングルームを見回すとほんの十数分前にはいたはずの彼の姿が消えていた。「あの、スカイハイさんは…?」極力何気ない口振りで彼の所在を尋ねると今しがた帰宅したという。同僚への挨拶もそこそこに、僕は荷物をひっ掴むと小走りでその場を後にした。 #折空7日間

2012-11-01 23:37:28
えどぴ @_edo3_

(2/4)弾けるように建物を飛び出すとすぐ、道路沿いを歩く彼を見つけた。だが声をかけようとした時、僕は気付いてしまった。彼の進む方向がいつもの帰路とは逆であることに。いけないことは思いつつ、そのまま密かに彼の後をつけた。 #折空7日間

2012-11-01 23:37:22
えどぴ @_edo3_

(3/4)彼の目的地を知ったとき、僕は愕然とした。 …そこは公園だった。それも彼にとって、特別な意味を持つ場所。 その瞬間全てを悟った。まだ彼は諦めてはいなかった。未だその胸に名も知らぬ少女への思いを抱き続けていたんだ。僕と過ごしていたこの数日間だって、ずっとーー。 #折空7日間

2012-11-01 23:37:22
えどぴ @_edo3_

(4/4)ベンチに腰掛ける彼の横顔を月明かりが照らし出す。何か幸福な期待に胸を膨らませるようにはにかむ目尻が、口元が、この上ない酷い裏切りのように思えて。ーーその瞬間、黒くてどろどろとした何かが、自分の中で育っていくのを確かに感じた。 #折空7日間

2012-11-01 23:37:18
えどぴ @_edo3_

(1/6)「どうして此処にいるんですか」喉から出た声は想像していた以上に冷たかった。突如目の前に現れた僕に、彼は目を丸くした。その表情には明らかに動揺の色が見える。「折紙くん…どうして?」「あの恋にもう未練はないって、そう言いましたよね。嘘だったんですか?」 #折空7日間

2012-11-02 23:19:10
えどぴ @_edo3_

(2/6)彼は目に見えて困惑していた。それもそうだろう、今まで僕は、ただ彼を慕う一途で健気な後輩として彼に接してきたのだから。 僕の急変した態度に慌てる様子はとても愉快で、同時に泣きたくなるほど悲しかった。激情に身を任せて、僕は彼をまくしたてた。 #折空7日間

2012-11-02 23:19:06
えどぴ @_edo3_

(3/6)貴方はもう恋なんてしないと思ってました。ヒーローとしてそんな個人的な感情とは決別したんだと。でも違ったんですね。ねぇ、貴方がここにいるのは本当に純粋な恋心からですか?結局貴方は誰かに甘えたいだけなんでしょう。だからKOHの座だって奪われたままじゃないですか #折空7日間

2012-11-02 23:19:03
えどぴ @_edo3_

(4/6)そんな貴方を僕は軽蔑しますーー自分の中でも最上級の、酷い言葉を浴びせ掛けた。彼に対して抱いてきた憧憬、妬み、親愛、憎しみの感情を全て吐き出し終わったあとは、息切れさえしていた。 ーー自分のしたことの重みに気付いたのは、彼のその小刻みに震える肩を見た時。 #折空7日間

2012-11-02 23:18:59
えどぴ @_edo3_

(5/6)次の瞬間、自身の愚かな行為への罪の意識が津波のように押し寄せた。何か、何か言わなくてはーー焦る僕が口を開く前に、沈黙を破ったのは彼だった。そう…君の言う通りだよ。そう振り絞るように言った彼は強張る頬を無理やりに歪めてみせた。「…どうして笑うんですか」 #折空7日間

2012-11-02 23:18:55
えどぴ @_edo3_

(6/6)だって君だけはいつだって本当のことを言ってくれるから。だから、 「 」 まさか、彼のこの言葉が、こんなにも切なく響くなんて。 僕はそのまま逃げ出すようにその場から駆け出した。背中を追うその声すら、もう聞こえない。 #折空7日間

2012-11-02 23:18:46
えどぴ @_edo3_

(1/6)あれから彼とは会っていない。出動時は他社のヒーロー同士は殆んど会話をしないし、共用スペースでの接触さえ気を付けていれば、彼と顔を合わせないようにするのは難しくなかった。きっとこのまま、彼との関係は当たり障りのないものへ昇華されていくのだろう。 #折空7日間

2012-11-03 23:13:01
えどぴ @_edo3_

(2/6)そんなある日僕はファイヤーさんに捕まった。猫が首根っこを掴まれるように、連れて来られたのは何処か怪しい雰囲気を醸し出す店。「よくスカイハイも来るのよ。一度連れてきたら此処のレモネードが気に入っちゃったみたいで」突然出されたその名前に、ビクリと肩が震える。 #折空7日間

2012-11-03 23:12:58
えどぴ @_edo3_

(3/6)「彼と喧嘩でもしたの?」核心をつく質問に、なるべく平静を保って、どうしてですかと聞き返す。「最近あの子、ずっと死にそうな顔してんのよ」僕は混乱した。彼がそんなにショックを受けているなんて思わなかった。僕が姿さえ見せなければ、すぐに忘れてしまうと思ったのに。 #折空7日間

2012-11-03 23:12:56
えどぴ @_edo3_

(4/6)「アンタなんか勘違いしてるんじゃない?」「何が…ですか?」「スカイハイが落ち込んでるのはアンタが自分を避けるからよ」…そんなこと…「信じられません」「どうして?」「だって僕、彼にとても酷いことを言ったんです」堰を切ったように、僕はここ数日の出来事を話した。 #折空7日間

2012-11-03 23:12:53
えどぴ @_edo3_

(5/6)彼は憧れだったんです。信頼されて嬉しかった。でも応援をしている振りをして、本当は彼に恋なんてして欲しくなかった。だって彼は誰にでも平等な完璧なヒーローだから。誰か一人のことを愛してしまったら彼が彼でなくなってしまうような気がしたから。「…本当にそれだけ?」 #折空7日間

2012-11-03 23:12:47
えどぴ @_edo3_

(6/6)え、と間の抜けた声を出した僕に、分からないならいいわ、と彼女は笑う。そして、早く仲直りしちゃいなさいと小突かれ、すっと差し出されるグラス。湯気と共に甘酸っぱい香りが立ち昇るそれを両手で持ち上げると、僕は彼女の問いを反芻しながらそっとレモネードに口をつけた。 #折空7日間

2012-11-03 23:12:45
えどぴ @_edo3_

(1/9)彼が愛した少女とは、どんな人物だったのだろう。誰よりも純粋な彼が惹かれる位だ、それは美しい心の持ち主だったに違いない。比べて僕はこんなに醜く暗い感情を抱いている。きっと彼には相応しくない。あの潔白な人に、毒を飲み込ませるようなものだ。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:37
えどぴ @_edo3_

(2/9)それでも僕は、彼にもう一度会いたいと思った。会ってそして確かめたい。彼に触れる度、微笑みかけられるたびに疼く熱の正体を、あの日彼をあれほど激しく責めたてた憤りの理由を。彼の居場所は、探すまでもなかった。噴水が幻想的に輝くそこで、彼は同じベンチに座っていた。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:34
えどぴ @_edo3_

(3/9)ーーしかし、前回と違って、彼は唇を噛み今にも泣きそうな顔をしていた。 そのあまりに切なげな表情に、心臓がどくりと跳ねた。胸の奥から湧き上がる熱い衝動に、自然と足が動かされる。 気付いた時には、僕は彼の身体を背後から抱き締めていた。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:31
えどぴ @_edo3_

(4/9)顔を埋めた首筋が一瞬びくりと震えたが、すぐに、回した腕にそっと温かな掌が添えられる。「…折紙くんだね」振り返らずそう言った彼の声はとても穏やかだった。ーーその瞬間、堰き止められていたものが一気に溢れ出した。言いたいことが沢山あるのに喉が詰まって声が出ない。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:29
えどぴ @_edo3_

(5/9)「泣いてるのかい?…ごめんね、私は君を失望させてしまった」 謝らなければならないのは僕の方。どんなに懺悔してもしきれない。 最悪だ、こんなに純粋な人を傷付けた。 最悪だ、こんなに優しい人に付け入って。 最悪だ、こんなに尊い人に、僕は恋をした。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:26
えどぴ @_edo3_

(6/9)やっと分かった。劣等感でも憧れでもない。誰にでも平等な彼の、僕は「特別」になりたかった。ああ僕は最初からこの人のことが、ただ好きだったんだ。ぎゅうと、僕よりも大きく逞しい身体を強く抱き締めた。ごめんなさいと、振り絞るような声が彼に聞こえたかは分からない。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:24
えどぴ @_edo3_

(7/9)けれど子どもをあやすように僕の腕を撫でる彼には、全てが伝わったに違いない。「スカイハイさん…貴方が誰を想っていても、僕は貴方が好きです」今度ははっきりとそう言えた。彼は少し驚いた顔をしていたが、ありがとう、とても嬉しいよ、とても。とはにかむように笑った。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:21
えどぴ @_edo3_

(8/9)私はね、と僕をベンチに座らせると彼が話し出した。此処にくるのは彼女のことを待っているからじゃないんだよ。確かに此処は彼女との思い出の場所だけど、元々は私のお気に入りの公園でもあるんだ。悩み事があるときは、よく此処に座って考え事をしたりしてね。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:19
えどぴ @_edo3_

(9/9)そう語る彼の掌を握りながら、僕は唇を尖らせた。悩み事なら僕に相談してくれたら良かったのに。すると彼はいつものように快活に笑って言った。流石の私も本人に恋の相談なんて出来ないよ!ーー愉快そうに笑う彼が自分の失言に気付いたのは、僕がすっかり赤面した後だった。 #折空7日間

2012-11-04 22:53:18