天然精霊と能天気精霊 旅の歌 館編

http://togetter.com/li/371107 からの続きになっています。 名槍グラーシーザの精霊・ティアと、宝剣エッテタンゲの精霊・シャロ。コウさん宅のシルヴさんとグルウさんとの物語。
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内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「…ユリアナ、あたし「いいですよね?一人くらい。貴方方はまだ可能性がある」ユリアナの指から伸びた赤い紐が、ティアの細い腕を捉え、引いた。後ろから拘束され、嫌でも視界にグルウの姿が入る。「っ!」「貴方様はこの子のどこに惹かれたのかしら?」→

2013-01-15 13:32:02
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill ティアの腰から指を滑らせ、なぞる。その指が顎を掴み、「私とこの子に何の違いがあるのかしら?」くす、と笑い、グルウを見据える。「で?ムニン様?私が愛して育てるならば、許可してくださるのかしら?…貴方様の許可もあったほうがあとあと面倒じゃないのでね」

2013-01-15 13:32:20
ファンタジスタコウさん @Y_Yggdrasill

@naisyo_banasi 「あんたとこいつは別々の存在だ。比べられるような違いなんてない。俺は、こいつだから、ティアだから惹かれたんだ」 真っ直ぐに見据えてそう言った後、眉根を寄せ、苦しそうに言葉を紡ぐ。→

2013-01-16 00:53:22
ファンタジスタコウさん @Y_Yggdrasill

@naisyo_banasi 「っなあ、ティア、俺、やっぱ無理だ...一人目とか次があるとか、そうじゃなくて...俺たちの、子供なんだ」 愛してくれたとしても。 「俺にはできねえよ...!」 奇跡の子を、手離すなんて。

2013-01-16 00:53:28
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「グルウ…」「…旦那様の許可は下りなかったけど、あんたが一言Yesと言えば済む話よ」「あたし、あたしは」眼をぎゅっと瞑り、絞り出すように。「…ごめ、んユリアナ」「あげられない、この子を、貴女には、あげられない…」→

2013-01-16 03:36:07
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 予想外の言葉に、ユリアナの顔色が変わる。「…なにそれ」壁にティアを乱暴に押し付け、その襟元を掴む。「じゃあ、文字通り『奪う』しかないって事ね」力任せに引き裂かれ、露わになった腹部へ冷たい手が押し当てられた。「Barnið mitt」「…!や」→

2013-01-16 03:36:15
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 光を帯びた指先が腹部へ沈んでいく。「ティアだから惹かれた?…ずるいじゃないですか。この子だけ、普通の幸せを掴んで。貴方様みたいな人に愛されて」ず、とさらに指がめりこむ。「ぐ、あ」「近寄らないで」砂を擦る音に反応し、冷たい眼でグルウを見据える。→

2013-01-16 03:36:39
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「今近寄れば、お腹の子も、ティアも、大惨事ですよ?」ぐる、とその指先をひねる。「う、あぁっ!」苦悶の声と、狂気の笑い声。「ムニン様。子供と、ティアと。どちらを助けたいか選んでくださいな。…それとも。あたしを殺します?」

2013-01-16 03:36:57
ファンタジスタコウさん @Y_Yggdrasill

@naisyo_banasi 鋭い声にぎくりと足が止まる。 「っ...!」 ぎち、と右肩が疼く、が。 (だめだ)(だめ)(それじゃ、なんにも解決しないよ)(自分を、見失わないで、ルウ) 頭に響く『声』達に、冷静さが引き戻される。→

2013-01-16 13:52:18
ファンタジスタコウさん @Y_Yggdrasill

@naisyo_banasi (そうだ...確かに、あいつが動く前にその腕を...首を、落とすことぐらい簡単だ) (けど、それじゃ駄目なんだ...!) 「.........」 ぐ、と拳を握りしめ、ひとつ、深く息をする。 「...あんたは、それでいいのか」→

2013-01-16 13:52:20
ファンタジスタコウさん @Y_Yggdrasill

@naisyo_banasi 「そうまでして子供が欲しいってんだ...あんたにも、いるんだろ?一生添い遂げたい相手が」 「そいつが、喜ぶと思ってんのか...?こうまでして手に入れた子供を、心から愛して、育ててくれると思うのか!?」

2013-01-16 13:52:23
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「…わかったような事を」「喜んでくれるに決まってるわ」ぴくりとも表情を変えずに告げる。「ヴェリとの間にもう子供は望めない。でも、彼は」「兄さんは、あたしのすることならなーんでも喜んでくれる」そういうものなのよ、と笑うユリアナに。低い、太い声が響いた。→

2013-01-16 16:51:30
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「…ユリアナ」「!!」死角からゆらりと現れた大柄の、顔に傷のある男が、そっとユリアナの肩に手を置いて首を振る。「…ユリアナ」「ヴェリ…?!どうしてここに、嫌、離して!」「…ヴェ、リ?」「…もう、大丈夫だ」する、と腹部へ伸びた手に触れ、呟く。→

2013-01-16 16:52:28
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「Disenchant」言葉に反応して、ユリアナの手元から光が消え、弾かれるように指先が離れる。「っ、どうして!」そのまま羽交い締めにしてティアから引き離し、グルウへと視線を向ける。「…ティアを」「だめ!何よ!!あんた達の子供として生まれるより!!」→

2013-01-16 16:52:43
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill あたしの、あたし達の子供として生まれたほうが!!」言いながらもがくユリアナを、ヴェリが悲しそうに見つめた。「どうして…!」

2013-01-16 16:53:01
ファンタジスタコウさん @Y_Yggdrasill

@naisyo_banasi 解放されたティアを抱きとめ、男へ視線を向ける。 「あんたは...」 目を見て、合点がいく。 「そう、か...あんたが...」 「あんたは、どうなんだ。ひとから奪ってでも、子供が欲しいか」 その悲しい目を見据えて、問いかける。

2013-01-16 19:39:47
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「…俺は」暴れるユリアナを見下ろしながら、ぎゅ、とその肩を抱く。「俺は、こんな事をしてまで、子供が欲しいとは思わない」「…!な、に。なんでそんな」「…ユリアナ。俺は」「どうして!!」遂に、彼女が激昂して大声で叫んだ。→

2013-01-16 20:18:36
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「ティアのせいであの子を失ったのに!どうして!?それなのにっ、そいつは産もうとしてる!あたしの、あたし達の子は、未来すら失ったのに!」「違う。ユリアナ」「っ!だ、め。ヴェリ!」制止するティアを一度見て、ヴェリが目を閉じた。大丈夫だ、とでも言うように。→

2013-01-16 20:18:42
  • 真実
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「あの時。…あの日、ティアと俺は、暴徒に襲われたお前を助けに行った。でも」「そこにいたお前は、ひどく動揺して、血まみれの腹を抑えたまま、混乱状態だった。…病院に行っても尚、記憶の混乱が起こっていたお前の『怒りの矛先』を買って出たのが」→

2013-01-16 20:18:50
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill ヴェリが、苦しそうな顔で俯くティアを見た。「…ティアなんだ」その言葉に、目を見開いたままユリアナが静止する。振り上げていた腕をゆっくりと下ろし、「………どういう、事」「俺たちが行った時、既にお前は子供を『奪われた後』だった。ティアは、悪くない」→

2013-01-16 20:18:58
内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 「……」「…悪くないんだ」沈黙を守っていたティアが、ぎゅう、とグルウの腕を掴む。「…だいぶ、前に。まだ生まれていない子供を…その、奪って売買する組織が摘発されたの…覚えてる?」眼差しを地面へ向けたまま、「…ユリアナは、その被害者なの」

2013-01-16 20:19:50

交錯する想い 

内緒話 @naisyo_banasi

@Y_Yggdrasill 二人とは反対方向へ歩を進める。「…ティアが、あんなに怒ったの初めてです」ぎゅ、と袖をつかむ。「……痛い」ぶたれた頬は赤みを帯び、少し腫れている。本気でぶたれたのが傍目から見ても明らかだった。「…ティア、どうして」「どうして、隠そうとするの…?」

2013-01-13 07:12:54
ファンタジスタコウさん @Y_Yggdrasill

@naisyo_banasi 腫れた頬を見て顔を歪め、そっと触れる。 「...私たちでは、きっとそれを聞けないでしょう。彼に、託すしかない」 一度、優しく髪を撫でると、シャロの手を取り歩き出す。 「さ、行きましょう。その頬も手当てをしないと」

2013-01-13 15:13:22