「端役」論まとめ

畠山茂 / はっち / hacci @hacci88

知り合いを誉める評論家は嫌だなぁ。俺は絶対に評論家と親しくなりたくない。

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あと、「端役」「チョイ役」とか書く評論家は、死ね。小さい役ほど大変だ、という側面を知らないなら、評論で飯食うな。

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ちゅうか正確に言うと、嫌なのは「知り合いだけを誉める」「知り合いだから誉める」かな。評論家の内心までは厳密にはわからないけど。

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そういや、スーブレットの研究で博士課程を受験した先輩に面接で「そんな脇役の研究なんかしてどうするの？」と質問したという先生、まだ生きてるのかな。その場で即座に先輩を援護した原田茂生先生、尊敬します。

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さて、「端役」論。そもそも「端役」という言葉に私は蔑視を感じるわけだが、この辺は個人の感覚なので色々なかたがあるのかもしれない。が、私はなんというか「どうでもいい」とかそういう（無意識の？）ニュアンスを感じるのだ。実際には、配役表中に「どうでもいい」役など1つたりとて無い。

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そして、小さな役ほど一面では大変、というのは今回の二期会『サロメ』のような演出下での特殊現象ではない。出番が限られる、テキストが限られる役というのは、大役とはまた全く違う難しさと醍醐味があるのである。その辺のことを実感していないならば、評論家側であれ出演者側であれ、半可通である。

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限られた時間と行動可能性の中でいかにして、その役を活かすか。劇中で「必要な」「説得力ある」ものにするか。そしてかつ、悪目立ちしないようにするか。これはじつは表現というものの根幹であるのだが、小さな役程それが凝集されている。それを真摯に誠実に実行するときのプレッシャーたるや。

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勿論、小さな役はおざなりに流してしまえば流れていってくれるものでもある。オペラの場合、音楽が流れてしまっているのであるから特に。しかしそれでは何の意味もないということに、誠実な表現者なら気付いている筈である。筈であるのだが。

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主役系と脇役系が違う技能でありそれぞれに追求すべき奥深さがある、というのは例えば能楽のシテ方とワキ方が家からして別れている事からも察せられるのではないかと思う。ワキ方の役者に「主役やれずに残念ですね」「端役なのに光ってましたね」と言うか？ということなんだが。

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またTito GobbiがToscaのSciarroneについて非常に詳しく語り残しただか書き残しただかしたそうだが、私もかつて加藤直演出で同役を第2幕だけやらせてもらった際、これはとてつもない役だと思った。ある意味Scarpiaよりも遥かに深遠。あんなに歌は少ないのに。

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というようなことを本当にわかる評論家にはこのWeb化時代を生き残ってほしいが、何人いるのだろう。もしいなかったら、全滅でも困らないが。

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ま、長々と続けましたが、出演者だろうが評論家だろうが（つまり第何次表現者であろうが）表現者は謙虚な部分がなければ、ってことですね。己の無知に対する畏れ、というか。お目汚し、失礼しました。

畠山茂 / はっち / hacci @hacci88

一つだけ補足：　オペラの場合は主役も脇役もどっちもやりうる人が多いから、やる方も評論する方も職能の違いに鈍感になりうるのかもな。