トンネルの女

長編ぱるにゃん
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ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

誤ってバスの終点まで来てしまった

2012-11-05 20:45:45
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

誤ってバスの終点まで来てしまうと恐怖心霊怪奇トンネルを一人で歩いて帰らねばならないからつらい

2012-11-05 20:46:37
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

恐怖心霊怪奇トンネル,人間の生首らしきものを片手にぶら下げた髪の長い痩せた女が立っていてヤバい

2012-11-05 20:47:47
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

目を合わせると死んでしまうのでトンネル通過中はテンプルに経文を彫ったレイバンのティアドロップをかけている

2012-11-05 20:49:48
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

こうしておけば鬼のような形相で悔しそうにこちらを睨んでくるが手を出してくることはない

2012-11-05 20:51:31
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

滅多にあのトンネルを通ることはないし,通ることになったとしてもレイバンをかけていれば大丈夫だ…そう軽く考えていた…だがあの日から…事態は急変した…

2012-11-05 20:55:40
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

あの日…オレはバスの中で寝過ごしてしまって,久しぶりに終点まで来てしまった.やれやれ,そう呟いてレイバンを装着しトンネルへ入った.

2012-11-05 21:00:45
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

今夜もいた…あの女だ.目を逸らしているからはっきりと分からないが,恨めしそうにこちらを見ているのを気配で感じる.いつも通り,何事もなくトンネルの出口に差し掛かり,一息つこうとしたその時,耳元で声がした.「……ヲ… …カラ」

2012-11-05 21:01:56
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「!?」途端にもの凄い寒気が体を襲った.考えるより先に,手足が動いて全速力でオレは走った.(なんで…!?ヤバイ!!ヤバイ!ヤバイ!) 気づくとオレは家の前に着いていた.いつもと変わらぬ周囲の住宅街の様子を確認し,心なしか安心した.ドアを開けて部屋に入り電気を点ける.

2012-11-05 21:07:00
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

椅子に座りテレビの電源を入れる.普段通りの下らないバラエティだ.オレは大きく溜息を吐いた.いまだに体は熱かったが,汗は冷え始めていた.(なんだったんだ…さっきのは…)

2012-11-05 21:14:02
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

恐怖心が風の音をそう聴こえさせたのかもしれない.いや…ちょっと待て….おかしい.あのトンネルの,薄ら寒さに似た嫌な感じがずっと続いている….(…まさか…)

2012-11-05 21:17:10
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「!!」オレはギョッとした.カーテンの向こう,窓の向こうに,あの女の姿が見えた.幸いにも,オレは逃げ帰るのに夢中で,まだレイバンをかけたままだった.女から目を逸らしたまま窓に近付き,急いでカーテンを閉めた.(待て…待て…ヤバイ…なんかわからんがヤバイ!)

2012-11-05 21:20:35
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

(…そうだ…!) オレは携帯を取り出し,旧友のTに電話をかけた.窓の向こうから女の気配がまだずっと続いている.(頼む…!出てくれ…!) 6コール目に電話が繋がった.「おう,どうした?」(良かった…繋がった…)

2012-11-05 21:24:13
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「どうしたんだよお前,息荒いぞ」「ヤバイ…ちょっとマジでヤバイかもしんない…助けて欲しい…」「…分かった.ちょっと待て.待てるか?電話は切るなよ.」Tの声色が変わった.緊急事態だということを察知してくれたようだった.

2012-11-05 21:28:57
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「…悪いな.どうした?」「すぐ来て欲しい.とにかくヤバそうなんだ」「…すまん,オレは今,岡山の実家なんだ.まだ凌げそうか?」チラリと窓の方へ目をやった.相変わらず女の気配は続いているが,レイバンに刻まれた経文のお陰か,動きは無い,

2012-11-05 21:31:53
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「…多分…大丈夫だと思う.」「よし,じゃあまずアレだ.前に教えただろ?ポストイットで構わない」オレはペンとポストイットを取って,急いで護符を仕上げて部屋の四隅に貼付けた.部屋の空気が心なしか軽くなった.「…OK」「…よし.何があったのか話せ」

2012-11-05 21:32:49
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

オレはTに事の始まりから全て話した.「これまでは何もなかったのに…今晩突然に…か…」「おそらくじいさんが帰って来るまであと2時間だが…それまで何とかやってみよう」

2012-11-05 21:43:36
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

Tは岡山の神社の息子だ.大学で出逢い仲良くなったが,一緒に道を歩いていると突然,この道はやめよう,とか,この店の奥の席には行かない方が良い,とか変なことを言い出す奴だった.

2012-11-05 21:45:13
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

話を聞いてみると,Tは神主の血のせいか,幼少の頃から人に非ざるモノや邪悪な気を感じ取れたとのことだった.その時は半信半疑だったが,それからTの指摘を受けた場所で実際に不吉な事件が起きたことを知り,オレもTの能力を信じるようになった.

2012-11-05 21:48:09
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「ヒトの霊か…妖怪の類か…相手の正体が分かった方が手の打ちようがあるんだが……お前…その女は片手に生首のようなものを持っていると言ったな?どんなだった?思い出せるか?」「目を逸らしてたわけだし…はっきりとは見てないんだけど…」

2012-11-05 21:53:09
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「人の首か?大きさは?」「子供の頭…くらいの大きさだったと思う…なんかこう…ざらざらしてそうな…」「……」Tは暫く沈黙した.「…地蔵の頭…に見えなかったか…?」「…そう言われるとそうかも…」「まずい」「え?」

2012-11-05 21:53:39
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「まずい」Tはもう一度そう言った.「…いや,まだ可能性の話だが….ポストイットの護符,テープでしっかり貼り直せ」「…OK」「…よし.いいか,良く聞け.それは霊でも妖でもないかもしれない」

2012-11-05 21:59:01
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「…というと?」「神だよ.神の類.そうなるとオレの力では難しいかもしれない.下手すると,何もできない」「…どうしたら良いんだよ…」「外には出るな.なんだかんだで今の部屋が一番安全だ」

2012-11-05 22:00:02
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「その護符はあくまで一時的な結界だ.ガムテープはあるか?」「うん」オレの声は震えていた.正直,泣いていたと思う.「何ロール?」「えーと…3ロール」

2012-11-05 22:08:05
ギャラクシースーパーノヴァ子 @gsnc_

「…おそらく足りるな.よし,今からオレが言う言葉をガムテープの左から右へ書いていけ.それを部屋の壁に右回りで貼っていくんだ」「わかった」「いいか,ぜん…」「漢字は?」「平仮名で良い.大事なのは音だ」

2012-11-05 22:09:13