【novel】君に、会いにいこう。

雪乃 兎 @usagi_AS

TN110701)「あー、どうしよ。」 「行けばいいじゃん。」 「えー、でもなぁ。ひかれそうじゃん。」 「じゃあ行かないでおく？」 「え、でもなぁ…」 「…」 「…」 「…」 「あー、もうウザったい！めんどくさいんだって、あんた！」 「あ、う…」

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TN110702)友達にダメージをくらわされ、あたしは机にぶっつぶした。「あのさぁ、あんたは何て言ってもらいたいわけ？」行けって言えばいいの？行くなって言えばいいの？グサグサと刺してくる友達の言葉。（あー、もうヤダヤダ）シャットアウトしようと強く目をつむる。

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TN1103)だけど、それと同時にえりのねっこをつかまれ無理矢理顔をあげさせられた。「ちょ、ちょ、ちょ！首締まる首締まる首締まる〜〜〜!!!!」「行くか行かないかさっさと決めろ！」見てるこっちがイライラする。そう言って友達は手を離した。

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TN110704)「ちょっと！人殺す気!?」「イライラさせるあんたが悪い！」いやいやいや、と突っ込みたくなるが、これ以上怒らせたくないので口を閉じた。あたしの息が整ったころ、友達がはぁ、とため息をついた。

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TN110705)「結局、あんたはどう言ってほしいの？」友達にそう聞かれ、安心できそうなこと？と言うとバカ？と言われた。「誰でも片想いなんて不安じゃない。」何言ってるのよ、と言われもっとシュンとなる。もう言い訳する気にもなれず、はぁ、とため息をつく。すると、

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TN110706)「何してんの？」と、陽気な声が聞こえた。声でわかる。友達の彼氏だ。「あいつに会うか悩んでんのよ。」友達の冷たい声。すると納得したような彼の声が聞こえた。「あぁ。あいつ今日誕生日だもんな。」びくん、と体が反応する。その反応に、また友達がため息をついたのがわかった。

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TN110707)「そんなに気になるなら行けばいいじゃない。」「だってぇ…」顔だけ起こして唇を尖らせた。「ほとんど喋ったことないのに誕生日のときだけ喋りかけるとか変じゃん。」言い訳はたくさん思い付く。頭の片隅でそんなことを思ったが、あの陽気な声で吹っ飛んだ。

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TN110708)「別によくない？そんなこと。」「…」 そ　ん　な　こ　と　？ あまりにも楽天的な言葉に体をガバッと起こした。「そ、そんなことって …」「だってさぁ…」ふわりとあくびをこぼすと、しゃがんであたしと目を合わせた。「喋りかけるのとか自由じゃん。別に関係ないしょ。」

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TN110709)彼は普通にそう言った。でも…、そうあたしが言葉を続けると、じゃあさ、と彼は口を開いた。「あいつに会いたい？」「え？」「だから、あいつに会いたい？」急な質問に思わず聞き返す。だけど、なぜか真剣な表情を見せる彼に、うん、と戸惑いづつも頷いた。

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TN110710)「じゃあ………あいつの誕生日祝いたい？」「……………うん。」勝手に頷いていたあたし。そんなあたしを見て彼はにっと笑った。「なら行ってきなよ。きっと大丈夫だし。」「え。でも、誕プレとかも用意してない…」「大丈夫だって！」しどろもどろになるあたしを勢いよく遮った。

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TN110711)不安気に彼を見上げると彼は再び笑った。「誕生日祝いにきたってだけであいつからすれば十分だから。」だから逆に行ってやってよ。（なぜ、あたしが頼まれてんだ…？）だけど、そう思ったのも束の間。あたしはガタンと立ち上がった。 「…………いってくる。」

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TN110712)机の横に掛けていたカバンを持ち、勢いよく床を蹴った。「いってらー」「頑張ってねー」後ろから聞こえた声に、あたしは大きく手を振り返した。「いってきまーす！」 実は、あのあいつとあたしが両想いだったのは、また別のお話。

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TN110713)君に、会いにいこう。end