怪萌3 ケモノ耳
起きると何故か床で寝ていた。布団が膨らんでいたので剥いだ。そこに真っ白な肌の少女が寝ていた。唖然としていると朝日の中で見えなくなった。翌朝も起きたら床で、再び布団を剥ぐと、浅黒い肌の少女が寝ていたが、すぐ見えなくなった。さらに翌日、布団を剥ぐと、二匹の獣が太極図を描いて寝ていた。
2010-08-20 02:10:42犬歯が付いたネックレスを拾った夜。寝ていると、「おい」と声を掛けられて目が覚めた。若い女性の声だが、姿が見えない。ベッドに腰掛けて立ち上がると、「ぬし、今振り返ったらわしを受け入れた事になるぞ」と、背後から声がした。驚いて振り返ってしまった。真っ白い子犬が尻尾を振って座っていた。
2010-08-20 02:30:03偶然手に入れた猫じゃらしの力に気づいたのは、秋口のことだ。空中で猫じゃらしを踊らせると、空気が凝る。空気は左右に大きく移動し、カーテンがはためく。ゆっくり空中で上下に振り、畳の上にさっと穂先を移動させると、空中から女が躍り出た。女は猫の姿を取った。猫はまだ部屋にいる。時々化ける。
2010-08-22 12:25:58ある日を境に、姉の耳が動くようになった。すぐに全体が細かい毛に覆われ、二月もすると、形も変わった。一年経つと、もう獣の耳そのものだ。姉は部屋に引きこもり、泣き続けていたが、急に泣き止むと庭に出て服を脱ぎ、白虎に姿を変えて天に昇ってしまった。翌日帰って来て「千里って遠い」と言った。
2010-08-22 12:38:03「お兄ちゃん、こっちきて」と聞こえた。言われるままにベッドのそちら側に移動する。これは夢だ。一人暮らしの部屋に声がするはず無い。「掛けてあげる」ふわっとした何かが体に掛けられた。ああ、気持ちがいいなぁ。そこで意識が途切れた。翌朝、ベッドの上には真っ白な鳥の羽根が何本も落ちていた。
2010-08-24 02:34:12彼女が「アンタなんか簡単に化かしてあげるわよ」というので早速やってみろと挑発した。すると、一度部屋の外に出ろという。部屋を出ると、大きな音がした。何やってんだ。気になったので覗くと、「もー、今準備してるんだから急かさないでよ!」と真っ赤になって怒った。狐の世界にも色々あるらしい。
2010-08-25 23:21:18彼女が人間と違うのは、好物を見た時の瞳孔だ。きゅうと細くなり、その後でまん丸になる。黒目勝ちに大きく広がる瞳は、可愛らしいと言えば可愛らしいが、違和感があると言えば少し違和感がある。「なぁ、その目をするなら元の姿になった方がいいぞ」「えー」「また戻る時は裸だしね」引っぱたかれた。
2010-08-28 04:00:36「何でお前風呂嫌いなの」「だって…濡れるし」彼女の一番の欠点は、風呂嫌いだ。だが頑張ってシャワーは浴びている。その時にドアを開けたら、子猫が毛を濡らし、小さくなっていた。それを見て笑った瞬間、ぶるぶると大きく体を震わせた。その後人型に戻ると、「ちゃんと舐めなさいよね!」と叫んだ。
2010-08-28 04:11:57いつも横に寝ている彼女は、朝、まずぐっと伸びをする。ただ、必ず失敗して尻から尻尾がはみ出る。彼女ははみ出た尻尾を抱えて「むー」という顔をする。いつまで経っても慣れないらしい。その後で元の姿に戻って丸まって寝ている。もう一度起きる時は、人の姿になるが、当然全裸で真っ赤になっている。
2010-08-28 04:36:25結局二人切りの嫁入りだった。彼女は「老いて百年死して千年愛してたもれ、儂も永く永く、魂の擦り切れるまで其方を愛し抜く事を誓おうぞ」と言った。それから二人、人の姿で百年、獣の姿で五百年、樹の姿で千年、石の姿で万年を過ごした。二人の存在は割れて砕けて裂けて散り、とうとう一つになった。
2010-08-28 04:55:49栃木県で出会った少女は、控えめな性格だった。「私、昔から悪い子だったから、皆に嫌われていたの」と彼女は言った。金髪で真っ白な肌の少女だ。「でもね、もう昔の私じゃないの。貴方に出会えて、本当に、良かった」僕の横にはずっと彼女がいる。「怒らせないでね。私、もう悪い子に戻りたく無いの」
2010-08-28 05:04:48