【終了】リアンのゾンビサバイバル

　不意に、眩暈を覚えた。この感覚は……そう、依頼書に触れた時の感覚をスローモーションにしたような、あの感覚。意識が何かに引っ張られるこの感じは……間違いなかった。ま、まさか……このまま元の世界に戻されるの！？ま、待って！私、まだこの２人に何も言ってないのに！せめて最後くらい、素直に話をさせて！！

『ねーちゃん、どーしたんだ？』
シュンが心配そうに私の顔を覗き込む。この世界に少しでも長く留まれるように、引っ張られる感覚に必死で抗う。
「だ、大丈夫……それより、もう時間がないみたい」
私の身体から、少しずつ感覚が薄れていく。私の身体が、少しずつ透けていく――まだだ、まだここから消えるわけには行かない！

「シュン！」叫ぶように、少年の名を呼ぶ。
「あなたからは、とても大きなものを貰ったわ。私が変わろうと、人ともっと関わろうと思えたのは、あなたが居たからよ。本当にありがとう……私、何年経ったって、シュンのことだけは絶対に忘れないから！」

「セッカ！」ユキの本当の名前を叫ぶ。
「私が落ち込んでいる時、あなたはいつも励ましてくれた。あなたが居なければ、私はきっと独りだった。大変なこともあったし、正直言って邪魔だと思ったこともある。でもそれ以上に楽しかったし、仲間で良かったって思った！今まで有難う！！」

「私、自分の気持ちを伝えるのが下手だから……だから、伝えるのが遅れちゃったけど……！」
四肢の感覚が、完全に消えて。
「放り込まれたのがこの世界で良かった。２人に会えて、本当に良かった！」
視界が徐々に白く染まってゆく。
「元の世界に帰ったって、あなたたちはかけがえの無い仲間だから！！」

　事態を把握できていないであろうシュンが、ありったけの声量で叫ぶ。
『一体……何のことだよ！ねーちゃん！！』
この世界から、「私」という存在が消滅する。その間際に私は、ずっと伝えたかったことを言って、そのまま意識を失った。

――あなたたちは、この世界の希望。だけどそれ以上に、私にとっての希望だった。だから、外に出ても頑張って。それだけが、私の望みだから――