山本七平botまとめ/【大異と小同】/”野合”を覆い隠す「小異を捨てて大同につく」という「言葉の詐術」が招く組織の自壊

山本七平著『無所属の時間』/大異と小同/157頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【大異と小同】「一国が戦争で滅亡する事はない」これは太平洋戦争という苦い経験から得た一つの教訓であろう。確かに、史上には一見、戦争で滅亡したように見える国もあるが、よく調べてみると本質的には「自壊」であって、戦争はただ「とどめ」であったにすぎない事がわかる。<『無所属の時間』

2012-12-08 04:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

②ベトナムもそれを証明している。サイゴン政権は自壊し、解放戦線はその清算人として乗り込んだにすぎない。 これが戦争の常であり、そして「自壊・清算原則」は国内国外を問わず他の問題にも適用できる原則とも思われる。

2012-12-08 05:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

③一国であれ、政党であれ、会社であれ、組合であれ、最も恐ろしいことは、打倒されることではない。打倒された者は再起できる。 だが、自壊は、いわば、組織体のガンによる死亡のようなもので、これだけは外部から手の施しようがない。――もちろん、軍事的にも政治的にも。

2012-12-08 05:57:40
山本七平bot @yamamoto7hei

④そしてそれを物語っているのは、サイゴンだけではない。 日本における革新の自壊は片山内閣に見られた。この内閣には、新聞が実に好意的であった(いま読むと少々驚く)だけでなく、絶対的権力者アメリカすなわちマッカーサー司令部も、半ば公然とこの内閣を支持していた。

2012-12-08 06:27:50
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤そして当時におけるこの支持は、サイゴン政権ヘのアメリカの支持以上に強力だったはずである。 この絶対権力者マックとマスコミに支えられた超強力内閣がなぜ八ヵ月で崩壊したか、一言でいえば自壊だったわけである。

2012-12-08 06:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥そしてこのことは、自壊に対しては、外部のいかなる強力な″つっかえ棒″も無力であり、同時に以後の歴史は、自壊からの再起がいかに困難かを示している。 なぜそうなるか。

2012-12-08 07:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦消息通は「マスコミは結果において自民党を鍛え、革新を過保護で弱体化した。このマスコミ過保護があらゆる面で裏目に出てきた」と言う。

2012-12-08 07:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧みのべ都知事は、ある対談で「新聞に書かれるのが有利」という意味のことを言っており…ここには、新聞が自分に不利なことを書くはずがないという、子供の依頼心にも似た″信念″が感じられ、これが革新に共通しているので、前記のような批評が出たのではないだろうか?

2012-12-08 08:28:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨だがそれよりも決定的な自壊の原因は、片山内閣の時もみのべ三選の時のゴタゴタも、「小異を捨てて大同につく」という言葉の詐術にあったのだと思う。

2012-12-08 08:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩というのは、かつての社会・民主両党の連立も、現在の社公共民の連合も、実際には「大異を捨てて(または棚上げして)小同につく」であっても、「小異を捨てて……」ではないからである。

2012-12-08 09:28:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪基本的な理念(イデオロギー)が同じで、政策の枝葉の食い違いを調整するのでなく、基本的理念の全く違うものが、選挙といった一現象面の一致だけで結ばれているなら、その「小同」が簡単にくずれて自壊しても不思議ではないであろう。そしてこれは、国際関係でも国内問題でも同じである。

2012-12-08 09:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫われわれは過去において、対外的にも対内的にも「大異を捨てて小同についた」。 それは昭和史をひもといてみれば、だれの目にも明らかである。そしてそれは、当然のことのように自壊を招来した

2012-12-08 10:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬「小異を捨てて大同につく」と「大異を棚上げにして小同につく」を混同すれば、また同じ結果を招くであろう。 国内的にも、また国際的にも――。

2012-12-08 10:57:45