『ゴダールにおける音と映像の作用/反作用』岸野雄一×大谷能生
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岸野 こうした流麗な音楽による叙述、音楽が担保する連続性という技術が、アメリカ、ロシアにおいてすでに出来上がっていた。このような映画を見て育ったゴダールが、どのようにアプローチしていったか?
2012-12-06 20:30:30岸野 つい美化しがちなんだけど、ゴダールも、本当はこのような完璧な物語(ファンタジー)の叙述をやりたかったんじゃないか?でもそれができないからあのようにならざるを得なかったんじゃないかというね笑
2012-12-06 20:33:19大谷 ハリウッドは映画の世界に入りこませるために様々な技術が駆使されている。一方ゴダールは、ジャンプカットによる視覚的分断、連続性の欠如した音楽といったアプローチをとる。
2012-12-06 20:38:23大谷 パトカーの音、船の汽笛等、様々な『音』を巧みに使って、映画の状況を先行して提示する。短い音楽によるブリッジで、時間の経過をつなぐ。大胆なジャンプカットでぶった切るときは、音楽を背景に残して連続性を担保する…『音』と『映像』の叙述をうまく相互作用させているのが分かると思います
2012-12-06 20:49:49岸野 映像の叙述でいうと、一つ前のショットの意味を、次のショットで説明するという手法をとっており、スリラーの技術を踏襲している。ここに、『音』のレイヤーを加えて、叙述を先行させている。二次創作技術の総動員。過去の技術をふまえた上で、発展させようとしているのがわかる。
2012-12-06 20:54:37岸野 『勝手にしやがれ』のラスト付近のシーン(警察に通報した後くらい)。ここから、それまでの単線的な叙述から、ポリフォニックな様相を帯びてきます。
2012-12-06 20:59:11大谷 ここで劇判を当てると、状況の叙述になってしまう。そうではなく、モーツアルトの曲を、作中のレコードを音源として使用している。
2012-12-06 21:04:31岸野 『あなたは今映画を観ているんですよ』というメタメッセージと、『この映画が好きでたまらない!』という愛との間で引き裂かれているよね
2012-12-06 21:10:40大谷 ルグランはとにかく大量の音楽を作ってくれているにも関わらず、全く映像と無関係に音楽を使っています。音で物語を修飾する、という使い方をしていないんですね。で、時々『合っている』と感じる瞬間もある。
2012-12-06 21:13:26岸野 音と映像のレイヤーを、全く同等なものとして扱っている。この段階ではまだ手探りだけど、フランソワ・ミュジーと組むに至って洗練されていくベクトル。
2012-12-06 21:14:13大谷 この段階では、まだ物語を叙述しようとしている。この後、『あなたは映画を今観ている』というメタメッセージの装置として音楽の効果を使う方向へ進む。 岸野 リュミエール回帰。
2012-12-06 21:19:38ゴダールが資本主義から手を切り、左翼の側にたって映画を作ることを宣言した時代。パレスチナのゲリラ支援を目的として、現地で撮影。本当はこの素材をまとめて作品を作るはずが、挫折してしまう。そこで帰仏後、その素材を『こことよそ』として作り直す。
2012-12-06 21:26:44岸野 そろそろ時間となってきました。ゴダールを通して映画と音の相互作用を観ていくというところまではなんとかたどり着けたと思います。ここからいよいよ細部へ進んでいく所ですが、そこは本講義のお楽しみということで。
2012-12-06 21:33:29大谷 最後に、近作『ソシアリズム』について。音を左右で完全に分断する作りをしています。これは、映画音楽的に言うと完全にアウト。左右でバラバラに作られた音像を、観客が自発的に統合することをしいてくるという。
2012-12-06 21:43:21『ゴダールにおける音と映像の作用/反作用』無事終了しました。実況は、現場の情報の3割もお伝え出来ていませんので、興味を持たれた方は是非遊びにいらしてください◎
2012-12-07 00:16:09主催:
美学校音楽学科
http://www.bigakko.jp/sp/mc/mc.html