【二次創作な】「ヒドゥン・アーツ・オブ・オールド・ワンズ」♯4

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欺瞞動画の会社 @naclaqns

「ヒドゥン・アーツ・オブ・オールド・ワンズ」♯4

2012-12-10 19:14:55
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「若造。これがスシよ。驕ったな」カルティヴェイトの声は勝ち誇るでも嘲るでもなく、不出来な弟子を窘めるグレーター・イタマエのそれに近かった。しかし多少なりとも自負を持つ職人にとってこれ以上に堪える言葉も無い。メイヴェンの表情は固く、そして精米したてのシャリよりも白くなっていた。1

2012-12-10 19:21:51
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メイヴェンの握ったオムレツ・スシ、ぬるめのシャリに熱いタマゴヤキが乗ったそれは断じて凡庸な物ではなかった。だがカルティヴェイトのタマゴ太巻きスシ…計算され尽くしたタマゴクレープとシャリのバランス、華やかで奥ゆかしい伝統的具材の数々。技巧に、何よりも味わいに、大きな差があった。2

2012-12-10 19:30:38
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恐らくメイヴェンはこのスシで幾度もの勝負を勝ち抜いてきたのだろう。そのインパクトで並のタマゴスシを蹴散らしてしまうオムレツ・スシ、しかしそれは裏を返せば愚直、単純に過ぎるということでもある。格上の相手には通用せぬ、相手を侮ったのはメイヴェンの方だ。スシ道不覚悟!ナムアミダブツ!3

2012-12-10 19:37:15
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「待って下さい」オツヤ・アトモスフィアを破ったのはカタクラだった。「僕はメイヴェン=サンに票を入れる」「ホウ?小僧、偽りではあるまいな」「勿論です。…彼のスシは確かにシンプルだった、しかしタマゴの味を最大限引き出していたのは事実です。決して手抜きなどではない。実際美味しかった」4

2012-12-10 19:45:04
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カルティヴェイトはカタクラを否定しなかった。味覚が人それぞれ異なるのは前提、その上でモアベターな手を打つのがイタマエである。届かぬならそれは時の運…彼程のスシシェフがそれを心得ぬ筈もない。「それでも二対一、ワシの勝ちは揺るがぬ。…さて若造。ここで終わりにするか?次を握るか?」5

2012-12-10 19:53:38
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カタクラの言葉は支えとなったか、それとも単に時間を稼いだだけだったか。いずれにせよメイヴェンの顔には僅かな闘志が戻っていた。「次だ、次の勝負だ。俺がネタを決める番だ…ネタはアナゴだ!」その言葉は自らを奮い立たせるかのよう、だがメンタルが負ければドヒョウ前に犬死にである!6

2012-12-10 20:00:34
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「…よかろう。後悔するでないぞ…いあ!いあ!」カルティヴェイトの呼びかけに応え、スシネタ邪神はその目から黒い涙を流した。くねりつつもズルズルとこぼれ落ちるそれは二匹の黒い大蛇、巷間には既に絶滅したと言われるオーガニック・アナゴである!ネタに不足無し!後はワザマエを振るうのみ!7

2012-12-10 20:08:20
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「「SHAAAAA!」」イタマエニンジャに襲いかかる二匹のアナゴ!ガバリ開いた口には無数の巨大な毒牙!喉の奥はジゴクめいた暗闇!過去にあっては年間何千人もの漁師が犠牲になったと言われるシーサーペント、だがこの獰悪海棲クリーチャーもスシ職人の手に掛かっては単なるスシネタに過ぎぬ!8

2012-12-10 20:14:34
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「「イヤーッ!」」二人のイタマエは迫り来るアナゴの鼻面を左手で鷲掴んだ!そのまま脇に抱え込み「「イヤーッ!」」包丁一閃頚椎骨切断!「「SHAAAAA!?」」脳とのリンクを断たれた身体はバタバタと無秩序に暴れ回る!「ゴボーッ!?」不運な暗黒半魚人がムチめいた尾で叩かれ頭蓋骨陥没!9

2012-12-10 20:23:56
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「「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」」イタマエ達は暴れるアナゴを三フィートタタミ針で地面に縫い付けてゆく!ただ殺すだけなら並のニンジャにもできよう、だがスシネタ精密解体するならばこうして固定する必要があるのだ!まずは腹を割き内蔵摘出!「「イヤーッ!」」「「SHAAAA!?」」10

2012-12-10 20:30:46
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強制セプクされたアナゴが苦しげに叫ぶ!だが工程はこれで終わりではない!次は空いた腹に包丁を突っ込み背骨から肉を外す!「「イヤーッ!」」「「SHAAAAA!?」」青い血が際限なく噴き出す!だが工程はこれで終わりではない!次は皮を剥ぐ!「「SHAAAAA!?」」肉が露出する!11

2012-12-10 20:36:16
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だが工程はこれで終わりではない!毒ヒレを切り落とす!「「SHAAAA!?」」小骨を断つ!「「SHAAAA!?」」熱湯をかける!「「SHAAAA!?」」何たるスプラッタムービー酸鼻ゴア光景、驚く無かれ戦前のスシ屋にあっては須らく日夜このような危険屠殺が行われていたのだ!ツキジ!12

2012-12-10 20:41:49
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青い血にまみれた二人は瀕死のアナゴから肉を切り出す。ここまでのグロテスクとは裏腹、ビクビクと痙攣するパールホワイトのそれはいかにも美味そうにきらめいている。彼らはそれに数本の金串を刺しコンロに立てかけた。炎がタンパク質をチリチリと焦がす!暗黒空間に香ばしい香りが広がってゆく!13

2012-12-10 20:48:09
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…ここまでの工程は基礎中の基礎、言わば単なる作業に過ぎない。アナゴスシ最大の問題は味付け、そしてメイヴェンには策が、切り札があった!その名もエイボンのショーユ!彼の手中には過去の冒険で獲得したそれを魔術めいて煮詰めたニツメがある!アナゴを選んだのは断じて気まぐれなどでは無い!14

2012-12-10 20:55:01
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では美味いソースがあれば勝てるのか?答えは否、各々のソースには各々に適した焼き加減というものがある。無論彼はそれを把握している、ネタ如何環境如何で刻一刻変化するベストタイミングを完璧に把握している!「……イヤーッ!」ここだ!肉塊の中心に火が通った瞬間、ここがベストオブベスト!15

2012-12-10 21:01:30
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ブシュブシュと脂の浮いたアナゴケバブをメイヴェンは手早く握りハケ三往復甘辛テリヤキソース塗布!露程の旨みも逃さぬ完璧な手際である!ネタもソースもワザマエも完璧、敗北要素無し!巻き返しなるか!?「ヘイオマチ!アナゴ・スシ!」同時にカルティヴェイトも「アナゴ、オマタッシェー!」16

2012-12-10 21:08:17
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カルティヴェイトのアナゴ…メイヴェンと三人ははじめそれをアナゴだと認識できなかった。何故なら、ソースが無い。うっすら焦げ目のついたアナゴがそのまま握られている!よもや忘れたか、それともハンデのつもりか?「始めるとするかの。順番はお客さんにお任せしようぞ」困惑の中実食開始!17

2012-12-10 21:15:16
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ホソダ・デグチ・カタクラはメイヴェンのアナゴに手を伸ばす。まだ熱を失っていないネタはまず指先から食欲を刺激、口に入れればタレのふくよかな味、噛めば滲み出る甘いアナゴ脂。文句のつけようも無し…だが三人は首を傾げた。確かに旨い。だがその味は彼らが思い描いていたものに一歩及ばぬ。18

2012-12-10 21:23:11
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足らぬ物の無いアナゴスシに唯一足らぬ物とは何か?答えを知っているのはカルティヴェイトだ。「まずガリを。そしてチャを飲みなされ…ワシのスシを食うにはそれからでも遅くはあるまい」促されるままにガリとチャを口に含む三人。メイヴェンアナゴの濃厚な後味が無慈悲にリセットされてゆく。19

2012-12-10 21:29:54
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「ショーユは無しでいただかれよ。味は付いておるでな」そう、そのアナゴは単に焼いただけではなかった。表面にキラキラと輝く微細結晶は塩、奥ゆかしく散らされた緑はブーケガルニ粉末。アナゴの塩焼きハーブ風味…およそ見聞に遠いそれをイケニエ審査員たちは訝しげに口に運ぶ。「「「!」」」20

2012-12-10 21:36:20
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遠火で念入りに焼かれたアナゴ白身からは脂も水分も抜け、しかしパサつかず口の中でホロホロと細かくほぐれてゆく。脂に頼らぬアナゴタンパク本来の味わい、それに合わせてゆるめかつ少なめに配分されたシャリ。隠し味のカボスレモンがともすれば浅薄に過ぎる味を強烈に引き立てる!何たる洗練!21

2012-12-10 21:42:41
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完成度で言えばメイヴェンのスシは劣ってはいない、だが三人は苦渋の表情で評定を下し、自らを死に追いやった。三対〇。カルティヴェイト圧勝…!「「「ゴボボボボボボーッ!」」」沸き上がり殺到する暗黒半魚人の大群!「グワーッ!?」「グワーッ!?」「グワーッ!?」イケニエの時間だ!22

2012-12-10 21:48:56
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暗黒半魚人が三人の衣服をエビ剥きめいて引き裂く!下ごしらえである!「グワーッ!?」「グワーッ!?」「グワーッ!?」「何故だ!俺のスシは完璧の筈だ!」メイヴェンは自ら握ったスシを確かめるように試食!やはり旨い!「完璧の筈だ!言え!貴様ら、どこが不満だった!?言え、言ってみろ!」23

2012-12-10 21:55:59
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「底が見えたのう、若造」必至の抵抗を続ける三人に代わり、カルティヴェイトが答えた。「そもそもオヌシ、何故アナゴを選んだ?おかしいとは思わなんだか?」「何がおかしい…!?俺のアナゴの何がおかしい!」「オヌシのアナゴに欠けたる物は無い。欠けているのはただそれのみよ…気付かぬか?」24

2012-12-10 22:02:58