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ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #7

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
書籍 文学 ニンジャスレイヤー
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「ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター」 #7
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「事情を知らぬ貴様に、親切に教えてやる」メイヴェンは精神の均衡を素早く取り戻し、ニンジャスレイヤーに言った。「貴様が肩入れするワザ・スシは、タマゴが出せず一戦目を落とした。ケチなスシ老いぼれは利き腕を負傷。そこの小娘が見よう見まねのスシを握る。勝ち目無し」「よほど怖いようだな」1
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「何だと」「オヌシの涙ぐましい努力は所詮、怖れの裏返し」ニンジャスレイヤーは低く言った。「観念してスシを握れ」「……」二者の眼力は凄まじくぶつかり合い、空気をも歪めるかと思われた。ドォン!太鼓が鳴らされた。踵を返したニンジャスレイヤーにアキモトがイタマエ上衣を投げた「着なさい」2
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ドォン!ドォン!二戦目である!イタマエ着に素早く着替え、消毒洗浄を済ませたニンジャスレイヤーは、ボックスからエンシェント・オーガニック・マグロを摑み上げ、まな板に乗せた。桜のように美しいピンク色の肉は柔らかく、その表面の脂は奥ゆかしくかすかな輝きを放っている。 3
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「ワオ……。……ゼン……」観衆の誰かが遠目にそのマグロ肉を垣間見、神聖なアトモスフィアに心打たれて泣き出した。アキモトは米セイロを開いた。湯気が立ち昇り、キラキラした白い米の存在感が立ち上がった。「奴ら、新鮮なコメを独占して安心していたんだろうが、甘い」とアキモト。 4
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「江戸時代のスシ屋は、古い米にモチ米をブレンドして炊き、ビネガーを混ぜていた。新鮮なコメが無いなら、スシのベーシックに立ち戻るまでだ」アキモトはニヤリと笑う。スタッフに指示を出すメイヴェンと視線が交錯した。(老いぼれめ。くだらぬ真似を!)(足掻くだけ足掻かせてもらうわい) 5
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「ワーオ!ワーオ!ご覧ください!」司会者が拡声器に声を張り上げた。「ウェルシー・トロスシのこの、ほら、ご覧ください!」「ワオオーッ!?」「マグロだ!」メイヴェンが叫ぶと、「サーイエッサー!」隊列を組んだ12人がテントへ駆け込み、ミコシめいて担いで来た……一匹丸ごとのマグロを! 6
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「社長お願いします!」イタマエが二人掛かりで青龍刀めいた巨大包丁を運び、差し出した。「エーラッシェー!」メイヴェンは叫び、青龍刀めいた巨大包丁をマグロめがけて繰り出す!「イヤーッ!」ゴウランガ!恐るべき包丁さばきにより凄まじき速度で解体されてゆくマグロ!「ワオオーッ!」 7
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「こ、これは凄すぎる」カスマは身を乗り出した。「もはやポエム」「マーケティング的にこの説得力はすごい」タケチが頷いた。「ご覧なさいこの熱狂を。場を支配するパフォーマンス。皆さんは非日常体験をしにくるわけですから。もはや食べるまでもなく完全勝利ですよ!」「ワオオーッ!」 8
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「確かな解体の腕だ。……ム……?あれは」ユノモは眉間にシワを寄せ、解体の様子を凝視した。「トロ……全部位が……?」「そうですよ。あれは実際オーガニック・トロマグロですからね!」ファンダ副町会長が説明した。「独占流通ルートから手配されてくる全身トロのマグロです!」「全身トロ!」 9
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「そんな事が?新種のバイオマグロでは?」「いえ、実際それは違いますね」カスマが答える「あのマグロについて詳しく書かれた私の著書をプレゼントしますよ。スシ・ルポルタージュですが……ともかく、ウェルシー社の秘密養殖技術によって、育つ過程で脂が増えて全身トロのようになるんです」10
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「面妖ではありますな」ユノモは腕を組んだ。「トロは稀少部位ではあるが、マグロの全てでは無いものだ」「でもね、マーケティング的にこれは大正解ですよ」タケチが言った。「何しろトロは市民の憧れ。日本人の遺伝子に刻まれた絶対の嗜好なんです。許されるならトロだけ食べますよ僕だって!」11
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「とにかくウェルシー社ですよ!とにかく招致した甲斐があった」ファンダが混ぜ返した。「皆さんもWin-Winになるのは、やっぱりウェルシー社です」「……楽しみに待ちましょうか」ユノモは低く言った。 12
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「イイイイヤァーッ!」振るわれる青龍刀めいた巨大包丁!骨から剥がされてゆくトロ肉!巨大な海のビーストであるマグロと格闘するさまはまるで、古事記に記された荒海の王子の14日間の航海伝説、第3日の試練の再現だ!「ワオオオーッ!」「ワオオオーッ!」「ワオオオーッ!」「ワオ……え?」13
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歓声が一瞬、止んだ。彼らの視線はワザ・スシのまな板に注がれた。「何だ」「おい見ろ……」「何?」「何だと?」「何」「……スシが……浮かんでいる」 14
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「バカな!」ユノモが思わず立ち上がった。カスマは狼狽え、彼に助けを求めた。「アイエエエ!何ですかあれは?」「あれはガンフィッシュ!アキモト=サン!?」彼はエーリアスの後ろで腕を組んで見守るアキモトを見た。(伝授したというのか!あれを!)アキモトが睨み返した。(ワシも驚いとる)15
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「……イヤーッ!」エーリアスが素早く腕を水平に振り、空中に浮かんだ五つのスシを撫でた。一瞬後まな板上には美しく握られたスシ!ゴウランガ!「ワ……ワオオーッ!」「エポック!」「マジック!」「ワオオオーッ!」メイヴェンは解体を続けながら眉根を寄せた。(何だと?) 16
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解体マグロ肉はうず高く積み上げられる。イタマエ社員がそれらを適切な包丁さばきで切り身にしてゆく。彼らは過酷な研修によって平均的なブレの無い技術を手にした、いわば生体マシーンだ。メイヴェンは鼻を鳴らす。(あのような大ワザで、審査員・客席全てに行き渡る数のスシを握れる筈も無し)17
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「……イヤーッ!」さらに五つ!「ハーッ!ハーッ!」「……イヤーッ!」さらに五つ!エーリアスは目を見開き、右腕の腱を押さえて荒い息を吐く。「ハーッ!……ハーッ」「大丈夫か」アキモトが声をかけるが、「当たり前だ!」エーリアスは大声を出した。メイヴェンはほくそ笑んだ(それ見た事か)18
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彼は青龍刀めいた巨大包丁を振り上げた。「仕上げだ!イヤーッ!」KRAAASH!残るマグロ肉を解体!そしてALAS!見よ!叩きつける青龍刀めいた巨大包丁が粉砕した無数のマグロ骨が、恣意的角度でエーリアスめがけて高速飛散!フラつくエーリアスは回避不能!アブナイ!「イヤーッ!」19
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……「何だと!」メイヴェンは思わず声に出した。エーリアスに散弾めいて突き刺さる筈のマグロ骨……それら全て、ニンジャスレイヤーの手の指の間に挟み取られていた!インターラプト!「観念してスシを握れ」ニンジャスレイヤーは両手をかざしたまま仁王立ちし、凄んだ。「そう言った筈だが」20
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ニンジャスレイヤーはエーリアスを振り返った。「オヌシのその腕では、もう無理だ」ニンジャ洞察力による無慈悲な宣告である。エーリアスは右腕を押さえ首を振った。「いいや、やれる。死んでもやる」「ダメだ」アキモトが言った。「よくやった。あとは普通に握んなさい」「それじゃ負けちまう!」21
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「……」一瞬の沈思黙考ののち、ニンジャスレイヤーはエーリアスを見た。「オヌシのジツだ」「え?」「憑依せよ!」「憑依……あンた、まさか……」エーリアスは目を見開く。ニンジャスレイヤーは頷いた。「オヌシのジツだ!」「……ニューロンが焼けちまうかもだぞ」「耐える」「オイ……」 22
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「早くしろ!間に合わんぞ!」「ナ……ナムサン!どうにでもなりやがれ!」エーリアスがニンジャスレイヤーの背に両手を叩きつける!「イヤーッ!」「グワーッ!」01000101101101 (23
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0100101殺すべし……ニンジャ殺すべし01100100101……エーリアスは両掌を見つめた。パラパラと、指の間で挟み取ったマグロ骨が落ちた。「入った」彼は呟いた。頭の奥に、ぞっとするような憎悪の塊を感じる。生きている。憎悪に焼かれぬよう、彼は己の精神にバリアを張った。 24
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2012年9月29日
ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #1 http://togetter.com/li/373252
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